Vol.245 9月 食後にするとよいこと
食後にするとよいこと
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
今回は、食べたあとで習慣にするとよい健幸のコツです。
食後には数百歩、歩行すべし
「時々身をうごかして、気をめぐらすべし。ことに食後には、必数百歩、歩行すべし」(巻第一)
益軒さんは、ご飯を食べたあと「数百歩、歩くとよい」と言っています。
歩くことの健康効果はよく知られたところですが、「食後に」というのがポイントです。
老化の原因のひとつに「糖化」があるといわれます。
この「糖化」をふせぐコツは、食べたあと30分から1時間ほどでピークになる血糖値を低く抑えること。医学博士の久保明先生は『「糖化を防げば、あなたは一生老化しない』(永岡書店)のなかで、その効果的な方法が「食後の運動習慣」だと述べています。
このタイミングでからだを動かすと、血糖値が10~15%下がることがわかっているので、糖尿病などの生活習慣病を予防・改善する効果も期待できそうですね。
とくに、歩くことは、全身の筋肉の約60%を占める下半身を動かすことになるため、とても効果的。
穏やかなリズム運動によって自律神経のバランスが調うことも、消化吸収をスムーズにしてくれるようです。
僕も『養生訓』を読んでから「食後の散歩」を始めました。もう二十年以上続いているのは、からだが喜んでいる何よりの証拠でしょう。
ただ、住まいが札幌なので、冬の散歩は少し億劫になりがちです。
でも、さすがは益軒さん。そんな日についてもアドバイスしてくれています。
「雨の日には、家のなかを、ゆっくり何度も歩きなさい」(巻第一)
この一文を読んで、テレビっ子の僕は、ドラマなどを観ながらする「食後の足踏み」がすっかり習慣になりました。
天候に左右されずに散歩を楽しむ方法、ぜひお試しください。
〈『養生訓』関連箇所(現代語訳)〉
「食べ終わったら、両手で顔をこすって、お腹をなでると消化を助ける。そのあとで数百歩歩くとよい」(巻第五)
「食後は、からだがだるくてもすぐ横にならず、二、三百歩静かに歩いてからだを動かすとお腹の氣がふさがらない」(巻第五)
参考文献
『養生訓』 貝原益軒
『貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意』帯津良一 著(朝日新聞出版)より
『「糖化を防げば、あなたは一生老化しない』久保明 著(永岡書店)