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【vol.77】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第27回 東洋医学の基礎理論26 脾の不調


 
東洋医学の基礎理論㉖

 まず脾の生理作用について復習してみましょう。
 脾の運化作用(消化・吸収・運搬作用)(図1)については、胃に入った飲食物は、脾の働きによって有益な精微物質(=栄養物質)に変えられて吸収され(「化」の作用)、さらに肺まで運び上げられます(「運」の作用)。その脾の作用を昇清作用(=昇堤作用)といいます。
 肺に上がった精微物質は、心・肺の働きによって気血に変化して、全身に運ばれていきます。
 この運化作用が失調すると、消化吸収作用がうまく行われなくなり、食欲不振、腹部膨満、下痢などの消化器症状が出現します。
 昇清作用が失調すると、栄養物質が頭部まで運ばれずにめまい、慢性の下痢、内臓下垂などを引き起こします。この病態を脾気下陥と云います。

 脾の不調を来すと、脾は、体の重要な3大要素である、気・血・津液の生成と全身の運搬に関わるため、脾の不調により、気・血・津液にも影響を及ぼしてしまいます。
 脾の異常には、①脾気虚、②脾陽虚、③脾気下陥、④脾不統血があります。

【脾気虚】:脾の機能が低下して気が不足した病態です。元気が出ない、体のだるさといった気虚の症状の他に、食欲不振、下
痢、吐き気、腹部が張るといった胃腸症状を伴います。
 脾気虚の原因には、図2のように⑴先天的な体質虚弱、⑵飲食の不摂生、⑶慢性疾患、⑷過労による損傷によって脾気が不足して運化機能(消化吸収機能と気・血・水の運搬作用)の低下により消化不良や味覚の低下を来たし、脾の統血作用(出血しないようにする)の低下(脾不統血)による出血を生じ、さらに全身に気血水を運べなくなり、元気が出ない、顔色不良などを生じ、昇清作用(栄養分を上に持ち上げる作用)の低下による下痢や胃の降濁
作用(消化物を下向きに降ろす)の低下による便秘、腹部膨満を来たします。
 脾気下陥によって、慢性の下痢、脱肛、内臓下垂を来します。さらに脾の昇清作用の低下によって肺に精微が届かず、肺気虚による息切れなどを生じます。基本処方は、四君子湯を用い、脾気下陥には、補中益気湯を用います。

【脾陽虚】:図2のように脾気虚の病態がさらに進んだり、腎陽が不足すると脾を温煦(=温める)出来なくなり、脾の陽気が不足してきます。脾気虚の症状に加えて体の内側から寒が生じ腹部の冷痛・下痢・未消化便や四肢の浮腫などを生じます。基本処方には、人参湯を用います。

 
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プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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