【vol.73】おすぎの名画のすゝめ Scene.28
こんにちは。おすぎです。
今回はお正月にでもゆっくり楽しんでいただきたい、とっておきの3本です。
「南太平洋」
1958年 アメリカ映画 監督 ジョシュア・ローガン
ブロードウェイミュージカルに興味を持つきっかけになったのは、『南太平洋』のナンバーをラジオで聞いたことでした。特に印象に残ったのは〝バリハイ〞で、1958年にジョシュア・ローガンが映画化しました。私がその映画を観たのは、20歳を過ぎてからです。
舞台は太平洋戦争真っ只中の南太平洋にある島で、2組の男女の恋物語が中心になります。私が大好きな〝バリハイ〞以外にも名曲が多く〝魅惑の宵〞、〝春よりも若く〞、〝ハッピー・トーク〞など、ワクワクしながら観て、聞いたものでした。
この映画の撮影は、当時は珍しかった2 か月に及ぶ大規模なロケーション撮影をカウアイ島で敢行し、大いに話題になったようです。しかし、せっかくの美しいシーンに、舞台の照明切替を意識した様々な色のカラー・フィルターをかけてしまうという演出があった為、批評家の意見は賛否両論で、アカデミーの作品賞は取れませんでした。日本では〝オクラホマ〞と同じ70ミリで公開されました。
「ダーティハリー」
1971年 アメリカ映画 監督 ドン・シーゲル
サンフランシスコを舞台に、職務遂行の為には暴力的な手段も辞さないハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)が、ベトナム帰還兵の偏執狂的殺人犯との攻防を繰り広げるアクション映画。1970年代のハリウッド・アクション映画を代表する作品の1つで、その後のアクション映画に影響を及ぼしました。5 作目までシリーズ化されて、4作目はイーストウッド自身が監督しています。
それまでB級映画監督とされていたドン・シーゲルとテレビ西部劇(ローハイド)や低予算マカロニウエスタンの役者程度にしか認識されていなかったイーストウッドが組んで放ったヒット作であり、ダーティー・ヒーローものの典型ともいえる本作。ハリー役は、当初フランク・シナトラの為に用意され、シナトラが辞退した後、ジョン・ウェイン、スティーブ・マックィーン、ポール・ニューマンなどにオファーされ、その都度脚本が書き直されたようです。
この映画を初めて観た時は、「ローハイド」のイーストウッドがこんな風に変身したのか! という驚きと、TVの中の彼は、どこか優しさみたいなものが滲み出していたように感じていましたが、キャラハンを演じているイーストウッドは全く違う人間に見えてしまったのでした。
「007 ロシアより愛を込めて」
1963年 イギリス・アメリカ映画 監督 テレンス・ヤング
イアン・フレミングの長編小説第5作で、1963年に制作されたイギリス・アメリカ映画の第2作目です。原作の小説では、刊行当時(1956年)、英国秘密情報部VSソ連特務機関の図式になっていますが、映画では政治問題を避けて、前作に続き犯罪組織〝スペクター〞を宿敵としています。前作で、〝ス
ペクター〞の企てを阻止した英国海外情報局諜報員の「007」ことジェームス・ボンド(ショーン・コネリー)への復讐と、英ソの外交関係を悪化させ、ソ連が持つ暗号解読機を強奪する計画を〝スペクター〞が立てます。ソ連の情報員タチアナが暗号解読機を持ち、イスタンブールに向かうことにボンドは罠の匂いを感じつつも同行します。
低予算で作られた第1作目〝ドクター・ノォ〞の成功によって、さらにアクションを強めた大作で、屈強な殺し屋との格闘、ヘリによる追跡、ボートでの脱走など、見せ場が次から次へと登場します。〝タチアナ〞を演じたダニエラ・ビアンキは、知性の中に色気とチャーミングさを覗かせ、その後のボンド・ガールの方向性を確立しました。また、オープニング・テーマの前に〝プレタイトル・シークエンス〞が入るようになったことなど、後続作品のパターンになる多くがこの作品で形作られました。
おすすめの新着映画 『また、あなたとブッククラブで』
原題:Book Club 監督・脚本:ビル・ホルダーマン 配給:キノフィルムズ
2020年12月18日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国順次公開
とにかく、主人公が60歳以上(最高齢が何と8 2 歳)の女優たちの共演というのが嬉しいのです。簡単に言えば、おばあちゃんたちのラブストーリーなのですが、なんとも洒落た映画です。観ていて楽しいし、ゴージャスだし、4人揃って“お金持ち”なのが堪らないのです。
40年連れ添った夫を亡くしたダイアン(ダイアン・キートン)、複数の男性と関係を持ちながら生活を楽しんでいる実業家のビビアン(ジェーン・フォンダ)、数十年も前の離婚に苦しんでいる裁判長のシャロン(キャンデス・バーゲン)、35年一緒にいる夫のセックスに不満を持ちながらバレーを習っているキャロル(メアリー・スティーンバージェン)。4人は“ブッククラブ(読書会)”を定期的に開催して交流を続けている。
そして、それぞれに奔放に生きているが、本当のところは?
どんな男友達が登場するかはお楽しみ。とても笑えて、楽しんで大満足の1本です。
プロフィール・映画評論家 おすぎ
1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。