Vol.234 10月 養生訓的「お酒の楽しみ方」
養生訓的「お酒の楽しみ方」
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
酒は天下の美禄なり
健幸の達人としても知られる貝原益軒さんの『養生訓』のなかに「酒は天下の美禄なり」という箇所があります。
「美禄」というのは「手厚い俸禄(よい給料)」という意味なので、「お酒は天からのご褒美です」というような意味でしょうか。
もともとは『漢書』(前漢の歴史を記した後漢時代の書物)に書かれていた言葉らしいので、「酒の効用」については、かなり昔から云われていたんですね。
そんな古い書物からこの一節を見つけてきた益軒さんも、かなりのお酒好きだと思われます(笑)。でも、このあとに次のような文章が続いています。
「少のめば陽氣を助け、血氣をやはらげ、食氣をめぐらし、愁いを去りて、興を発して、甚だ人に益あり。多くのめば、又よく人を害する事、酒に過たる物なし」
(巻第四の44)
少し飲むならいいけど、たくさん飲んじゃダメ!と言っているんですね。
「適量」の目安とは?
では、どの程度が「少し」で、どこからが「たくさん」なんでしょうか?
「酒を飲には、各々によつてよき程の節あり。少しのめば益多く、多くのめば損多し」(巻第四の45)
その「程度」は人それぞれによって違う、というのが益軒さんの見解です。
ホリスティック医学の第一人者である医師の帯津良一先生と、この「程度」についてお話したときに次のような目安で一致しました。
「美味しいと感じているうちで、翌日に残っていないこと」
「美味しい」と感じるのは、そのときからだが欲しているからで、翌日残っているのは、その人の処理能力をオーバーしているからと考えることができるからです。
この「適量」の範囲で楽しむのであれば、お酒は「甚だ人に益あり」の「天下の美禄」になるのだと思います。
旬の食材が美味しいこの季節。お酒も美味しく楽しみたいものですね。
参考
『養生訓』 貝原益軒
『貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意』
帯津良一著(朝日新聞出版)