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【vol.84】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第34回 東洋医学の基礎理論33 心と腎


 
東洋医学の基礎理論33

心と腎

《心腎相交》

 腎は、生体下部(下焦)、心は、上部(上焦)にあり、相互に依存・協力しあい生命が維持されています。心は、五行では、「火」に属し、腎は、
「水」に属します。(図1)心陽は、腎まで下降し、腎を温め、腎陽が十分な量に満たされるようにして、腎陽虚による冷えを作らないようにします。腎陰は、上昇して心陰を十分な量に維持出来るようにして、心陽が燃え上がるのを抑制します。このような心と腎の間に協調した平衡関係が保たれている状態を心腎相交と云います。

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《心腎不交》

 心と腎の協調関係が失われた状態を心腎不交(図2)と云います。
 心腎不交には、心腎陰虚と心腎陽虚がありますが、代表的な心腎不交は、心腎陰虚です。

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①心腎陰虚

 寝不足、過労、慢性病などにより腎陰虚を来すと、心陰を養えなくなり、心陰虚となって、健忘や不眠、多夢、心煩(胸部の熱感や閉塞感、つまり胸がすっきりせず、いつも何か落ち着かない状態)を来します。例えば、寝不足が続いて腎陰虚を来すと、忘れ易くなり、物覚えが悪くなるなどの心陰虚症状を呈することから、イメージが湧くかと思います。心陰虚がさらに進行して心陽を抑えられなくなったら、心の火が抑えられなくなり、心火が燃えすぎる「心火上炎」(口や舌の炎症、動悸、不眠、精神不安、気持ちが落ち着かない、顔が赤い)を来します。心火上炎になると、腎陰を消耗させてさらに腎陰
を増長させます。腎陰虚がさらに強まり、心陰虚をさらに助長させ、心火上炎を助長させるといった悪循環を形成します。このような心腎陰虚の状態の治療薬は、腎陰を滋養して虚火(虚熱とも云う。腎陰が不足して相対的に腎陽の比率が高まるために熱を作り出す。足のほてりなどの症状が出現する)を鎮める動悸・不眠に「天王補心丹」を用います。心陰虚から心神不安(不眠、不安症状など)、脾虚(食欲低下などの症状)、腎の縮尿失調(西洋医学では、尿が我慢しづらくなる過活動性膀胱に相当)を来す不眠・焦燥感・食欲不振・夜間尿・尿失禁・頻尿に清心蓮子飲を用います。

②心腎陽虚
 
 心腎陽虚による心腎不交では、精神疲労などにより心陽が不足すると、腎陽を温められなくなり、腎陽虚を来たす心腎陽虚を来します。心陽虚による循環不全は、まさに西洋医学の心不全の病態に似ています。心陽虚によってもたらされた腎陽虚になると、水液代謝が滞り、下半身の浮腫、尿量減少を来します。下に貯まった水が溢れて上昇すると心に影響を与えて、動悸などの症状を呈します。
 このような心腎陽虚の代表的な方剤には、腎陽を補助して水を尿として出し、心への負担を軽減させる「真武湯」を用います。西洋医学での心不全治療に余剰な水分を尿に出す利尿薬を用いる関係に似ていて興味深いです。
 

 
 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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