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【vol.79】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第29回 東洋医学の基礎理論28 肺の不調


 
東洋医学の基礎理論㉘

 肺の失調には、呼吸器系の機能が低下する「肺気の失調」と、肺の津液代謝の異常による「肺陰の失調」があります。
 呼吸、津液代謝、免疫機能などを担っている肺に不調を生じると、咳や呼吸困難などの呼吸器症状が現れたり、浮腫、発汗、皮膚の乾燥などの水分代謝に関わるトラブルや、風邪を引きやすくなったなど免疫に関わる問題が生じやすくなります。
 肺の不調が現れやすい器官は、鼻、気管支、声帯、大腸、皮膚で、鼻汁や鼻詰まりと気管支と云ったアレルギー性鼻炎、咳と云った気管支喘息、声がれ、便秘や下痢などの便通異常や皮膚の痒みなどのアトピー性皮膚炎などがみられるようになります。

【肺気の失調】
 肺気の失調には、① 宣発の失調、②粛降の失調、③肺気虚があります。
 宣発や粛降の失調の原因の一つには、ウィルスや細菌などの外邪の侵入などがあります。肺気虚の原因は、長期間の宣発や粛降の失調や過労などによって肺気が不足するために、呼吸機能が減退します。

 ① 宣発の失調:宣発とは、気や津液などが生体内を自由に巡るものの流れを上向きに導き、気や津液を生体の外へと発散する働きでしたね。その宣発が失調すると、咳嗽、鼻閉、くしゃみ、喉の掻痒感、腠理の調節(発汗の調節機能)が損なわれて汗をかきにくくなったり、逆に自汗といってちょっと動いただけで汗をかくなど、さらに免疫機能が低下して風邪を引きやすくなり、通調水道の失調(津液代謝の失調)から尿量が減ったり、浮腫を生じたりします。

② 粛降の失調:粛降とは、気や津液の巡りを下向きに降ろす作用ですが、粛降が失調すると、肺気を下降させる機能と軌道を清潔に保つ機能が減退します。その結果、咳逆上気(こみ上げてくる咳)、喘息、胸満感などの症状を呈します。

③ 肺気虚:呼吸機能が減退し呼吸が浅くなり、息切れします。また病態が進むと、汗の調節が出来なくなって自汗を呈します。

【肺陰の失調】
 肺陰虚は、肺の潤いが不足した状態です。気管支炎や肺炎などの発熱性呼吸器疾患に罹患した後や長期間にわたる肺の宣発や粛降の失調、疲労による肺気の損傷や慢性疾患に伴う気虚によって肺の滋養が失われ、肺の潤いが無くなった状態です。西洋医学でいうところの「咳喘息」は、肺陰虚の一つの病態です。気道が過敏となって、会話しようとすると、過敏になった気管支によって、ちょっとした刺激で咳き込みます。滋陰降火湯などで、潤いを与えて治します。「咳喘息」には、滋陰降火湯がよく効きます。
 肺陰虚が長引くと、陰虚火旺(陰の消耗によって相対的に陽が亢進して発生する熱)になり、*潮熱盗汗、頬部紅潮といった症状を呈します。

*潮熱とは、海の潮の満ち引きの様に規則正しくある時間になったら、熱が出ることで、夜間に発熱するのを「夜間潮熱」といいます。盗汗は、寝汗を指します。

 
vol79
 
 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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