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【vol.36】鳴海周平の全国ぶらり旅|北海道札幌市編 北海道開拓の村


 札幌市厚別区にある「北海道開拓の村」は、主に北海道の明治・大正期の建造物を保存・展示してある体験型の野外博物館です。
 もっとも北海道らしい気候の中で北海道開拓の歴史を体験するべく大寒の「開拓の村」を訪れました。

 気温マイナス10℃。雪がちらつく大寒真っ只中の1月下旬に、生まれ育った北海道の歴史を再確認するべく「北海道開拓の村」を訪れてみることにしました。

「もっとも北海道らしい気候を体感できる時期にご来場いただきありがとうございます。(笑)」

 そう言って笑顔で迎えてくれたのは、財団法人北海道開拓の村・広報主査の松井則彰さん。真っ白な雪景色の中、施設内の様々な建造物をご案内いただきました。

「受付となっているこの建物は、3代目の札幌駅舎(停車場)を縮小して再現しています。5代目となる現在の札幌駅とはまったく雰囲気が違いますよね。」

 3代目の駅舎は明治41年(1908)に建てられた優美な洋風の建築物。昭和27年(1952)まで使用されていたため、今でも「懐かしいねぇ。」と喜んでくださるお客様がたくさんいらっしゃるそうです。

 旧札幌停車場の建物で受付を済ませ、さっそく施設内へ。降り積もった雪が建ち並ぶ歴史的な建造物と一体となり、明治・大正期の北海道をより身近にイメージさせてくれます。

「ここは北海道開拓当時の生活を、歴史的な建造物などを通じて体感しながら理解してもらうことと、こうした貴重な建造物を保存して後世に永く残していくことを目的に、1983年4月に開村しました。54ヘクタールの敷地(札幌ドーム10個分)に、約60棟の建物があります。これらはすべて移築または復元して建てられたもので、家具や食器などもそのまま展示してあるため当時の生活をとてもリアルに感じることができるんですよ。」

 大正8年(1919)旭川市永山で旅館兼待合所として建てられた「来正旅館」2階の客間や1階待合所の様子から、旅人の宿泊や汽車の待合所として大いに賑わっていたことが伝わってきます。

「お客さん役の人形もびっくりするくらいリアルでしょう?(笑)江戸時代の旅篭屋が旅館の原形ではないかと言われていますが、北海道では鉄道の普及に伴って、駅前に汽車の待合所を兼ねた旅館ができ活況を呈していたようです。

 隣は明治42年(1909)に小樽で建てられたそば店です。2階に50人ほどが入れる大きな座敷がありますが、これは当時のそば屋が会合や宴会の場としても利用されていたからなんです。このおそば屋さんは現在も小樽で営業を続けていますよ。」

 そば店から数件先には静内町で米や酒、雑貨などを扱っていた武岡商店がありました。明治31年(1898)に建てられたという商店内には、これまたリアルな人形が当時の様子を見事に再現してくれていました。

 飲食店や商店などが立ち並ぶ市街地群エリアを通り抜けると、漁村群エリア、農村群エリアに辿り着きます。

 中でもひと際目立つのが明治・大正期に最盛期を迎えたという網元の青山家。小樽沿岸に16ものにしん建網を経営していたそうです。

「山形から渡道した青山家は、当時たいへんな隆盛ぶりだったようです。最盛期には大小100余棟の建物を所有していた記録がありますから、大地主でもあったんでしょうね。漁夫たちは寝泊りする場所として、囲炉裏を囲むようにして壁側にそれぞれ畳1枚分のスペースを与えられていました。網元として抱えていた漁夫は300人以上もいたので、1日に約3斗も消費する米を調達するために129町歩もの農場をもっていたそうです。」

 漁業も農業も、当時のスケールの大きさを感じさせてくれるお話ですね。

 農村群エリアには他にも蚕の養殖施設や屯田兵屋などが建っていて、当時の様子をそのままに伝えてくれていました。

「最後は山村群エリアをご案内します。北海道は古くからアイヌの人々の世界でした。そこへ江戸時代になって本州から交易などを目的に行き来ができ、少しずつ移住が進みました。

 本格的な開拓事業は明治に入ってからで、蝦夷が北海道と名前を変え、開拓と北方警備を兼ねた屯田兵が入地したのもこの頃です。開拓当時の苦労の様子はこの開拓小屋を見てもよくわかりますが、その甲斐あって開道50年を迎えた大正7年には人口が217万人を突破し耕地面積も当初の30倍近い80万町歩まで達しました。

 このエリアは北海道開拓の原点を改めて感じさせてくれるたいせつな場所なんです。」

 移住者が最初に建てたという開拓小屋は、丸太を柱に使い、笹や萱などで屋根や壁を葺いただけの簡素なもので、北海道の厳しい冬には相当の苦労があったことが想像できます。

 先人たちがたいへんな苦労を重ねて未開の地を開拓してくれたおかげで今の生活がある、ということを改めて深く感じました。

「いかがでしたか?この季節に来て頂くと、特に開拓当初の苦労が実感できますよね。

 先人達はこうした苦労の中でも文化を根付かせ、季節ごとの様々な年中行事などを通して生活を楽しく豊かにする工夫を凝らしてきました。

 開拓の村ではひな祭りや七夕、餅つきなどの伝統行事を、各建造物を活かして開催しています。北海道の風土と歴史に育まれてきた文化を体験的に知ってもらうことは、後世に伝えていけるとても大切なことだと思います。」

 伝統行事にはいつもたくさんの人たちが訪れるとのこと。先人たちが築き上げてきた数々の宝物は、時を経た現在も夢と希望を与えてくれているようです。

 郷土芸能や伝統技術の講習会、体験学習など、様々な学びの機会を提供してくれている「北海道開拓の村」。

 これからもたくさんの人たちに「歴史を知ることのたいせつさ」を普及し続けてほしいと思います。

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