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【vol.72】おすぎの名画のすゝめ  Scene.27



 
 こんにちは。おすぎです。
 今回も家でゆっくりと楽しめる、とっておきの3本を紹介します。
  

「シャイニング」

1980年公開 イギリス・アメリカ映画 監督 スタンリー・キューブリック
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 スティーブン・キングの原作を、スタンリー・キューブリックが映画化したホラー映画であります。
 コロラド州・ロッキー山上にある冬季間は閉鎖されるオーバールック・ホテルに、管理人の職を求めてジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)、妻のウェンディ(シェリー・デュヴァル)、息子のダニー(ダニー・ロイド)一家がやってきます。小説家志望でアルコール依存症を患っているジャックに、支配人のアルマン(バリー・ネルソン)は「このホテルは、以前の管理人であるチャールズ・グレイディが、孤独に心を蝕まれた挙句、家族を斧で惨殺し、自殺したといういわく付きの物件だ」と伝えますが、ジャックは気にも留めず、家族と共に住み込みの生活を始めます…。猛吹雪により、外界と隔離されたホテルで起こる戦慄の出来事とは!?
 キューブリックによる映画化で世界的に有名になった原作ですが、じつはスティーブン・キングの作品を大幅に変更していて、もうほとんど別作品。キングは、キューブリックを批判して、後に〝映画版のバッシングを自重する〞ことを条件に、ドラマ版での再映像化を試みたそうであります。キューブリックも主人公のジャックや作品そのものにも原作とは違う構想を抱いていて、ジャック・ニコルソンがキャスティングされたことにキングは「平凡な人間が狂気に取り込まれるというストーリーが、奇抜な演技を得意とするニコルソンにより変えられてしまう」と反対したのだとか。
 とにかく、キングはキューブリック作品がとても嫌いだったのね(笑)
 

「ダイ・ハード」

1988年公開 アメリカ映画 監督 ジョン・マクティアナン
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 〝ダイ・ハード〞という言葉には〝なかなか死なない、しぶとい奴〞という意味があるそうです。原作はロデリック・ソープの〝ナッシング・ラスト・
フォーエバー〞。日本では1989年に公開されました。
 別居中の妻ホリー(ボニー・べデリア)に会う為ロサンゼルスにやって来たニューヨーク市警のジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィルス)。口論から喧嘩別れとなり、その後、ホリーが勤める日系企業のクリスマスパーティー会場で、参加者全員が人質となる武装集団による事件が発生します。彼らに発見されずに脱出したものの、警察から相手にされず、マクレーンはたった一人で戦うことになるのです。
 原作で初老の主人公は、企画当初、クリント・イーストウッドやアル・パチーノらベテラン俳優に交渉したようですが、いずれも断られ、当時新進俳優だったブルース・ウィルスを起用することになって、年齢を30代に変更したそうです。
 それまでのアクション映画と違い肉体派俳優を起用せず〝劣勢の状況下にある普通の主人公が頭脳で挑んでいく〞という要素を入れて成功したこの路線は、後の〝スピード〞、〝ザ・ロック〞、〝ミッション・インポッシブル〞などに受け継がれ、新しいタイプのアクション映画の先駆けとなったのであります。
 

「ベニスに死す」

1971年公開 イタリア・フランス映画 監督 ルキノ・ヴィスコンティ
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 老作曲家(ダーク・ボガード)が静養の為にベニスを訪れ、ふと出会ったポーランド貴族の美少年タージオ(ビョルン・アンドルセン)に理想の美を見い出して以来、浜辺に続く回廊を、タージオを求めて彷徨うようになります。
 そんなある日、ベニスの街中で消毒が始まり、疫病が流行していることを聞きつけますが、それでも老作曲家はベニスを去ろうとしません。白粉と口紅、白髪を染めて若作りをし、死臭漂うベニスを、ただただタージオの姿を追い求めて歩き続けますが、ついに力尽き、海辺のデッキチェアに横たわったまま、煌めく波の光の中にいるタージオを見つめながら、老作曲家は死んでいくのです。
 映画で使われたマーラーの交響曲第5番第4楽章〝アダージェット〞は、もともと作曲家が当時恋愛関係にあった〝アルマ〞に宛てた音楽によるラブレターで、この映画の感情的な表現において主役のような役割を果たしています。映画を観たあるハリウッドメジャーの社長は、マーラーがとうに没した大作曲家とは知らずに「今度の新作映画のテーマ音楽を作らせよう」と言ったそうな。ただ、〝美しいもの〞だけを見ていようと思った作曲家は〝同性愛者〞ではない、と私は思うのであります。
  

おすすめの新着映画 『プリズン・エスケープ 脱出への10の鍵』

原題:Escape from Pretoria 監督・脚本:フランシス・アナン 配給:アットエンタテインメント
9月18日㈮より、シネマート新宿、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次ロードショー
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 アパルトヘイト政策下の南アフリカで育ったティム・ジェンキンの自伝“脱獄”を基にした実話の映画化。ティム・ジェンキン(ダニエル・ラドクリフ)とスティーブン・リー(ダニエル・ウェーバー)は、白人でありながらアフリカ民族会議(ANC)に加わり、反アパルトヘイト運動を展開していた。しかし、1978年6月、爆発装置を使用してANCのチラシを街中に散布していたことで二人は逮捕され、ティムには12年、スティーブンには8年の刑が宣告される。白人を収監するプレトリア刑務所で、二人はANCメンバーのマンデラと共に終身刑の判決を受けた政治犯の長老デニス・ゴールドバーグ(イアン・ハート)と出会う。脱獄を考えていると言うティムとスティーブンに、デニスは「我々は犯罪者とは違う“良心の囚人”だ」と苦言を呈するが、ティムは木片の鍵を作り脱獄することを思いつく。
 イギリス出身のフランシス・アナン監督は、ポリティカル・スリラーに傾倒していて、プロデューサーがティムの回想録“脱獄”を手渡したことから製作が動き出したそうです。
 とにかく、木製の鍵で脱獄するという発想の凄さ、本当にそれが成功するのか?という興味が、この映画を楽しむ最大のポイント。ラストまでスクリーンから目を離すことが出来ないエキサイティングな作品であります。
 
 

プロフィール・映画評論家 おすぎ


1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。
 
 
 

 

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