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【vol.71】おすぎの名画のすゝめ  Scene.26



 
 こんにちは。おすぎです。
 もう50年も前のことなんだけど、私がデザイン学校に通っていた頃、とっても体調の悪い日があったの。頭は痛いわ、お腹は痛いわで、もう本当に絶不調。そんな状態で映画を観に行く私も、どうかと思うんだけど(笑)、ルルーシュの『男と女』っていう映画を観たんです。とっても感動して、観終わったら、あら不思議!あんなに痛かった頭もお腹も全然痛くない。さっきまでの辛さは何だったの?っていうくらいの爽快さ!!
「映画って、健幸にもいいのね!」と気づかされた不思議な体験でした。

 おウチ時間が長くなっている昨今、映画はこころの健康にもいいので、ぜひ良い映画を観てください。
 今回も、とっておきの3本です
  

「雨に唄えば」

1952年公開 アメリカ映画 監督 スタンリー・ドーネン ジーン・ケリー

 1920年代後半を幸せな時期とし、当時のファッションや人々の人柄、音楽の好みを愛情をこめてからかいながら、変革期の映画産業の内幕を描いた作品です。

 主役は、ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ、ドナルド・オコナーの3人ですが、映画の前半で登場するジーン・ヘイゲン扮する大女優も面白い。彼女は、サイレント映画で人気者だったのですが、実は〝悪声〞の持ち主で、トーキーになるとスクリーンから消える運命にあったというエピソードを入れて、映画界がどのように発展していったかをみせてくれました。
 私とピーコは、この映画が公開されたときは7歳でした。横浜に住んでいて、封切後すぐに映画館で観ることは出来ませんでしたが、野毛にある三番館の〝かもめ座〞という館で、手には10円玉を3個握りしめてスクリーンを見つめていました。子供だったので、〝ミュージカル〞というものなど、正確には理解してはいませんでしたが、歌と踊りのシーンになると楽しくてワクワクしたことを覚えています。

 ジーン・ケリーが雨の中で歌い踊る〝雨に唄えば〞は、子供心にも名場面であることを感じました。そして、ケリーだけでなく、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズが歌い踊る〝グッド・モーニング〞、ブロードウェイの美女(シド・チャリシー)とケリーの〝ブロードウェイ・メロディー・バレー〞の14分間のナンバーも堪能させて貰いました。
 

「サイコ」

   1960年公開 アメリカ映画 監督 アルフレッド・ヒッチコック

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 私がアルフレッド・ヒッチコックを知ったのは、この『サイコ』を横浜の〝ライオン座〞という館で観た時でした。

 私は中学生でしたが、土曜日の午後と日曜日の午前と午後はアルバイトでゴルフのキャディーをしていました。ハーフで90円貰えて、ほとんどのお客さんはワンハーフを廻ったので、一週末で270円手に入りました。一か月のお小遣いは300円と決めていたので、残りのお金(ひと月で約1000円程稼いでいたので)は家に入れていましたが、他の友人たちより使えるお金があったので、よく通ったのが〝ライオン座〞でした。
 ヒッチコックの映画作りの目的は、「観客を辛いめにあわせること」だそうで(その頃の私はもちろんそんなことは知りませんでしたが)、私はヒッチコックに完全に嵌ってしまったのでした。

 マリオン・クレイン(ジャネット・リー)は、顧客から預かった金を着服して、恋人が住む街へ逃走する。途中警官に不審の目を向けられたりするが、事なきを得て、ベイツ・モーテルに一泊することになる。そこで経営者のノーマン・ベイツ(アンソニー・パーキンス)と夕食を共にし、彼が一人で母親の面倒をみている話を聞く。その後部屋に戻ったマリオンはシャワーを浴びている時に何者かに襲われる…。

 このシーン、30秒に36カットという編集技術が使用されました。マリオンの体にナイフが刺さる映像はありませんが、その迫力は凄まじく、この場面を観るだけでも、この映画を観た価値があります。
 

「ロード・オブ・ザ・リング二つの塔」

   2002年公開 アメリカ映画 監督 ピーター・ジャクソン

 〝ロード・オブ・ザ・リング〞はJ・R・R・トールキンのファンタジー3部作を原作に、比較的忠実に映画化した作品で、「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」は第二作目にあたります。でありますから、ストーリーは膨大で、3つの独立した筋があり、多くの映画人たちは失敗するのではないかと危惧してました。
 主役のフロドを演じたイライジャ・ウッドは、3部作を撮り終えた時は大スターに成長していました。一方、失敗するだろうと思っていた人々を参らせたのは、なんといってもピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ、フィリッパ・ボウエンの脚本でした。そして映像の素晴らしさ!

 冒頭からすぐに激しいシーンが始まります。ガンダルフ(イアン・マッケラン)が、旅の仲間を逃すために巨大な魔物バルログと戦い、ガンダルフとバルログが地下の裂け目へ落ちていくところで終わります。
 コンピューター・グラフィックスを用いて、スメアゴル/ゴラム(アンディ・サーキス)のようなキャラクターを入念に形作り、指輪に対してどうしようもないほどの欲望を持った悲劇のアンチ・ヒーローも登場しました。

 この作品は新しいCG技術と、従来のセットやミニチュアとの融合で、リアルな質感のある映像を生みました。エドラスの黄金館や、オープニングで登場したガンダルフが、より強い力をつけて戻って来るシーンなどが、その成功例と言えるでしょう。
  

今回は、コロナウィルス対策で映画の写真を提供してくれる会社がお休みのため、以前ご紹介した『サイコ』以外は文章のみとさせていただきました。何卒ご了承ください。
 

プロフィール・映画評論家 おすぎ


1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。
 
 
 

 

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