【vol.74】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第24回 東洋医学の基礎理論23 心の不調(後編)
東洋医学の基礎理論㉓
心の失調には⑴心陽と心気の失調と⑵ 心陰と心血の失調があり、本誌72号では⑴心陽と心気の失調を説明しましたので、今号では⑵心陰と心血の失調について説明します。
⑵心陰と心血の失調
心血とは、精神活動を行う脳に必要な栄養分となるもので、心陰は、精神が過剰に興奮しないように心を落ち着かせる作用を有します。そもそも心は、陽に傾きやすいので、常に心陰や心血で制御する必要がありますが、心血が不足する心血虚や心陰が不足する心陰虚になると、共通症状として精神が興奮しやすくなって、失眠(不眠)や多夢になりやすくなります。
心陰と心血の失調には①心血虚、②心陰虚、③心血瘀阻などがあります。
①心血虚(図1、図2)
心血が不足すると、脳に栄養分が与えづらくなり、精神活動の機能低下が現れやすくなり、集中力低下、健忘、過剰な不安感、頭がクラクラすると云った症状の他に心陽が相対的に亢進して、心火を招き、頭が興奮しやすくなって不眠、多夢を引き起こします。
②心陰虚(図1、図3)
心血虚の状態がさらに悪化して虚熱(陰が不足して相対的に陽が優勢となって生じた熱)を伴います。五心煩熱(四肢の火照り)、熱感を伴う盗汗(寝汗)・口燥感・顔面紅潮などの症状を呈します。心煩( 胸部が不安でイライラして落ち着かず、さらに胸苦しさを感じられる状態)を生じます。
③心血瘀阻
精神的ストレス、過労、寒邪の感受などが原因で血瘀(血の停滞)や痰飲、気滞、さらには寒邪などが集まることにより心脈が阻害され、胸痛、胸悶圧迫感、動悸などが生じます。現代医学の狭心症や心筋梗塞が相当する病態と考えられます。心神不安症状として動悸、胸苦しさ、結滞脈が見られ、重篤になると、四肢冷感(厥冷)、自汗(暑さ、厚着、労働などによらずに、自然としきりに汗の出ること)、意識障害を生じます。血瘀気滞症状:気や血の巡りが阻害され、胸痛、肩への放散痛、胸の圧迫感、胸部不快感などがみられます。
プロフィール
医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之
昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会 認定医
日本内視鏡学会 認定医