【vol.76】こころとからだの健幸タイム|ゲスト 大山峻護さん・桜華純子さん 前編
ここ数年、とても親しくお付き合いさせていただいている大山峻護さんと桜華純子さんご夫妻。格闘家の経験を活かした企業研修トレーナーと、「脳腸セラピー」で美と健康を応援する美容家としてもご活躍のお二人に「こころとからだ」の健幸などについてお話を伺いました。
鳴海周平(以下、鳴海)
お二人とは、最初の出会いが別々だったので、ご夫婦と聞いて驚きました。峻護さんには、いつもご飯会にお誘いいただき、純子さんには毎年末恒例のコラボ講演会の司会でもお世話になっています。いつも本当にありがとうございます。
桜華純子さん(以下、桜華)
こちらこそ、ありがとうございます。高島亮さん、ひすいこたろうさん、はせくらみゆきさんとのコラボ講演会はとっても楽しくて、毎年、ご参加の皆さんと一緒に楽しませてもらっています。
大山峻護さん(以下、大山)
僕も、妻から聞いて驚きました。人の出会いも、やはり「ご縁」でつながっているんですね。
鳴海 「ご縁」といえば、お二人の出会いのお話にも、とても運命的な「ご縁」を感じました。たしか、峻護さんが出演していた舞台を、純子さんが観にいったんですよね。
桜華 そうなんです。当時、勤めていたクリニックの院長に誘われて、パルコ劇場に『双頭の鷹』という舞台を観に行きました。そこで、上半身裸で筋肉隆々の家来役として出演していたのが主人だったんです。
「運命の赤い糸」に導かれて
桜華 舞台が終わったあと、私はあまり時間がなかったので、すぐに帰ろうとしたのですが、一緒に観ていたお友達に「純ちゃん、1分だけでいいから!」と引き止められて、「まあ、1分だけなら…」と楽屋へ行ったんです。そのときに「どーも、どーも!」と出てきてくれたのが主人でした。舞台ではセリフのない役だったので「ああ、声が高くて、やさしい声の人だな」というのが、そのときの印象です。時間がなかったので、ご挨拶だけですぐに失礼したのですが、あのとき「5分だけ」と誘われていたら行かなかったでしょうし、このときの出会いが今につながっていると思ったら、本当に「ご縁」としか言いようがありません。
大山 じつは、この舞台には出演しない予定だったんです。主演と演出の美輪明宏さんから出演オファーをいただいたのですが、美輪さんの舞台に出るなんてそんな恐れ多いことを…と思いましたし、まだ格闘家として現役でもありましたから、丁重にお断りさせてもらうことにしました。そうしたら「では、美輪さんご本人に直接お断りしてください」と言われて直接伺ったんですが、美輪さんのオーラに圧倒されてしまいまして…思わず「よろしくお願いします!」と答えてしまっていました(笑)
鳴海 お二人ともご自分の意思ではないところで「動かされていた」感じだったんですね。
大山 それで、僕はその場で彼女に一目惚れしてしまって、次の舞台の休演日には彼女がセラピストをしていたお店にアーユルヴェーダのマッサージを受けに行っていました(笑)アーユルヴェーダの眼精疲労をとるマッサージって、目に直接オイルを入れるんです。なので、けっきょくこのときは彼女の顔を見ることができず(笑)次の週には妹に行ってもらって、「うちの兄は強くてかっこいいんです」という感じで、とにかく僕のことを褒めてきてもらったりと、あの手この手で必死にアプローチし続けましたね。
鳴海 峻護さん、行動が早い!格闘家の俊敏性が活かされてますね(笑)
大山 でも、なかなか先に進まなくて、ある日、意を決して「好きになっちゃったんだよね」って告白したんです。沖縄料理店で、島らっきょうをかじりながら(笑)
桜華 でも、そのときは恋愛対象として見ていなかったんです(笑)だから「付き合ってほしい」と言われたら、きっとうまくいっていなかったと思います。「好きになっちゃったんだよね」と言われたから、自然に「ありがとう」って、嬉しい氣持ちで受け取ることができました。
それから連絡を取り合ううちに、あるときふと「私、この人と結婚するんだな」って思ったんです。なぜか「この人を守りなさい」という天からの声が聞こえたような氣がして、これはもう運命だと直感しました。
鳴海 天から、格闘家を「守りなさい」って言われる純子さん、どれだけ強いんですか(笑)
大山 そういったご縁で2007年に出会って、3年後の2010年に結婚しました。
じつは、結婚してからわかったことなんですが、僕がYouTubeで懐かしいCM映像を見つけて、彼女に見せたんです。AIWAというメーカーのミニコンポのCMで、アイドルの卵みたいな女の子が「早く会いたいな」って言うのが可愛くて、大好きでした。初恋ですよね。その少女に、僕も「会えるよ」って、いつも画面に話しかけていたんだよね、って言ったら「それ…わたし!」って言うんです。もう、びっくりしました。
桜華 「早くテレビで歌いたいな」というセリフが、「早く会いたいな」って聞こえてたみたいです(笑)
鳴海 「ご縁」の力は、聴覚にも作用するんですね(笑)それにしても、すごい伏線です。
大山 このエピソードは、鳴海さんと共通の友人でもある作家のひすいこたろうさんにも本のなかでとりあげてもらいました。
大山さんは純子さんと出会って結婚しましたが、CMの少女が純子さんだと知りませんでした。しかも、初恋のことも忘れていました。ただCMを見たとき「いつか、絶対に会いに行く」と決めた。
ピュアな想いで強く決めたことって奇跡を起こすようです。
たとえその後、忘れていたとしても、一度の決断で、物語は起動し始めている。
それだけ、真に決めるってすごいパワーを生み出すってことなんです。
そして運命の赤い糸ってほんとうにあるのかもしれないって思いましたよね?
「運命の赤い糸があるから、必ず会える」実は、そう思うことも未来からの逆回転につながります。運命の赤い糸とは、どんな選択をしても、必ず会えるようになっている。それが運命の赤い糸です。そう思えば過度の執着も手放せるようになります。執着という抵抗がないほうがことはスムーズに流れるのです。
嘘のようなことがほんとうに現実になる。
人生って映画より面白い。やめられないですね。
(ひすいこたろう・大嶋啓介・白鳥マキ著
『1分彼女の法則』より)
鳴海 ひすいさんが「※予祝」について書いた本ですね。
大山 はい。「予祝」については、僕も格闘家時代に経験していますから「未来からの逆回転」という考え方にも、とても納得できました。
※ 予祝…先に喜び、祝うことで嬉しい未来を引き寄せるという考え方。春の桜を秋の稲に見立てて豊作を願う「花見」も予祝のひとつ。
世界に名だたる強豪たちとの対戦
大山 格闘家の現役時代にコーチから「今年、誰と戦って勝ったらいちばん興奮する?」と訊かれたので「ピーター・アーツ」って答えたんです。ピーター・アーツといえば、当時世界ナンバーワンの実力者で、僕よりも明らかに格上の選手でしたから、ふつうに考えたら同じリングで戦える可能性は、ほぼゼロに近い。でも、だからこそピーター・アーツと大晦日にテレビ中継される『K -1 PREMIUM2005 Dynamite!!』で戦って、しかも1分以内に勝つ、という目標にとても興奮したんです。
先ず、ピーター・アーツに勝って喜んでいる自分を想像しました。勝利者トロフィーのどこにキスをするのかまでを詳細にイメージして、喜びながらの猛練習です(笑)
試合の1ヶ月前に対戦相手が発表されたのですが、残念ながら僕ではありませんでした。それでもピーター・アーツ対策の一人沖縄強化合宿を決行した僕を、まわりの皆は大笑いしていましたが、戦えているイメージだけで嬉しすぎて、大晦日に向けてトレーニングを続けていたんです。
そうしたら、試合の9日前にピーター・アーツの対戦相手がケガをしてしまって、急遽そのときトレーニングをしていた僕に連絡がありました。「大山、9日前だがやれるか?」と訊かれて「はい、準備万端です!」って答えていました。
鳴海 まさに、準備万端ですよね(笑)
大山 そして、戦いの舞台では開始30秒でピーター・アーツに勝つことができたんです。
鳴海 「1分以内に勝つ」も実現したんですね。
大山 はい、トロフィーのどこにキスするかまで、イメージどおりです。ひすいさんから「予祝」という話を聞いたときに、この体験をすぐに思い出しました。
鳴海 峻護さんは、ピーター・アーツの他にも、ヴァンダレイ・シウバやグレイシー一族といった世界に名だたる強豪とも対戦してきたわけですが、ご結婚後は純子さんがセコンドにつくこともあったそうですね。
桜華 はい、2014年に現役を引退するまで、試合ごとに寿命が縮んでいく感じで(笑)いつも「私が死んでもいいから、勝たせてあげてください」って願っていました。
大山 ほんとうにありがたいです。妻には感謝しかありません。
「からだ」からのアプローチで「こころ」を元氣に
大山 さんざん心配をかけましたが、2015年に格闘技の現役から退きました。でも、引退したのはいいけれど、目標がなくなってしまったことで半年くらい悩みました。それまでまわりにいた人たちも、引いたようにいなくなってしまって…。そこで、携帯電話に登録されている番号に片っぱしから電話して、アポが取れた人にどんどん会っていったんです。すると「格闘家としてのこれまでの体験を活かせることがあるんじゃないか」というイメージが、だんだん湧いてきました。
格闘技は、からだや技を鍛えることはもちろんですが、こころの持ち方によってパフォーマンスがまったく違ってきます。だから、いつも「からだとこころの連携」を意識していました。こころが安定しているとからだもよく動くし、からだを動かすことでこころを高揚させることもできます。
ちょうどその頃、多くの企業にとって精神的に病んでいる社員さんへのメンタルヘルスが大きな課題になっていると報道されていました。厚生労働省がストレスチェックを義務付けするという情報を聞いて、もしかしたら僕が経験してきたことが役に立てるんじゃないかと思ったんです。
鳴海 「心身一如」とか「心・技・体」と言われるように、こころとからだと技(パフォーマンス)は、つながっていて、そのことをずっと体現してきた峻護さんだからこそ、できることがあったということでしょう。
大山 僕の現役時代の戦績は33戦14勝19敗と、けっしてきらびやかなものではありませんが、負けが多かったぶん、立ち上がった回数も多い。負けたときは、やっぱり大きく落ち込みますから、そこから氣持ちを立て直していくために身につけた方法を体型立てることで、企業のメンタルヘルスにも役立ててもらえるんじゃないかと思いました。
僕の経験から「こころよりもからだからのほうがコントロールしやすい」ということがわかっていましたから、コントロールしやすい「からだ」からアプローチして「こころを元氣にする方法」を伝えてみることにしたんです。
たとえば、大股で歩くことで、こころは自然に上向きになって軽くなり、自信に満ち溢れてきます。それは、自信に満ち溢れたときは、そういう歩き方になるからで、つまり、からだの動きからこころを導いているわけです。ポイントは背筋を伸ばして、できるだけ歩幅を大きくとること。下半身の筋肉を使うことで分泌されるマイオカインというホルモンの若返り効果も手伝って、からだとこころによい循環が起こってきます。
上を見上げながら口角を上げる(笑う)という方法もオススメです。氣分が落ち込んでいるときはうつ向きがちになるので、その逆の「見上げる」という行為をする。そして、笑顔は楽しいときの動作なので、先に笑顔を作ってしまうんです。
からだで感情(こころ)の先取りをすると、こころも自然についてくるということを企業研修などではまず体験してもらっています。
じつは、初めて研修をさせてもらう会場では、不穏な空氣が会場を包み込んでいることが多いんです(笑)ピチピチのTシャツを着て大きなスーツケースを持った男が、おもむろにスーツケースからボクシンググローブやミットを広げ始めるわけですから、なにをさせられるのかと不安になってしまうのも無理はないですよね。
でも、そのままでは研修の雰囲氣にも影響しますから、先に僕が楽しい氣持ちになってしまう。先ほどご紹介した「口角を上げて笑顔になる」わけです。すると、研修を受けている皆さんも、いつの間にか楽しそうな笑顔になっているんですね。
こころを元氣にするためには、からだからアプローチする方が簡単なように、「相手を変える」という難しいことも、先に「自分の氣持ちを変えてしまう」ことで、簡単に実現できてしまうのだと思います。
鳴海 自分の氣持ちを変えるためにする「からだからアプローチ」が、相手の氣持ちにもつながっている。壮大な宇宙の仕組みをあらわしている「ひな型」のようで、とても興味深いお話ですね。
次号の後編では桜華純子さんから「脳腸セラピー」などについてお話を伺います。どうぞお楽しみに!!
プロフィール
大山 峻護さん
5歳より柔道を学び、全日本実業個人選手権81キロ以下級で優勝。
2001年プロ格闘家に転身。「PRIDE」「HEROS」で、ヘンゾ・
グレイシーやピーター・アーツなどの強豪を相手に幾多の勝利を収める。
2012年ROAD FC初代ミドル級チャンピオン。2014年に現役を引退後は
格闘技を応用した研修プログラム「ファイトネス」で学校などの教育
機関やスポーツチーム、100社を超える企業などで研修をおこなっている。
桜華 純子さん
中学生のときに河田純子の名前で歌手デビュー。
シングル9枚、アルバム3枚をリリースする。
20歳で芸能界を引退後は一般企業に勤めながら
心理学や美容、健康について学ぶ。
エステティック、アーユルヴェーダ、台湾式
リフレクソロジー、経絡トリートメントなどの
修行を積み、2009年に女性のためのトータルサロン
「サロン・ド・エンジェル・エンジェル」をオープン。
「脳腸セラピー」などを通して美と健康の素晴らしさを伝えている。