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【vol.74】こころとからだの健幸タイム|ゲスト 星澤 幸子 さん・前編


kenkou74

 札幌テレビ「どさんこワイド」料理コーナー出演が今年で30年目を迎え、ギネス記録を更新し続けている料理研究家の星澤幸子先生。本誌ぶんぶん通信」連載でもたいへんお世話になっています。前編の今号では、料理の道へと進むことになったきっかけや「食」についての基本的な考え方などについてお話を伺いました
 

 
鳴海周平(以下、鳴海)
 ぶんぶん通信への連載など、いつもありがとうございます。今日はあらためて「料理研究家・星澤幸子ができるまで」について(笑)お話を伺いたいと思います。

星澤幸子さん(以下、星澤)
 では先ず、料理コーナーのように、材料の説明からしましょうか(笑)
「好きこそものの上手なれ」というように、子どもの頃から食べることが大好きでした。北海道・南富良野の農家で生まれ育ったので、農繁期には学校を休んで家業の手伝いです。からだを動かすので、いつもご飯が美味しくて本当によく食べたと思います。いちばん想い出に残っているのは、母が作ってくれた酒饅頭を食べ過ぎて立てなくなってしまったこと。立てなくなるまで食べ過ぎる経験ってあまりないですよね(笑)
 ですので、先ず「食べることが大好き」というのが私の原点でしょうか。

「泡立て上手ね!」のひと言が人生の指針に

 
星澤 ふだんは農作業で忙しい母でしたが、農閑期になると、いろいろな料理を作ってくれました。私はいつも祖母の料理作りを手伝っていたので、母が台所に立つ時もワクワクしながら一緒に作ったものです。そのおかげか、中学生の時に家庭科の授業で先生から「泡立て上手ね!」って褒められたんです。ますます料理をすることが楽しくなって、中学2年生の時には「将来は料理の先生になりたい」という、はっきりした夢になりました。

鳴海 中学生ですでに将来の夢ができて、しかも、そのことが実現しているわけですね。

星澤 先生のひと言が人生の指針になろうとは、その時は思いもしなかったですね。ただ、小さな田舎町だったので、進学の夢を両親になかなか打ち明けることができず、成り行きで受けた就職の試験にまで合格してしまいました。でも、やっぱりあきらめきれずに思い切って切り出したんです。
「花嫁道具はいらないから、短大に行かせてほしい!」って。父は「下手に学問を身につけると嫁の貰い手がなくなる! 」と断固反対。ひと晩中泣いている私を見かねた母が「そんなに行きたいなら試験だけでも受けてみたら」と言ってくれたことで、その後なんとか短大へ進ませてもらえることになったんです

鳴海 人生の転機となるような節目の前には、それを試すような出来ごとが起こるとも言いますね。決心をより強く固めてくれるために、お父様がそういった役割を担ってくれたのかもしれません。

星澤 たしかに、振り返ってみると節目ごとに方向性が定まっていったようにも思います。短大に通いながらいくつもアルバイトを掛け持ちして料理学校へ進みましたが、助手はいわば丁稚みたいなもの。安いお給料で六畳一間の生活でした。現実は厳しくて、生活を維持することで精一杯なうえ、勇み過ぎて周りとはかみ合わず、毎日泣いてばかり。職場の前まで行くと胃が痛み出します。それでも、悔しさから料理の練習だけは毎日していました。お休みの日には別の料理学校にも通っていたので、辛いと言いながら、やっぱり料理が好きだったんですね。おかげで精神的にも相当鍛えられたし、やっぱり自分は料理の道で行くという決心が固まった時期でもあったと感じます。

鳴海 農作業で鍛えられた体力に学生時代に鍛えられた精神力。もう鬼に金棒ですね(笑)

星澤 はい、こうして「星澤幸子の原型」が出来上がりました(笑)

テレビ出演のきっかけは手タレから

 
星澤 その頃、テレビコマーシャルの包丁を使うシーンで「手タレ」のお仕事をいただきました。日々鍛えていた包丁さばきが認められたようで嬉しかったですね。26歳の時には札幌テレビ放送のワイドショーで料理のコーナーを担当させていただくお話をいただき、レギュラー出演も始まったのですが、子供を授かったことを機に1年ほどで家庭に入りました。それでも、しばらくは時々テレビに出演させていただいたり、自宅で料理教室を開いたりしていました。ただ、さすがに子供が3人になった頃にはとても料理研究どころではなくなってしまいましたね。

鳴海 料理の手もとが映されるコマーシャルに選ばれたのは、料理教室の中でも星澤先生の包丁さばきが際立っていたのでしょうね。そして、お子さんが生まれて、またひとつの節目を迎えられたということですか。

星澤 はい。その後、夫の転勤で5年ほど広島に移住しまして、札幌へ戻ってすぐに以前お世話になった札幌テレビ放送のプロデューサーとばったりお会いしたんです。そこで『どさんこワイド』という番組の毎日生出演する料理コーナー「奥様ここでもう一品」へお誘いをいただきました。

鳴海 高視聴率を保ちながら今年で30年という長寿番組の人氣コーナーですね。
 有名人なので、北海道でタクシーをご一緒すると、運転手さんが「あーっ、星澤先生!」と喜びますし、飲食店へご一緒すると「あーっ、星澤先生!」
と、お店の方が緊張されます(笑)著名な料理の先生に下手なものは出せない!という意氣込みに、ご一緒した僕まで恩恵にあやからせていただいています。
 昨年、考案したレシピ数が7000品を超えたということで、ギネス記録を更新し続けていらっしゃいますが、これだけの品数はどうやって考えているのでしょう?

星澤 もう毎回、必死にひねり出していますよ。必死だから、たまにNGも出しちゃうのかしら(笑)

鳴海 星澤先生のNGシーンは何度も全国放送されているので、ご存知の方も多いかと思います。『有吉反省会』には「大雑把すぎる料理研究家」として紹介され、しっかり反省していましたね(笑)
 台に落ちた食材を思わずフライパンに入れてしまって「火を通したら大丈夫!」とか、チョコレートを溶かすための湯煎をする際に、チョコに直接お湯を入れてしまったとか、おしゃべりに夢中になってトーストを焦がしてしまったにもかかわらず「…ま、これくらいでいいか」と、焦げたパンで調理が進んだとか…

星澤 もう、それくらいで…(笑)
 すべて生放送中の出来ごとなので、しょうがないんです(笑)あ、収録でも忘れられないNGがありました…

鳴海 スペインのオリーブ事件ですね。現地のオリーブ畑を取材していて「このくらい熟しているのが美味しいんですよ!」と言って、オリーブの実を口に入れた瞬間に「うぇっ!マズっ!!」言って、豪快に吐き出したという…

星澤 だって、本当にシブかったんですもの(笑)

人に良いと書いて「食」

 
星澤 でも、スペイン料理は美味しいものばかりでしたよ。番組のツアーでイタリアやドイツなどにも行きましたが、どの国も伝統的な料理がとくに素晴らしくて、健康長寿の源になっているんです。日本だと、ご飯に味噌汁、漬け物、お浸し、納豆や豆腐などの豆料理に魚介類といったところが伝統食になりますね。

鳴海 2006年にアメリカの健康情報誌『ヘルス』に掲載された世界の5大健康食品は、大豆、レンズ豆、キムチ、ヨーグルト、オリーブ油で、5品目中、豆と発酵食品が4品目を占めているんですよね。日本だと味噌と納豆が「豆を発酵させたもの」にあたりますし、豆腐は大豆製品、漬け物は発酵食品です。
 世界各国をみても、それぞれに該当するような伝統食が食べ継がれてきた地域には、健康で長寿な方が多いように思います。

星澤 アメリカのマクガバン上院議員が7年の歳月をかけて調査した「マクガバンレポート」には「もっとも理想的な食事は、元禄期の日本の食事である」と書かれています。なるべく精製しない穀類を主食とし、季節の野菜や海藻、小さな魚介類を副食にして、具沢山の味噌汁をいただくという食生活です。

鳴海 理想的な食事バランスの考え方として、素材を丸ごといただく「一物全体」というものがありますが、精製していない穀類や小さな魚介類も「丸ごと」ですね。

星澤 住んでいる土地の旬の野菜にはエネルギーが満ちている「身土不二」という考え方も、お浸しや漬け物、具沢山の味噌汁で実現されていますしね。
 2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことは、世界各国の伝統料理の中でも、こうした日本の伝統食の素晴らしさが評価されたということ。「人に良い」と書いて「食」となることを、和食はまさに体現しているのではないでしょうか。

鳴海 人に良いと書いて「食」。先人は漢字にも多くのヒントを遺してくれているんですね。

食べる喜びは、生きる喜び

 
星澤 漢字といえば、じつは大人になってからもしばらく「皿」と「血」の違いがよくわからなかったのですが、ある時ふと「皿に/(箸)をつけて食べたものが血になる」と思ったんです。つまり、血肉(からだ)は食べものからできているということ。そう考えると、キャベツでも大根でも、いくら高くても数百円の差。洋服には何万円もかけるのに( 笑)からだの素になるものをケチるって、なんだかおかしいですよね。健康であれば働けるわけだし病院代も薬代もかかりませんから、けっきょくは安くつくことになるんです。

鳴海 本当におっしゃるとおりだと思います。「頭」「喜ぶ」「嬉しい」「豊か」という漢字も、豆の素晴らしさを伝えてくれていると考えたら納得がいきますね。

星澤 豆は本当に素晴らしい食材だと思いますよ。ですから「からだが喜ぶものを何か1品!」と言われたら、私は迷わず「具沢山の味噌汁」をお勧めします。味噌は「豆を発酵させたもの」ですし、出汁に使う昆布も長寿食(粉末昆布でもOK)、鰹節も発酵食品です。そこへエネルギーに満ちた旬の野菜が入るわけですから、もう最強の健康食ですよね。面倒なときには、お椀やカップに大さじ1杯の味噌と鰹節、そこへとろろ昆布や乾燥わかめ、お麩などを入れたらもう出来上がり!

鳴海 身体の礎だから「身礎」なんだという話も聞いたことがあります。「からだは食べたものからできている」と考えると、やはりふだんからのこうした積み重ねがたいせつなんでしょうね。

星澤 「美味しい」という字を分解すると「口から美しい未来がある」と読めます。
 美味しい!と感じること、つまり「食べる喜び」は、未来を美しくしてくれる「生きる喜び」そのものなのだと思います。
 
 
次号の後編では「心身を健康に保つための食べものと食べ方」などについてお話を伺います。どうぞお楽しみに!!

 

星澤 幸子さん プロフィール

料理研究家・北海道南富良野町生まれ。
札幌テレビ「どさんこワイド」料理コーナーへの
生出演は30年目になり、2019年には7000回を達成。
料理の内容とキャスターとのやり取りの面白さが
幅広い層から人気を集めている。
日本テレビNG集では毎回「星澤幸子先生編」として
全国に紹介され、有吉弘行さん司会の「有吉反省会」や、
zipのご当地有名人に出演を果たすなど全国にも活躍の
幅を広げる。
2009年「東久邇宮文化褒賞」、翌年には
「北海道食育推進優良活動表彰」を受賞。
2015年イタリア・ミラノでの食の世界万博において
料理講師も務める。
料理コーナーへの生出演回数は現在もギネス記録を更新中。

 

 

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