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【vol.75】こころとからだの健幸タイム|ゲスト 星澤 幸子 さん・後編


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 札幌テレビ「どさんこワイド」料理コーナー出演が今年で30年目を迎え、ギネス記録を更新し続けている料理研究家の星澤幸子先生。本誌ぶんぶん通信」連載でもたいへんお世話になっています。。後編の今号では「心身を健康に保つための食べものと食べ方」などについてお話を伺いました。
 

 

食と人相と運

鳴海周平(以下、鳴海)
 食べたものが、からだの基になっていることは容易に想像できますが、こころとも深く関係していることが、さまざまな事例からわかっています。
 例えば、アメリカの高校で週に5本以上炭酸飲料を飲む生徒は、まったく飲まない生徒に比べて銃器の所持率が高いとか、イギリスでは鬱や統合失調症の人に血糖値の問題がある場合が多いことなど、とくに「血糖値の急激な変化」が、こころを不安定にする要因になっているようです。

星澤幸子さん(以下、星澤)
 食べものがこころに影響しているのは、あきらかですね。血糖値は生活習慣病にも関係していますから、こころとからだの健康を保つうえで優先的に氣をつけるべきことかもしれません。繊維質の多い野菜類やたんぱく質を先に食べて、炭水化物(糖質)をあとに食べるように心がけるだけでも、血糖値の
上昇は穏やかになります。また、日本に来た外国人が、味噌汁のおかげでホームシックにならなかったという例もありますから、味噌もこころを元氣にしてくれる食材なのだと思います。

鳴海 日本の伝統食である味噌が、外国の方も元氣にしてくれるというのは頼もしいですね。オレンジジュースを飲むとじんましんが出るという多重人格の人が、別の人格に入れ替わった時にはじんましんが消えてしまうという話もあります。こころとからだと食べものは相互に関係し合っているということなのでしょう。

星澤 食べものが心身に影響を及ぼし、こころの持ち方によって食べものの影響も変わる。とっても興味深いですね。だとしたら、食卓にきれいなお花を飾ったり、お氣に入りのテーブルグッズを揃えたりと、食卓を楽しくするひと工夫もたいせつなことだと思います。
 食べものが人相や運まで変えてしまうという例が、江戸時代の観相学者でもあった水野南北でしょう。若い頃にはずいぶんな極道者で、易者から「険難の相が出ているから長くは生きられない」と告げられ、禅寺への出家を願い出ます。ところが住職から「1年間、麦と大豆だけで過ごせたら入門を許す」と言われ、助かりたい一心で言われたとおりの食生活を過ごしたところ、1 年後再会した易者から「険難の相が消えている」と告げられたのです。その後、本格的に観相学を学んだ南北は「食べものと人相と運は、切っても切り離せない関係にある」と悟ったと言います。

鳴海 ホリスティック医学の第一人者である帯津良一先生も「免疫力の高い人は人相がいい」と仰っていました。星澤先生は、まさにそのお手本ですね。

星澤 ありがとうございます。番組が始まった当初、将来的な不安もあって、その頃一緒に出演していた観相学の先生に「今後、私はどうなるのでしょうか?」と訊いたことがあるんです。その時、先生は「あんたは食事がしっかりしているから大丈夫!」と、たったひと言で片づけられてしまい、拍子抜けした記憶があります。でも、当時から食にだけは氣をつけていましたから、こうして無事に番組放送30年を迎えることができたのもこの人相のおかげということにしておきましょうか(笑)

腸相をよくする方法

 
星澤 人相と同じくらい「腸相」というのもたいせつだと思っています。栄養やからだのことを学んでいくと、必ず「腸」に行き着きますが、それだけ大事な臓器ということなのでしょう。どんなに脚が丈夫でもお腹が痛いと立っていられないことからも、そのことがわかります。腸には1~1.5㎏の腸内細菌が住んでいて、免疫の大半も腸が司っています。

鳴海 進化の順番でも、いちばん最初に登場したのが「腸だけのような生物」だそうです。からだの中で「最古の臓器」と呼ばれる理由ですね。脳とも独立していて、消化・吸収を自らコントロールしていることから「人間は考える管である」と言う専門家もいるようです。

星澤 ますます腸の重要性がわかるお話ですね。それほどたいせつな臓器を食べたものは必ず通るわけですから、なにをどんなふうに食べるかが、そのまま健康状態に反映されるのは当たりまえのことだと思います。
 昔から日本人は漢方に使われるようなものを食べてきましたが、それがとても腸に良い食材だったことがわかっています。例えば、ゴボウや蓮根、干し椎茸、こんにゃく、寒天、豆、昆布などで、お祝いの食事には必ず入っていました。これらの食材は食物繊維が多く「腸の砂落とし」ともいわれています。子どもの頃は「お腹に砂が溜まっているのかな? 」と不思議に思ったものですが(笑)現代風にいえばデトックス効果のことだとわかります。そのような食材が自然な形で食卓に組み込まれていた頃は、おそらく便秘などなかったでしょうし、腸相もよかったのではないでしょうか。

鳴海 腸相がよくなる食べものとしては、食物繊維の他にも発酵食品が思い浮かびますね。

星澤 味噌や醤油、納豆、漬物といった日本の伝統食や、海外でもチーズやヨーグルト、キムチ、パンなど伝統的に発酵食品を食してきた歴史があります。発酵させることで食べものは保存性や滋養強壮作用が高まり、味や香りもよくなります。発酵させたものを「美味しい」と感じたり「よい香り」と感じるのは、からだが喜んでいるからでしょう。
 発酵させることで解毒した「フグの卵巣の糠漬け」もたいへんな美味…想い出したらお酒とご飯が欲しくなってきました(笑)

鳴海 お酒も発酵飲料ですね。星澤先生とのお食事には、とくに欠かせないと心得ています(笑)

星澤 なんだかお酒好きだと誤解されそうなのでお断りしておきますが、飲みたいときが他人より少し多いだけなんです(笑)思えば、まだ小さいころ神棚に供えたお神酒を飲んで「美味しい!」って思いましたから、そのころからスイッチが入っていたのかもしれません。ほどほどに飲めば「百薬の長」とも言いますから、こちらの発酵飲料も上手に活用したいものですね。
 便は「からだからの便り」ですし、運知というくらいですから、腸相がよいと運もよくなります。

鳴海 人相も腸相も「食」がその鍵を握っているということですね。

好けるものは薬にあつべし

 
鳴海 先ほど「美味しいと感じるのは、からだが喜んでいるから」というお話がありました。旬のものが美味しいのは、そういうことなんでしょうね。

星澤 現代のように輸送や保存が発達していなかったころ、食べられるものは住んでいるところで採れる旬のものに限られていたことでしょう。いまは食料の約6割を海外からの輸入に頼っていますが、これはどう考えても不自然なことです。フードマイレージという食卓に上るまでにどのくらいの距離を運ばれてきたかという指数があって、日本は韓国やアメリカの約3倍、イギリスやドイツの約4倍にもなるそうです。食料を遠くから運んでくることは、輸送にかかるエネルギーの問題だけにとどまらず、未熟なうちに収穫しなければならなかったり、防腐や防カビ処理が必要になったりといったデメリットも伴います。もともと豊かな食文化を持っている日本なのに、なんだかもったいないですよね。

鳴海 時代のグローバル化に伴って、人間のからだも食べものに対してグローバルにはなってきているのかもしれませんが、やっぱり近場で採れた旬のものを食べたときには心身の喜びの大きさが違うように感じます。

星澤 仏教用語の「身土不二」という言葉を食という観点から捉えると「住んでいる土地と我が身は切っても切り離せない関係だから、その土地に育つその季節のものを食べるのがよい」と解釈できます。

鳴海 季節によって衣服を替えるように、自然界の一部である我々の心身も「近場の旬のもの」をいただくことで、内側から自然に衣替えができるのかもしれませんね。そして、それは「美味しい」という感性が教えてくれる。あらためて、自然界ってよくできているなぁと思います。

星澤 「美味しい」という感性は、その人にとっての「最善の食」を教えてくれるなによりの道標だと思います。ただ単に、値段が安いからとか、テレビで観たからとか、誰かがからだによいと言っていたからというような「外側からの情報」で判断するのではなく、自分のこころとからだがどう感じるのかという「内側の感性」をたいせつにしたいものですね。

鳴海 明から清の時代にかけて活躍した劇作家の李笠翁は「好けるものは薬にあつべし」という言葉を遺しています。好きなものはその人のからだが欲しているのだからなによりよい薬だという意味で、甘いもの好きの僕はよく言い訳にしています(笑)

星澤 江戸時代の儒学者で『養生訓』を著した貝原益軒さんも「好きなものを少しずつ食べるのがからだによい」と述べています。いろいろとお話してきましたが、けっきょく「美味しいと感じるものは、からだによい」という、いつもの結論に落ち着きましたね(笑)

鳴海 いろいろな情報が溢れていますが、拠り所は「自らの感性」ということですね。本日も貴重なお話をどうもありがとうございました。

 
 

星澤 幸子さん プロフィール

料理研究家・北海道南富良野町生まれ。
札幌テレビ「どさんこワイド」料理コーナーへの
生出演は30年目になり、2019年には7000回を達成。
料理の内容とキャスターとのやり取りの面白さが
幅広い層から人気を集めている。
日本テレビNG集では毎回「星澤幸子先生編」として
全国に紹介され、有吉弘行さん司会の「有吉反省会」や、
zipのご当地有名人に出演を果たすなど全国にも活躍の
幅を広げる。
2009年「東久邇宮文化褒賞」、翌年には
「北海道食育推進優良活動表彰」を受賞。
2015年イタリア・ミラノでの食の世界万博において
料理講師も務める。
料理コーナーへの生出演回数は現在もギネス記録を更新中。

 

 

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