Vol.256 8月 清潔は養生をたすける
清潔は養生をたすける
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
環境は思考に反映される?
「思考の整理は、物の整理にあらわれる」
まわりがいつもきれいに片づいている人は、脳のなかも整理整頓がなされているようです。これは「思考の状態は環境に反映されて、環境もまた思考に反映される」ということ。
貝原益軒さんが『養生訓』のなかで「まわりがきれいであれば、内側もきれいになる」と述べているとおりです。
医師の帯津良一先生は、こうした相互関係を「音曲は体なり、風情は用なり」という、能の世阿弥の言葉にたとえて教えてくれました。
現象としてあらわれている風情は、本質的な実体の音曲から出ている。だから、よい感じ(風情)を出すためには、元の形(体)を調えることが大事だというわけです。
まさに「まわりがきれいであれば、内側もきれいになる」ということですね。
こうして、まわりの環境がこころとからだの健幸に影響を与えているのであれば、これを活用しない手はありません。
まずは、まわりをなるべくきれいに整理整頓する。
そして、こころとからだを健幸にたもってくれるようなグッズを活用してみてはどうでしょうか。
【思わず笑顔になるものをまわりに置く】
みているだけで思わず笑顔になってしまうもの(家族やペットの写真、旅先での想い出の品、大好きな芸能人のグッズなど)を目につくところに置いておくと笑顔の回数が増えます。笑顔には免疫力アップや痛みの軽減、血糖値の改善などさまざまな健幸効果が確認されているので、笑顔になった回数だけ健幸度もアップするでしょう。
【香りを活用する】
なにかの香りで過去の記憶がとつぜんよみがえることがあります。これは、嗅覚と脳がダイレクトにつながっているから。心地よいと感じる香りには脳をリラックスさせる効果があり、交感神経のバランスが調うことも確認されています。
「香り」がおよぼす心身への健幸効果はとても大きいのです。
〈『養生訓』関連箇所(現代語訳)〉
まわりがきれいであれば、内側もきれいになる。だから、住居や庭はいつもきれいにして、机のうえもかたづけるとよい。こうしてこころを清くたもつことも、からだを動かすこともすべて養生になる(巻第二)
いつもいる部屋や、いつも使う家具や道具は、かざりけがなくシンプルで、清潔なものがよい(巻第五)
香が鼻の養生になるのは、五味が口の養生になるのとおなじである。香を嗅ぐことは正氣を助けて邪氣やけがれをはらい、天地とつながるのを助けてくれる(巻第七)
参考文献
『養生訓』 貝原益軒
『1分間養生訓』帯津良一・鳴海周平 著(ワニ・プラス)