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【vol.73】辻和之先生の健康コーナー|特別寄稿~新型コロナウィルス感染症について


 
 最近第3波と思しき感染拡大が起こってきており、北海道も新規感染者数が一日100名を超える勢いとなってきました。予防策をしっかり行い、免疫を高める漢方薬服用で乗り切っていきましょう!
 ここでご紹介するのは、「ホソバタイセイ」という植物です。この植物を発酵させると、インジゴを生じ、藍色を呈し、藍染めの染料に用いられる一方で、発酵して藍色になった状態のものを青黛と云って、潰瘍性大腸炎に有効です。
 発酵しない地上部分を「大青葉」と云います。根の部分を「板藍根」と云って、2003年頃、当時中国ではSARS大流行の際に大量に使用され、有効性が認められております。それ以降、板藍根は「抗ウイルス効果」があると認識され、今回、新型コロナウイルス感染予防のために飲むという方が比較的多いようです。
「大青葉」は、中国では、板藍根と同様にインフルエンザや風邪が流行する時期に頻用されます。生薬の持つ抗ウィルス作用や殺菌力、清熱(熱を冷ます)したり、炎症を緩和する働きにより、治療や予防にも使用されます。
 中医学からみた新型コロナウィルス感染症についての出版物がありますので、ご紹介させていただきます。
 
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【大青葉について】

新型コロナウイルス感染症「COVID -19」(coronavirusdisease 2019)に対して、中国では、中国国家衛生健康委員会が、新型コロナウイルス感染症に関する中西結合医療のガイドライン「新型冠状病毒肺炎診療方案」(「試行第六版、2020年2月18日発布)(novel coronavirus pneumonia diagnosis and treatmentplan, provisional 6th edition)を出しており、その中では、下記の臨床病期に分けられ、様々な方剤が、使われています。
 軽 型 ⑴ 寒湿郁肺証
     ⑵ 湿熱蘊肺証
 普通型 ⑴ 湿毒鬱肺証
     ⑵ 寒湿阻肺証
 重 型 ⑴ 疫毒閉肺証
     ⑵ 気営両燔証
 そのうち軽症の⑵湿熱蘊肺証(微熱、或いは無熱、微悪寒、倦怠感、頭がおもだるい、筋肉の酸痛、乾咳痰少、咽の痛み、口乾するが多くは飲みたくないなどの症状)の治療薬は、檳榔、草果、厚朴、知母、黄芩、柴胡、赤芍、連翹、青蒿、蒼朮、大青葉、生甘草の煎じ薬が用いられますが、そのうちの大青葉についてご説明します。

大青葉

〔基原植物〕:ホソバタイセイの枝葉
〔性  味〕:鹹・苦、大寒
〔帰  経〕:心、肝、胃
〔効能と応用〕:①清熱解毒 ②涼血化班
〔臨床使用の要点〕:寒性が強く、よく気血の熱を冷まし班を消失させる。燥性は、弱い。特に熱邪が強い温病気分証、熱邪が営・血分に深入したときに多用される。清熱涼血し兼ねて肌表を行り、心・肝・胃三経の実火解毒を解市、解毒の要薬である。それ故邪入営血、血熱毒盛の発班、心胃火毒上攻による咽喉腫脹、口瘡、火毒外散の丹毒、癰腫などに有効であり、外用、内服いずれも効果がある。利咽消腫作用があり、血熱による丹毒、口内炎、咽頭炎などに使用される。口内炎には、煎液を口に含む。
〔参  考〕:近年、流行性耳下腺炎、日本脳炎、ウイルス性肺炎、流行性肝炎などのウイルス性疾患や皮膚化膿症、扁桃腺炎などの細菌性疾患によく用いられる。

*〔関連生薬〕板藍根、青黛
1 板藍根…ホソバタイセイなどの根の部分で大青葉に類似した薬効を有するが、解毒作用にやや優れ頭部疾患(顔面丹毒、耳下腺炎、咽頭炎、扁桃腺炎など)に多用される。2003年に中国でSARSウイルスが大流行したが、中国の衛生部(日本の厚生労働省にあたる)が、板藍根に予防の効果があると公式に認め、積極的な服用を促した。WHO(世界保健機関)からもその効果が高く評価された。
2 青黛…ホソバタイセイなどの枝葉を発酵させると、青い色素になるので、藍染めの染料にも用いられる。その色素粉末が青黛である。薬効は、大青葉に類似するが、肝火を瀉す作用に優れ、肺熱を冷まし止血する。近年、潰瘍性大腸炎への有効性が認められている。青黛が含有するインジゴが、近年、粘膜治癒を促進する物質として世界的にも注目を集めているインドール化合物であるという点に着目し、その有効性と安全性を科学的に検証するため、世界で初めて潰瘍性大腸炎の患者さんに対する前向き臨床試験を行った。従来の治療薬に反応しなかった難治例を含めて約7割の患者さんに有効で、内視鏡において劇的な改善を認めた例もあり、有望な代替治療薬の候補になりうると考えられている。
Sugimoto S, et al.Digestion 2016 https://www.karger.com/Article/FullText/444217
 さらに慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教室の金井隆典教授らを中心とした全国33施設の多施設共同研究グループは、青黛が潰瘍性大腸炎の治療に有効であることを発表し、米科学誌「Gastroenterology」のオンライン速報版に掲載された。

 ご参考にしていただけましたら幸いです。
 
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プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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