Vol.246 10月 食事はこころ穏やかに
食事はこころ穏やかに
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
怒りとともに食事をしてはいけない
腹が立っているときは、なぜかお腹が空きません。一説によると、怒ることで唾液の質が変わったり、胃腸などの消化器官がスムーズにはたらかなくなったりするようです。
からだは本能的に「食べものを入れてはいけないタイミング」を知っているんですね。
益軒さんも「怒りとともに食事をしてはいけない」と述べています。
でも、よく考えてみると「怒る」ということは、そもそも自分以外の誰かに腹を立てていることが、ほとんどではないでしょうか。
自分が悪いわけじゃないのに(と、思っているだけかもしれませんが)誰かのせいで、自分の消化吸収が妨げられるのは、どうにも納得がいきませんね。
では、どうしたらよいのか。
怒らなければいいんです(…怒りました?笑)
もし、腹が立ったら「こんなことで、ご飯が美味しく食べられないなんて、もったいない!もう、や〜めた」と諦めてしまってはどうでしょう。
怒っていちばん損をするのは、自分なのですから。
こころは、仕草(からだの動き)に同調する
もうひとつ、腹が立ったときにオススメなのが、こころがおだやかなときの仕草をしてみること。
たとえば、にっこり微笑んだり、ゆっくりと深呼吸をしてみる。
あるいは、理由はないけど「ありがとう」と口に出して言ってみる。
すると、あら不思議。なぜか、こころがおだやかになっていることに氣づきます。
こころとからだはつながっているので、からだ(仕草)を変えると、こころも同調するんですね。
どちらの方法も、何度か試しているうちに、自然と怒る機会が減っていることに氣づくでしょう。からだは本能的に「健康によいこと」を知っているからです。
一生にできる食事の回数には、限りがあります。
そんなたいせつな機会なのだから、こころおだやかに楽しむように、というのが、益軒さんからのアドバイスです。
〈『養生訓』関連箇所(現代語訳)〉
怒ったあとで、すぐに食事をしないこと。食後も怒らないように(巻第四)
憂いを抱えながら、食事をしないこと。食後も憂いてはいけない(巻第四)
参考文献
『養生訓』 貝原益軒