【vol.69】こころとからだの健幸タイム|ゲスト おすぎ さん・後編
映画評論家として、テレビやラジオなど多方面で活躍の場を広げているおすぎさん。
エヌ・ピュア情報誌・ぶんぶん通信に連載いただいている「名画のすゝめ」紹介作品が累計100本となったことを記念して、これまでの名画を振り返りつつ、おすぎさんの仕事観や健康観、人生観についてお話を伺いました。
おすぎ流「健幸と若さの秘訣」
鳴海周平(以下、鳴海)
今回の対談では、おすぎさんの「健幸と若さの秘訣」を教えてもらうことが課題の一つですので、後半のこれから根堀り葉掘り訊いていきます。
おすぎさん(以下、敬称略)
あらぁ、うっとうしいわねぇ(笑)
鳴海 (笑)ふだん、なにか心がけている健幸習慣のようなものはありますか?
おすぎ そうねぇ、身体はなるべく意識して動かすようにしているかしら。毎日20分間のストレッチは欠かさずしています。60歳までスキーをしていたんだけど、現地でストレッチをするのが面倒で、自宅でしてからスキー場へ行っていたのよ。そうしたら、着いてすぐに滑れるじゃない?そのストレッチが、いつの間にか習慣になってしまって、もうずっと続けています。
それから、つま先立ちで腿上げを100回したり、自宅前の1周約6㎞の公園をほぼ毎日歩いたり。足腰はよく動かしている方だと思うわよ。
でも、身体を動かすのは、筋肉を鍛えようとしているんじゃなくて、柔軟な身体でいたいという氣持ちのほうが大きいかしらね。
鳴海 筋肉の柔軟性は脳の柔軟性に比例する、という説もあるようですよ。
おすぎ おかまは、もとから頭が柔らかいのよ(笑)
あとは、肌のマッサージも毎日20分しています。だから、普通の老人じゃないの(笑)
鳴海 きっと、誰も普通とは思っていません(笑)
食事についても伺いたいのですが、おすぎさんは1日何食ですか?
おすぎ ふだんはブランチと夕食の1日2食。ロケやなんかで朝が早い時は1日3食になります。朝食を摂る時は、納豆、冷奴、卵、明太、じゃこおろしとかをおかずにして、ご飯は茶碗3分の1くらい。
鳴海 博多は明太も美味しいですよねぇ。
おすぎ 夕食も、前はけっこう自分で作ってたんだけど、一人だと材料を使い切るのがたいへんだから、最近はほとんど外で食べてます。近くに週3回通っているお店があって、「野菜多め」っていうリクエストだけして、あとはお店のマスターがメニューを考えてくれるのね。
「野菜多め」は、他の行きつけのお店でも、もれなく伝えてます。
鳴海 100歳以上の元氣なお年寄りを取材したデータに共通していることで「野菜を多く食べている」という項目があったそうです。おすぎさんが夏場によく作っていた「冷や汁」のように、薬味たっぷりの食事も健幸長寿の秘訣らしいですよ。
おすぎ あら、そうなの?冷や汁は、夏場によく食べたわねぇ。
薄切りにした胡瓜に、なす、千切りにしたみょうが、青しそに、すり鉢でよく擦ったゴマを加えて、焼いてほぐしたアジの干物、白みそを混ぜて、好みの濃さに氷水を少しずつ加えて作るのよ。あとはご飯にかけるだけの簡単メニューなんだけど、たしかに野菜も薬味もたっぷりねぇ。
最近は特に「好きなものを少しずつ食べたい」と思うようになってきたんだけど、これも長生きしている人に共通していることなんですって。いったい、いくつまで生きるのよ(笑)
「発酵食品」と「ときめき」の効用
おすぎ あと、ヨーグルトは毎日食べてます。
鳴海 ヨーグルトも、味噌も納豆も発酵食品。これも、健幸長寿の代名詞ですね。
発酵食品は、免疫力の70%以上を担っている腸を元氣にしてくれるので、自分の身体に合った発酵食品を摂り続けているのも、健幸と若さの秘訣だと思います。
おすぎ お酒も、広い意味で発酵食品でしょ?
鳴海 そうですね。その発酵食品にまつわる武勇伝も、いろいろと聞いてます(笑)
おすぎ 中学生から飲んでるんだから、そりゃいろいろあるわよ(笑)
ある朝なんか、ホテルで目が覚めたら、部屋のドアチェーンが根元からちぎられたようになっていて、何ごとが起こったかと、すぐにフロントへ電話したの。そしたら「今からご説明に伺います」とか言って、マネージャーさんが来たのね。それで、「私が大きなニッパーで切ったのです。昨夜遅くに、隣のお部屋のお客様から、おすぎ様のテレビの音が大きくて眠れない、というお電話がありまして、すぐに駆けつけ、ブザーやノックをさせていただいたのですが、いっこうに起きてこられず、もしや病氣か何かでしたらたいへんだと思い、やむなくチェーンを切断いたしました。幸い、よくお休みでしたので、テレビを消して、失礼した次第です」と、これ以上、丁寧ということはない、というくらいの話し方で説明されたの(笑)もちろん、平謝りに謝ったわよ。他にも、氣がついたら便座に座って寝ていた、なんてことはしょっちゅうね。
でも、一人の時は、まだいいのよ。バーなんかでベロベロになってしまうと始末が悪い。手当たり次第、誰彼かまわずキスしてしまうらしいのよ。でも、それを見ていたピーコが「どんなに酔っていても、自分の好みの子にしかキスしないんだから、あんたは偉い! 好みじゃない子は飛ばしていくもの」って言ってたから、酔っていても、そのあたりはしっかりしているのね(笑)キス魔になった翌日は、目覚めがとってもよくて、全身に活力が満ちている。二日酔いも、まったく無し・・・あら、これも健幸と若さの秘訣かしら。
鳴海 間違いなく、そうでしょうね(笑)
15年前のインタビューでも「若さの秘訣は、恋をすること」と教えてもらいました。当時は、18歳から38歳までがストライクゾーン(恋愛対象)とおっしゃっていましたが、現在はいかがですか?
おすぎ いまは、28歳から45歳くらいまでかしらね。15年前のインタビュー当時の彼とは、いまでも月1回は会っているし、その人以外に、10年お付き合いしている34歳の人もいて、彼とは週1回ペースで食事をします。恋人はこの二人ね。他にも何人か、定期的に食事をする人がいて、やっぱりその度に、何かときめきがあるのよね。
鳴海 「ときめき」も、健幸と若さの秘訣ですね。
おすぎ それと、お付き合いしている年数がみんな長いのは、出会った時、その子の中にキラリと光る「何か」が見えたら、できる限りの応援をして、その「何か」をその人の才能としてあげたい、と思っちゃうのね。それには、やっぱり何年もかかるじゃない。でも、そのジャンルで、彼らが生き生きと活躍している姿を見るのが好きなのよ。それも、一つの生きがいになっているのかもしれないわねぇ。
鳴海 「誰かのために」という思いや行動は、「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンを分泌させるそうですよ。このオキシトシンが、心身の健幸に素晴らしい効果があることが解明されているらしいですから、おすぎさんは、知らず知らずのうちに最高の健幸習慣を積み重ねてきているのでしょうね。
「出会い」が、人生を豊かにしてくれる
鳴海 おすぎさんの幅広い交友関係の中には、芸能界で長く活躍している方もたくさんいらっしゃいますが、そういった人も、自分なりの健幸法をお持ちなんでしょうか?
おすぎ それは、よくわからないですね。他の人には興味がないから(笑)でも、タモリさんなんかは、オンとオフの切り替えを意識して、上手に息抜きしているんじゃないかしら。長年、第一線で活躍し続けている人は、その辺りのバランスの取り方が上手いわよね。
この世界(芸能界)に入って、本当にたくさんの魅力的な先輩たちと出会いがあったし、いろいろなことを学ばせてもらいました。テレビの草創期に関わっていた永六輔さんは「おすぎとピーコ」っていう名前をつけてくれた人で、映画評論家としての基礎を作ってくれたのも永さん。いろんなところへ連れて行ってもらったし、本当に可愛がってもらった大恩人ね。でも、ケチだったわね…あ、お金の厳しさを教えてくれた、って意味よ(笑)
鳴海 いい話の印象が薄くなってしまいました(笑)
僕にとっては、おすぎさんとの出会いが、まさに人生をより豊かにしてくれたと思っています。前編でもお話したように「ぶんぶん通信」で紹介していただく映画は、おすぎさんが教えてくれなければ、その存在さえ知らなかったような作品もあって、いつも新鮮な感動をいただいているんです。
おすぎ そんなふうに思ってもらえたら、本当に嬉しいです。人生の彩りを豊かにしてくれるのは、人との出会いだけじゃなくて、鳴海さんが言ってくれたように、名画との出会いにもあると思うのね。淀川(長治)さんが、歌舞伎やオペラ、落語も、演劇も、宝塚も、全部観なければいけない、って教えてくれたように、いろいろな「出会い」が、感性の幅を広げてくれることは間違いないと思います。
鳴海さんが褒めてくれたから、これからも頑張って「いい映画」を紹介していくわ。
鳴海 あと30年は頑張っていただきたいです。
おすぎ 100歳過ぎちゃうじゃないのよ!ほんと、うっとうしいわね(笑)
鳴海 (笑)健幸と若さの秘訣を、たっぷり教えていただきました。どうもありがとうございました。
これからも、引き続き「ぶんぶん通信」での映画紹介をよろしくお願いします!!
豊かな感性を育んでくれる「名画」との出会い。
今号の「ぶんぶん通信・名画のすゝめ」では、おすぎさんに伺った「生涯で観ておきたい名画10選」をご紹介しています。どうぞお楽しみくださいませ。
おすぎさん プロフィール
1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て
「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家として
デビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、
トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、
「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、
「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。