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【vol.72】こころとからだの健幸タイム|ゲスト 大橋 智夫 さん・前編


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 江戸時代に排水装置の1 つとしてつくられた「水琴窟」。この「水琴窟」の原理を活用して、自然界のハイパーソニック・エフェクトを提供する癒しサウンドツール「水琴」を開発した大橋智夫さんに、水琴窟との出会いや、水琴の開発経緯などについてお話を伺いました。
 

鳴海周平(以下、鳴海)
 大橋さんとの出会いは、とあるパーティー会場でしたね。

大橋智夫さん(以下、大橋)
 はい、お互いにどちらからともなく声をかけて、なんとなくウマが合った(笑)

鳴海 一緒にいると、よく「似ている」と言われますしね(笑)
 じつは、「水琴」については、大橋さんに出会う前から、CDブックで知っていて、既に愛用させてもらっていました。水琴の音が収録されているCDをかけていると、超高周波、高波動に癒されるのはもちろんですが、近くに置いた植物がCDの流れる方ばかりに伸びていったりなど、面白い現象がたくさん起こるんですよね。

大橋 植物は、とくにわかりやすいかもしれませんね。水琴ご愛用者の中には、まんべんなく伸びるように定期的に鉢の向きを変えている方もいらっしゃいます(笑)

「自分探し」にアメリカへ渡った学生時代

 
鳴海 京都大学で水利工学を学んでいた大橋さんが、水琴をつくろうと思ったきっかけは、何だったんですか?

大橋 もともと、昔から「水」に対してとても興味を持っていたんです。それで、水のことをもっと研究したいと思って、大学で農学部を選び、そこで水利工学を学ぶことにしました。ダムや水路で水がぶつかった時など、流水力学的に必要な強度を計算する物理的な学問です。そして、もう1つ、水の研究と同じくらい夢中になったものが「音楽」でした。どちらも本当に楽しくて、現在の「音・環境プロデューサー」という仕事にもつながっています。

鳴海 たしかに、「水」の流れによって、癒しの「音」を奏でるのが「水琴」ですよね!

大橋 そうなんです。在学中は学びを深めようと「自分探しの旅」を兼ねて、アメリカへ旅をしたこともありました。ヒッチハイクをしたり、レンタカーやバスを利用したりして、氣ままに移動する。そうして行った先々でいろいろな体験がしたい…そう思って旅へ出たものの、英語もろくにできませんでしたからコーヒーを注文することもできない。「ホットコーヒー」は「ハットカフェ」と発音すればいいとわかって、ようやくコーヒーにありつけるという感じでした(笑)

鳴海 僕も、海外の方が「ワラ、プリーズ」と言っているのを聞いて「藁?」と思っていたら、水(ウォーター=ゥワラ)が運ばれてきたのを見て驚いたことがあります(笑)

大橋 そんな日々にも、ようやく少し慣れてきた頃に、私はアメリカの広大な風景の中を通る、まっすぐなハイウェーを車で走っていました。じつは、その風景を見ていたところまでは覚えているのですが、氣がついたら、なぜかベッドの上に横たわっていたんです。そして、横には日本にいるはずの父がいる。不思議そうにしている私に、父はこう言ったんです。
 「おまえは、事故に遭ったんだぞ」
 父の話によると、ハイウェーを走っていて、土手から5, 6m落下し、車は大破。私は、片足の腱が切れていて、肺も3分の2が潰れ、折れた肋骨の1本が心臓の横1㎝のところに刺さっていたのだそうです。意識不明だったはずの私は、なぜか、土手をよじ登って、「ヘルプ・ミー」と車を止め、救急車で運ばれて一命をとりとめたとのことでした。
 父は、アメリカ大使館から事故の知らせを聞いて、すぐに駆けつけてきてくれたんです。
 この事故を経験したことで、「自分は何かやりたいことがあるから、また生かされて、この世に帰ってきたのかもしれない」と思うようになりました。
 こうして、結果的に「自分が本当にやりたいこと」を模索する氣持ちが強くなったことは、アメリカへの旅の目的だった「自分探し」ができたということなのかもしれません。

人の心を癒す「音」を探求して

 
大橋 帰国してからは「自分が本当にやりたいこと」について考えました。生命の神秘に深くかかわる「水」の研究か、事故のあとも、ずっと勇氣づけられていた「音楽」の研究か…。悩んだ末、卒業後は本格的に音楽活動を始めることにしました。

鳴海 在学中から、どちらも楽しんで取り組んできた「水」と「音楽」。どちらか1つを選択するのは、悩ましかったでしょうね。

大橋 はい、それでも、人を感動させ、心を和やかにしてくれる「音楽」を探求する道へ躊躇いなく進めたことは、アメリカでの経験が大きかったように思います。
 京都のプロダクションに所属して、全国のライブハウスで歌うようになり、バックバンドもできましたが、メジャーへは進まずに「人の心を癒す音」を研究する道を選びました。
 音には好き嫌いがあります。例えば、クラシックが好きとか、ロックは嫌いとか。でも、潮の音や鳥のさえずりが嫌い、という人はあまりいませんね。ふだんは氣づきませんが、自分の身体を流れる血流の音や、心臓の鼓動も、生きている間、ずっと聞いている音です。こうした音を「深層心理の音」と言うのですが、このレベルの音から、好き嫌いが別れる「表層意識の音」までを何段階かに分けて音を入れていくという作曲方法にたどり着きました。規則的なリズムと不規則的なリズムを融合させてメロディーをつくっていくんです。

鳴海 規則的なリズムと不規則的なリズム。水琴窟や水琴が奏でる音にも通じていますね。

大橋 おっしゃるとおり、この頃はまだ水琴窟や水琴には出会っていませんでしたが、あとから考えてみるとこうした「伏線」が、いくつもあったことに氣づかされます。人生には運命があって、それにピッタリ合うタイミングが存在している。そんなことを感じざるをえません。

鳴海 大橋さんが研究した音は「人の心を癒す音」として、いろいろなところで活用されたそうですね。

大橋 はい、少年鑑別所の子供たちにも聞いてもらいました。就寝15分前に全館放送で、私がつくった音を流すんです。すると、その後に書いてもらった子供たちのアンケートに「お父さん、お母さん、ごめんなさい」など、反省や感謝の言葉がたくさん書かれていたそうで、鑑別所の所長さんも、これにはとても驚いていらっしゃいました。

「水琴窟」との出会い

 
大橋 その後、音を研究している学会で、この時のエピソードを発表させていただく機会がありました。この時、ある初対面の男性に「大橋さんに、私がしている水琴窟の研究の後を継いでほしい」と声をかけられたんです。
 水琴窟とは、江戸時代につくられた排水装置の1つで、庭などにある手水鉢で手を洗った水を、地下に流すためのものです。底に穴が開けてある陶器の甕を伏せる形で地中に埋めておくと、空洞に溜まった水の上に落ちる水滴の音が響き合って美しい音を奏でるんです。水滴の大きさなどによって、音の質も変化し、まるで琴のような音が出ることから「水琴窟」と呼ばれるようになりました。
 その方は、ずっと水琴窟の研究をしてきた方で、昔からいろいろな場所にある水琴窟を調べてきたと言うんですね。そして、私の「音で心を癒す」というテーマが、この水琴窟にぴったりだということで、とても共感してくださったそうなのです。

鳴海 初対面で、いきなりの後継者指名だったんですね。

大橋 はっきり言って、「ちょっと面倒なことになったな」というのが、その時の感想でした(笑)

鳴海 では、一度は断った?

大橋 氣づいたら「そうですか、わかりました」と答えていました(笑)
 そして、数日後には山のような資料が届いて「やっぱり、やめとけばよかったかな」と思いましたが(笑)、詳しく見てみると、水琴窟の設置場所や関連するデータなど、興味深い資料がたくさんあって、「おもしろそうだし、せっかく声をかけてきてくださったのだから、少し調べてみようか」という氣持ちになりました。
 その方との出会いが、水琴窟に関わるきっかけになったわけですが、私が自ら水琴窟を選んだわけではありませんから、こうした「意図しないところで起こる」なにか運命的なものというか「大きな力にやらされている感」が、やはり今でもあるわけです。

鳴海 「音」の世界を選んだつもりが、「水」にも関わっていくことになったんですね。

大橋 そういうことになりますね。どちらも興味があって、深く学んでいたことでしたから、水琴窟を現代に合った「癒しの音」として復活させたい、という発想にもつながったのかもしれません。
 じっさい、陶器の形状や素材、共鳴容積が音に与える影響は大きいですから、水琴窟を自分でつくってみるにあたって、水利工学を学んでいたことはとても役立ちました。全国からさまざまな陶器を集めて、片っぱしから水滴を落として音の違いを研究したんです。

「癒しの音」全国へ広がる

 
大橋 研究に没頭していたある日、突然、NHKの「おはよう日本」という番組で、水琴窟を紹介したいという連絡がありました。全国放送で、いきなり「水琴窟の第一人者 大橋さん」というテロップが出されたので、もう後戻りはできなくなりましたよね(笑)
 その後も、京都にある水琴窟の中から4箇所をピックアップして作成した『京都音風景~水琴窟の調べ~」というCDが京都新聞で紹介されたことをきっかけに、「癒しの音」はどんどん広がっていきました。

鳴海 大橋さんが、長年楽しんで探求してきた「音」と「水」が「心を癒すツール」として認知されていったわけですね。

大橋 ただ、私は研究者であって、商売にはまったくの素人でしたから、CDをお店に置いてもらおうとお願いしてまわった時にもいくらで卸してくれるの?掛け率は?」と訊かれて、なんのことだかわからない(笑)その都度「…検討させてください」とだけ返事をして、事務所へ戻って考えてから、またお願いしに行くということを繰り返していました(笑)。これが、水琴の会社ティーズ・コーポレーションの始まりです。

鳴海 大橋さんの実直なお人柄は、お店の人にしっかり伝わっていたと思いますよ。

大橋 だといいのですが(笑)
 その後も、日本各地の新聞でこのCDが紹介されて、水琴窟は「癒しの音」として全国へ広まっていったんです。
 
 
次号の後編では、水琴の音による癒しの原理やエピソードなどをご紹介します。
どうぞお楽しみに!!

 
 
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大橋 智夫さん プロフィール

音・環境プロデューサー。京都大学農学部農業工業科卒業。
在学中は水利工学を専攻し、卒業後は音楽の道へと進む。
日本の音文化に注目した音空間デザインを手がける中で出会った
「水琴窟」を現代に復活させ、さらに音響技術を駆使して、
自然界のハイパーソニック・エフェクトを提供する「水琴」を開発した。
世界学術研究アカデミー賞を受賞。ローマ法王とも謁見するなど、
その功績は国内外で高く評価されている。
著書に『聴くだけで脳と体が若返るCDブック』(学研プラス)
『奇跡の周波数「水琴」の秘密』(ヒカルランド)
『見るだけ 聞くだけ 超快眠! C D ブック』(ワニ・プラス)などがある。

 

 

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