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【vol.67】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第18回 東洋医学の基礎理論17 肝について その2


 
東洋医学の基礎理論⑰

肝の蔵血作用

  
 前回は、肝の『疎泄作用』についてお話ししましたが、今回は、肝の『蔵血作用』について説明します。
 蔵血の「蔵」は、貯蔵を意味していますが、東洋医学でいう肝の『蔵血作用』は、単に血を蓄える作用ばかりではありません。肝血がどの様に作用し、機能しているかが重要であり、それを知ることで、肝の『蔵血作用』の本来の意味がわかります。

⑴ 肝気と肝血の量のバランスが取れていて、はじめて健康状態を保てます。肝血が不足すると、肝気を制御する肝血の作用が弱まり、相対的に肝気が過剰となって、肝陽過多となり、肝陽上亢を来たし、頭痛、顔面の紅潮やのぼせ、目赤(目の充血)、イライラなどの症状が出現します。すなわち肝血は、肝気(肝陽)の過剰な上昇を抑えます。(図1)

⑵ 肝血は、過剰な肝気の上昇という、一方向だけの肝気の流れを抑えることで、全身に隅々までくまなく肝気が巡るという疏泄作用を助けます。逆に気のパワーで血を動かすことから、全身に肝血を配る調血作用の原動力には、肝の疎泄作用を必要とします。
 肝の疏泄作用と肝の蔵血作用は、お互いに支え合う関係にありながら、両者間でのバランスと調和がとれていることが必要です。(図2)

⑶ 西洋医学での血の作用の一つである、血液自体の中に血小板や凝固因子を持ち、止血作用がありますが、中医学においても同様に肝血自体に止血作用があります。

⑷ 肝には調血作用と云う働きがあります。これは身体の必要とする部位に血を適宜分配する作用です。運動、気候、感情の変化によって、各部位の血の必要量も変化しますが、まさにその調節が肝の調血作用によって営まれます。調血作用が巧く行かないことによって、身体のある部位の肝血量が不足する現象を生じます。例えば、眼の肝血が不足することで、眼を滋養出来ないために、かすみ目や視力障害などの症状が出現し、筋(西洋医学の筋肉を意味し、「きん」といいます。「すじ」ではありません)への肝血が届かなければ、筋を滋養出来ずに、筋肉の痙攣、四肢の痺れなどの症状が招来します。さらに肝血の不足が女子の月経にも作用し、無月経、月経過小、月経周期の間隔の延長を来します。さらには、⑶で言及したように肝血不足による止血作用の低下で過多月経を生じます。

⑸ 臓象学説【「蔵」:内臓(臓腑)を指し、「象」:表に現れた現象をさす。表に現れた人体の変化を観察することにより、各臓腑の生理機能や病理変化、さらにそれらの相互関係を判断する理論】に「肝は魂を蔵する」と云う文があります。魂は神(精神)が変化したもので、神と同様に肝血によって滋養されています。『霊枢』本神篇に「肝は血を蔵する、血には魂が宿る」と云う文章があり、肝の蔵血作用が正常であれば、魂が安定し精神状態も正常である。もし肝血が不足すれば、魂が宿るところを失って、驚きやすい、多夢、不眠、不安、夢遊病、寝言、幻覚などの症状が現れます。(図3)

 次回は、肝の志、液、体、開竅について、お話ししましょう。
 

vol67

 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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