Vol.254 6月 接して漏らさずの極意
接して漏らさずの極意
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
一人寝より、二人寝?
『養生訓』には「色欲(性欲)をつつしみなさい」という記述が、なんども登場します。
「精氣を多くつひやせば、下部の氣はよはくなり、元氣の根本たへて必命短し(精氣をたくさんついやしてしまうと、氣が減って元氣がなくなる)」(巻第一)
有名な「接して漏らさず」の一文は、元氣をたもつための方法ということになるでしょう。
他者とふれ合ったときや、精神的なつながりを感じたとき、脳のなかでは「オキシトシン」というホルモンが分泌されています。
別名「幸せホルモン」とも呼ばれるように、心身を健康にして幸せな氣分にしてくれる脳内物質で、肉体的なスキンシップはもちろん、精神的なふれあいでも分泌されることがわかっています。
医師の帯津良一先生は「一人寝より、二人寝」と題して『死ぬまでボケない1分間〝脳活〞法』(ワニ・プラス)のなかで次のように述べています。
「一人寝より二人寝と言っても、何も肉体的な交渉を持つことだけを言っているわけではないので、ご安心を。 ここで言う『二人寝』とは、何かのつながりを感じながら寝る、ということです。 パートナーと手をつないで寝る、お孫さんと添い寝する、ペットと一緒に寝る。もちろん、ぬいぐるみでも、大好きなタレントさんのグッズでもいいでしょう。
恋心を抱きながら寝る、というのもいいですねぇ。妄想があってもいいでしょう。
こころがときめいているとき、脳はまちがいなく、よい刺激を受けています。
いくつになっても、誰か(なにか)に恋をしているうちは、脳は老いないのです」
たしかに、好きな俳優さんができたり、観葉植物の世話をはじめたり、ペットと一緒に暮らすようになってから、急に元氣になった友人、知人はたくさんいます。
からだでも、こころでも、どちらかで「つながり」を実感できたら、人生はますます楽しくなりそうですね。
〈『養生訓』関連箇所(現代語訳)〉
性欲も食欲とおなじく人の大欲だからひかえめにしなくてはならない(巻第四)
腎(先天の本)は五臓の本、脾(後天の本)は消化吸収の源だから、腎と脾がからだの根源になる。草木に根があるのとおなじであるから、養生して健康をたもつようにしなさい。根源が丈夫であれば、からだの健康もたもたれる(巻第四)
参考文献
『養生訓』 貝原益軒
『1分間養生訓』帯津良一・鳴海周平 著(ワニ・プラス)