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【vol.66】おすぎの名画のすゝめ  Scene.24



 
 こんにちは。おすぎです。
 今回は、カンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞グランプリ)を受賞した名作ばかりを集めてみました。
  

「セックスと嘘とビデオテープ」

1989年公開 アメリカ映画 脚本・監督 スティーブン・ソダーバーグ

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 有能な弁護士ジョン(ピーター・ギャラガー)を夫に持つ主人公のアン(アンディ・マクダウェル)。郊外の大きな邸宅に住んで、何不自由のない暮らしを送っていますが、家庭ではセックスレスと憂鬱に悩み、精神科に通っています。そして、夫のジョンはアンの妹であるシンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と不倫中… 。そんなある日、夫の大学時代の友人グレアム(ジェームズ・スペイダー)が家探しのために訪れて来て、そのまま数日泊まることになります。アンは、芸術家のような風貌で、少し変わり者のグレアムに興味を抱き、軽い気持ちで彼の家を訪ねるのですが、そこにあったのは不特定多数の女性が性的な問題について語っているビデオテープの山。このテープをめぐって、姉妹の行動が展開されていきます。このグレアムとは一体どんな人物だったのか?ジョンとグレアムの関係も、映画が進むうちに微妙なものになっていきます。とにかくタイトル通りの展開が美事であります。
 この作品で監督のソダーバーグは、史上最年少の26歳でカンヌ国際映画祭パルム・ドール(最高賞グランプリ)を受賞しています。
 

「タクシー・ドライバー」

   1976年公開 アメリカ映画 監督 マーティン・スコセッシ

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 ニューヨークの夜の街を、ただあてもなく走り続けるタクシードライバー(ロバート・デニーロ)は、ベトナム戦争帰りの元海兵隊。腐敗しきった現代社会に、怒りや虚しさ、孤独感を募らせながら、徐々に精神を病んでいき、ついには、世間に自分の存在を知らしめるため、過激な行動に走るのであります。売春で生計をたてている少女アイリスを、わずか13歳で演じたジョディ・フォスターは、この作品でデ・ニーロと共演して演技に開眼したと語っていて、本作で第49回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされています。デ・ニーロが鏡に向かって「You talkin’ to me?」と呟きながら、鏡に映っている自分に銃を向けるシーンは、脚本にはなかったそうですが、監督とデ・ニーロが即興でやったこのセリフは、2005年にアメリカ映画協会が選出したアメリカ映画の名セリフベスト100〞の10位にランクされました。とにかく、デ・ニーロがいなかったら撮れなかったであろう作品で、そのデ・ニーロが抜群に素晴らしいのです。
 1960年代後半から1970年代中頃にかけて繁栄を極めたアメリカン・ニューシネマの代表的な作品。第29回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品であります。
 

「ブリキの太鼓」

   1979年公開 ドイツ映画 監督 フォルカー・シュレンドルフ

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 時は1954年、30歳のオスカル・マツェラートが、精神病院の看護人相手に自らの半生を語るという形で始まります。誕生時には既に成人並みの知能の発達を遂げていたオスカルは、自分の成長を自身の意思でコントロールする能力も備えていました。誕生したオスカルは、自分が成長することを恐れていましたが、父親が「3歳になったらブリキの太鼓を買って与えよう」と言っているのを聞いて、3歳までは成長することにしたのです。そして迎えた3歳の時、父親が地下室に降りる扉を閉め忘れたのを、これ幸いと故意に地下室へ転落し、それが原因で成長が止まったと信じ込ませることに成功したのであります。 
 ここまで書いて、何という発想の映画なのか?とつくづく思いました。映画を観ている時は、全く違和感を感じなかったのに、文章にするとちょっぴりビビりました(笑)。とにかく、オスカルの目を通して、ナチスが政権を牛耳る前後の自由都市・ダンツィヒに置ける中産階級特有の心性や、戦前・戦中・戦後の遍歴を描いていく異色作であります。
 1979年カンヌ国際映画祭パルム・ドール、アカデミー外国語映画賞受賞作品。
 

おすすめの新着映画 『運び屋』

監督:クリント・イーストウッド
原題:THE MULE 配給:ワーナー・ブラザース映画
3月8日(金)、全国ロードショー
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 クリント・イーストウッドを、あらためて“スゴい”人なんだなぁと心から思ったのが、3月に公開される「運び屋」を観たからであります。退役軍人のアール(C・イーストウッド)は高級ユリの生産者として一目置かれる存在でしたが、ネットの普及と共に売り上げは落ち、自宅も農園も差し押さえられてしまいます。それまで家庭をないがしろにし、娘の結婚式にも出席しないくらい自分のことしか考えていない人間だったので、仕事が無くなると“ただの老人”。そんな時「車の運転さえすれば金になる」と持ち掛けられ、渡りに舟と引き受けるのですが、これがコカインを運ぶ「運び屋」だったことを後から知るのです。ただ、多額の報酬を貰える上、カルテルのボスにも気に入られ仕事は順調。そこへ麻薬取り締まりの捜査官コリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)が捜査に乗り込んできて…。
 88歳のイーストウッドが、90歳のアールを演じる役作りとして祖父を参考にして、“年寄りのように演じる”という凄さ。とにかく、イーストウッドの演技を堪能して下さい。
 

プロフィール・映画評論家 おすぎ


1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。
 
 
 

 

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