Vol.252 4月 内臓間に隙間をつくる
内臓間に隙間をつくる
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
臓器と臓器の間には、なぜ隙間があるのか?
食べ過ぎないことが健康・長寿の秘訣であることは、元氣な長寿者の食生活が証明しているとおりです。
『養生訓』にも次のように書かれています。
「ほどほどに食べると、胃腸に隙間ができて氣がめぐりやすくなる。食べものも消化しやすくなって、すべてが栄養としていきわたる」(巻第三)
「胃腸に隙間ができて氣がめぐりやすくなる」というところから、以前、帯津先生にうかがったお話を思い出しました。
外科医として来る日も来る日も手術に立ちあっていた帯津先生。
あるとき、ふと「臓器と臓器の間には、なぜ隙間があるのか?」と思ったのだそうです。
そして、長年の探求でたどり着いた答えは「この隙間にこそ生命の本質ともいえる大きなエネルギーが潜んでいるのではないか」ということでした。
臓器と臓器は孤立しているのではなく「隙間」という空間を通じてつながりを持っている。つまり「隙間」こそが、からだとしての秩序をつくりあげている生命の大本なのではないか……。
生命の本質が臓器と臓器の隙間にあるとしたら、お腹いっぱいになるまで食べてしまうことの弊害は、かんたんに予想できますね。
ほどほどに食べることで、内臓間にほどよい隙間ができる。
その結果、氣がめぐりやすくなって、栄養もからだの隅々までいきわたる。
この養生法は「余裕やゆとりを持って生きることのたいせつさ」も、僕たちに教えてくれているように思います。
〈『養生訓』関連箇所(現代語訳)〉
たとえば草木に水や肥料を与えすぎると、かえって枯らしてしまうように、人のからだも飲食はひかえめにしたほうがよい(巻第一)
酒はほろ酔いになったらやめる。食事も腹半分にして満腹にしない。養生とは、病気になっていないときに、こうして慎むものである(巻第一)
飲食をひかえる量は多くなくてもよい。ご飯ならほんの二、三口、おかずもほんの一、二片だけひかえる。このように食事中少しだけ欲をこらえれば食べすぎによる害はなくなる(巻第三)
参考文献
『養生訓』 貝原益軒
『1分間養生訓』帯津良一・鳴海周平 著(ワニ・プラス)