head_id

【vol.70】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第21回 東洋医学の基礎理論20 「肝」の不調について(前編)


 
東洋医学の基礎理論⑳

この度のテーマについて

 ぶんぶん通信62~65号では「腎」についてお話しました。その中で、腎の不調について説明をしましたが、次の「肝」については、肝の不調に触れないまま69号の「心」に入ってしまいました。そこで今回と次号で、肝の不調について述べさせていただいてから、次に心の不調についての説明に入りたいと思います。

【肝の不調】
 肝の主な作用には、疎泄と蔵血がありますが、これらの作用は、気・血・津液さらに全身の諸器官と深く関わっています。そのため肝の不調により、全身生体機能に多大な影響を与えます。肝の不調が五臓にも影響を与えて、病態を複雑にさせたり、治療が難しくなったりします。
 肝は、動と昇を主るため、肝気や肝陽が過剰になりやすかったり、肝陰と肝血が不足しやすくなったりします。
 肝の失調には、(1)「肝気と肝陽の失調」と(2)肝陰と肝血の失調」があります。(図1)

vol70-1
 
【肝気と肝陽の失調】
 ①肝気鬱結、②肝火上炎、肝陽上亢などがあります。(ただし肝陽上亢については、その本体が肝陰不足ですので、次号の「肝陰と肝血の失調」の項で説明します)
 肝気と肝陽は、余りやすい特徴がありますので、その多くが肝気や肝陽過多に陥りやすくなります。これは、全身的ではなく、肝気は昇の性質になりやすく、上昇しやすいので、肝気の過多は、頭部や顔面、心で過剰になります。

①【肝気鬱結】(図2)
 精神的ストレスなどにより情志が抑鬱傾向になり、気機が鬱滞する病態を呈します。気機が滞る部位に疼痛や脹満感を生じます(例えば両胸脇部の腫満感や疼痛)、滞った気が痰(津液の過剰な病的状態)や血に結び付けば、局所に腫塊(腫瘤)を形成します。(例えば、梅核気(喉に痞え感)乳房の腫痛、月経痛など)肝気の巡りが悪いことで、胃や脾の働きを障害(肝気横逆)して、胃に及ぶことを肝気犯胃といってゲップや呑酸などを生じます。脾に及ぶことを肝気犯脾といって食欲不振、下痢や腹痛などを引き起こします。

vol70-2

②【肝火上炎】(図3)
 肝の陽気が過剰に亢進して、過剰な気が熱を持ち、火と化し、燃える病態です。
 肝鬱気滞( 肝気の巡りが悪い状態)が長期化したり、精神情緒の不安定(ことに怒りやイライラなどの感情)が長引くことや五志(喜・怒・憂・思・恐)の情志活動が失調して火証を呈することが原因で生じます。
 症状としては、顔面が紅潮し目が充血する、口が渇き冷たいものを飲みたがる、※煩躁してときには興奮状態となる、出血しやすくなる(吐血、鼻血など)、尿量が減少して色が濃くなり、排尿時に灼熱感を覚える、大便が乾燥して便秘するなどです。

※煩躁:胸中の熱と不安を煩といい、手足をばたつかせることを躁といいます。煩悶し、もだえ乱れる状態のことです。

vol70-3

 (2)の【肝陰と肝血の失調】については、次号で説明します。
 
 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

 セミナー・イベントのスケジュールはコチラから
 

right_toppage

right_01健康対談ラジオ番組月刊連載

right_02 right_news right_02-2 right_03 right_04 right_06 right_05 right_07 right_07

bnr_npure

bnr_kenkotime

ブログ・メールマガジン