【vol.70】星澤先生のクッキングれしぴ「食は夢のかけ橋」第34回

基本の生姜焼き　2人分

●豚ロース薄切り肉･････６枚
●しょう油、酒･･各小さじ１杯
●油･････････････大さじ１杯
●しょうが･････････････１片
調味料
●しょう油、酒、てんさい糖
･･･････････････各大さじ１杯
付け合わせ野菜
●キャベツ、ミニトマト
　サツマイモ他

①豚肉にしょう油と酒をまぶして下味をつけます。

②フライパンに油を熱して肉を入れ、両面焼き色が付くまで焼きます。

③調味料とおろししょうがを加え、強火で肉に絡めます。

④皿に付け合わせの野菜、豚肉を盛り付けたら出来上がりです。
　

人生いろいろを自演した伝説の歌手島倉千代子さん

歌姫を支えた好物豚肉の生姜焼き」

　札幌テレビのどさんこワイド「奥様ここでもう一品」に約7000回出演致しましたが、様々な想い出の中で「本番中緊張で震えが止まらない」事が一度だけありました。ゲストで島倉千代子さんが出演された時です。
　普通であればインタビューの後、そのまま控室へお戻りいただくのですが、コマーシャルの後は私の料理コーナーだと紹介されると、なんと私の調理台の端に両手の指を揃えて付かれ、「私ここで見ていてもいいかしら？」と楚々とした鈴かな声でお訊きになられるではありませんか。
　このような事は今まで初めてであり、フロアースタッフ全員目を丸くして、一瞬沈黙。その後、キャスターが「よ、よろしければ…」と、かくして歌姫と並んで料理をすることになりました。
　もう隣に来られた時から緊張はピークに達し、その時の料理は何であったか、どのように料理したか、何を話したか等全く覚えていないのです。ただ手の震えが止まらず、テレビを通してもそれが解るほどでした。
　人生いろいろを経験された島倉千代子さん。数年前、広島市でコンサートに出かけた際、そのご苦労を顔にも出さず、懸命に歌われる姿を拝見していましたので、同じ女性として特別の想いを抱いておりましたが、どの様な方がおいでになられても、震えたりしない私でしたので、自分でもびっくり。
　その後も壮絶な人生を一人歩まれ、「忍」の言葉を小林幸子さんに遺し、亡くなる三日前に南こうせつさん作曲の「からたちの小径」を自宅で録音された後、75年の人生に幕を下ろされました。
　その曲はすぐに発売され、オリコン週間ランキングで初登場7位を獲得。これまでの最高位は「人生いろいろ」でしたが、記録を大きく塗り替え、演歌、歌謡ランキングで一位を獲得しました。

「人生いろいろ」は、島倉さん人生のノンフィクションの歌であったとの事。
　決して同じ道を歩みたくはないものの、悲観せず、我が身を削り、黙々と借金返済の為に歌い続け、病魔に侵されながら屈せず、一人の女性としてしなやかに、強く美しく生きた女性。人の心を癒す歌を歌いながら、島倉さん自身は何で自身を癒していたのでしょうか。
　傍に来られた時の、柔らかな、透き通るような雰囲気の美しい着物姿は忘れる事はありません。
　
　16歳のデビュー曲「この世の花」が大ヒット。NHK紅白歌合戦35回出場、約60年に及ぶ歌手人生で歌われた曲は1500曲。女優として多くの映画、ドラマにも出演し、1999年に紫綬褒章を受章しました。
　昭和13年3月30日に警察官の子として
生まれ、戦争を生き抜き、歌姫として高度成長期の日本人の心を癒し、この世に花を咲かせ、人生いろいろの苦難を明るく歌い飛ばし、私にも多いなる勇気を与えてくれた方。好物だったという「豚肉の生姜焼き」を紹介させていただきます。
　没後6年、心よりご冥福をお祈りします。合掌。

プロフィール・星澤クッキングスタジオ　代表取締役　星澤幸子

　料理研究家・北海道南富良野町生まれ。
　札幌テレビ「どさんこワイド」料理コーナーへの生出演は29年目になり、
2019年には7000回を達成。料理の内容とキャスターとのやり取りの面白さが
幅広い層から人気を集めている。
　日本テレビNG集では毎回「星澤幸子先生編」として全国に紹介され、
有吉弘行さん司会の「有吉反省会」や、ｚiｐのご当地有名人に出演を
果たすなど全国にも活躍の幅を広げる。
　2009年「東久邇宮文化褒賞」、翌年には「北海道食育推進優良活動表彰」
を受賞。
　2015年イタリア・ミラノでの食の世界万博において料理講師も務める。
　料理コーナーへの生出演回数は現在もギネス記録を更新中。