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【vol.60】こころとからだの健幸タイム|ゲスト 帯津 良一 さん~前編~


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 今夏発売となった、医学博士の帯津良一先生とエヌ・ピュア代表・鳴海周平の共著 『死ぬまでボケない1分間〝脳活〞法』。
 ホリスティック医学の第一人者である帯津良一先生は、同著の中で「脳活のコツは、  3つにまとめることができる」と述べています。

 ① からだを動かすこと
 ② 食生活に気をつけること
 ③ 心にいつもときめきを持つこと

 前編の今回は、①「からだを動かすこと」について、同著より抜粋してご紹介します。
 

末端を意識する

鳴海周平(以下 鳴海)
 ボケにくい3タイプの人がいる、と聴いたことがあります。人と触れ合う機会が多い人、からだをよく動かす人、そして、初めからボケているような人(笑)。お医者さんの方で判断が難しいのだとか。

帯津良一(以下、帯津)
 それは、たしかに見極めが難しい(笑)。おっしゃるとおり、コミュニケーションが多い人や、こまめに動いている人には、ボケの症状が出にくい傾向があります。

鳴海 コミュニケーションの多い人が、脳を頻繁に使っているのはイメージしやすいですが、こまめに動くことでも、脳は刺激を受けるものなんですか?

帯津 脳はからだを動かす司令塔でもありますが、からだの各器官からの情報を分析する中枢でもあります。手や足、皮膚で感じた情報を、脳は常にキャッチして次の行動を決定しますから、こまめに動けば動くほど、皮膚への刺激が伝わって、脳が活性化するんです。

鳴海 なるほど、そういうことですか。人間が進化の過程で手先を使いながら知能を発達させてきたことも納得できますね。東洋医学のツボ(経絡)という考え方も、皮膚を通じて内臓へ刺激を伝えるわけですから、こまめに動くことはツボの刺激にもなる。手や足にツボが多く点在しているのも、脳との関係をあらわしているようで興味深いですね。

帯津 手や足といったからだの末端を意識することは、とても大切だと思うんです。1日中座りっぱなしの職人さんや、芸術家の人たちに長命が多いのは、からだをこまめに動かす、という視点からでは説明がつきませんが、末端に意識を向けることで、目に見えない全身運動がおこなわれている、と考えれば納得がいきます。

鳴海 彫刻家の平櫛田中さんは100歳の誕生日の時、30年分の彫刻に必要な木材を購入したそうですし、ピカソも、シャガールも90歳以上の長命ですね。末端に意識を向けることが、脳の健康を保つうえでいかに大切かがわかります。

帯津 芸術に関わる人たちは、皆、旺盛な創作意欲を持っています。そうした「生きがい」もまた脳の活性化に一役買っていたのでしょう。五感からの刺激と、精神的な刺激の両方で、脳は大いに喜ぶのだと思います。

鳴海 皮膚が触れることで脳に伝わる「触覚刺激」というのは、視覚や聴覚から受け取る刺激よりも、脳が広範囲で反応すると聴いたことがあります。

帯津 皮膚はからだの最先端、つまり末端です。皮膚には受容細胞があって、免疫の働きにも大きな影響を与えています。昔からおこなわれている乾布摩擦などは、この細胞を刺激する健康法でしょう。さすったり、揉んだりということを、手や足という末端でおこなう。これは、脳によい効果があって当然でしょうね。

鳴海 耳という末端にも、たくさんのツボがありますね。

帯津 耳は、東洋医学の「腎」における外界との連絡口です。腎というのは、成長や発育、生殖といった働きを、生涯にわたって左右している生命力の元。つまり、年齢による変化があらわれやすいところでもあるんです。歳をとると、耳鳴りや難聴といった症状が出やすくなるのもこうした理由からです。生命力の元とつながる「耳」という末端を意識して触れることも、脳にはよい刺激になるでしょう。

鳴海 手や足、耳、そして皮膚全般といった末端を刺激することの大切さが、よくわかりました。

帯津 あとは、それをおこなうタイミングですが、お勧めは、朝起きてすぐと、夜寝る前。自律神経のバランスが入れ替わるリズムに合わせておこなうことで、よりいっそうの効果が期待できます。まあ、そうは言っても、脳にとってはいつでもよい刺激がいきますから、1日に何度でも、氣づいた時におこなうといいですね。
 
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足腰を丈夫にする

鳴海 健康で長寿の人に話を伺うと、必ずと言っていいほど、運動の習慣をもっています。それに、皆さんマメな方が多いですね。立ったり座ったりしながら、頻繁に動いている印象を受けました。

帯津 昔から「老化は足腰からやってくる」と言いますからね。からだを動かす、特に足腰をこまめに動かしていることは、脳にもよい刺激になるんですよ。
 脳は、からだの各部位の動きに連動しています。足を動かしている時は、脳の頭頂部に近いところの領域が反応するので、よく歩くことは、脳のもっとも高い位置まで血液を汲み上げて、脳のすみずみまでいきわたらせているわけです。
 また、下肢の筋肉は、80代になると20代の頃の60%まで減少しますから、筋肉を衰えさせないためにも、足腰をよく動かすことは重要なんです。

鳴海 現代人は、江戸時代の人に比べて、日常での「小動き」の量が50分の1以下に減っているそうです。家電などがなかったから、掃除や洗濯、料理といった家事全般における運動量は、たいへんなものだったでしょうね。

帯津 「小動き」を心がけることが、足腰強化にはいちばんよい方法かもしれません。私の場合は、患者さんが来ると、先ずベッドへ横になってもらって触診します。そして、自分の椅子へ戻って話を続けます。これが、1日数十人ですから、とてもよい運動になっている。それと、診察が終わって患者さんが部屋を出るときは、必ず「お大事に」と言って立ち上がります。ある患者さんが、「帯津先生は凄い。お大事に、という時に起立してくれる」と言っていましたが、自分の健康のためにやっているんです(笑)。地下鉄でも、エスカレーターにはほとんど乗りません。階段を使って、足腰を鍛えていますよ。

鳴海 106歳で現役医師だった故・日野原重明先生も「健康法は、楽を嫌うこと」だそうで、エスカレーターと階段があったらなるべく階段を選ぶ、とおっしゃっていました。日頃のそうした心がけが、健康、健脳を支えているのでしょうね。

帯津 糖尿病と認知症が関係していることは、近年明らかになってきていますが、「小動き」は糖尿病予防にもたいへん効果的です。糖尿病と密接な関係にあるインシュリンというホルモンは、糖を筋肉の細胞に取り込む働きがあることがわかっています。つまり、「小動き」によって筋肉が増えると、それだけ糖尿病、認知症のリスクも軽減するということです。私の体型をみて心配してくれる人がいますが、肥満が悪いわけではなく、肥満で運動することを億劫に思うのが認知症につながるんだ、ということも、この場を借りてお知らせしておきます(笑)。

鳴海 からだを動かす具体的な方法としては、日常生活における「小動き」と、やはり「歩くこと」でしょうか。

帯津 歩くことは、もっとも手軽な方法でしょうね。歩いていると、風景を楽しんだり、障害物を避けたりということが、脳にとてもよい刺激になります。もちろん、足腰の鍛錬にもなる。さらに、リズム運動と日光浴によるセロトニン効果も期待できます。セロトニンは、心身のバランスを調えてくれる脳内物質で、脳の前頭前野から分泌されます。家の中でできることでは、段差を昇ったり降りたりする運動もいいでしょう。こちらも一定のリズムを刻むので、セロトニンの分泌につながります。
 大切なのは、長く続けること。そのためには、楽しみながらやることが大事なので、「絶対に毎日やらなくては」という切実な思いではなく、なんとなく氣持ちがいいから、というくらいが長続きするコツではないかと思います。

鳴海 フィンランドで、65歳から79歳までの1500名に「運動と認知症」の関係を調べる調査をおこなったところ、週に2回運動している人は、全く運動をしていない人と比べて、認知症のリスクが約半分だったそうです。適度な運動量は人によって違うと思いますが、「週に3回、1回30分歩けば、認知症予防の効果がある」というデータが多いようなので、「運動量は1週間単位で考える」くらいのゆるさがちょうどいいかもしれませんね。

帯津 私の好きな『日和下駄』という作品に、著者・永井荷風の日常生活が書かれています。暇をみつけては、日和下駄を履いて東京中を歩きまわり、お腹が空くと馴染みの食堂でカツ丼と日本酒を楽しむ。足腰を鍛えて、いつまでもそんな風でありたいと思います。
 
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参考文献
「死ぬまでボケない 1分間“脳活”法」帯津良一・鳴海周平著(ワニ・プラス)
 

 

帯津 良一

日本ホリスティック医学協会名誉会長。
日本ホメオパシー医学会理事長。
1961年、東京大学医学部卒業。
東京大学医学部第三外科、都立駒込病院外科医長を経て、
1982年、帯津三敬病院を開院、現在は名誉院長。
西洋医学に中医学やホメオパシーなどの代替医療を取り入れ、
ホリスティック医学の確立を目指している。
『健康問答』(五木寛之氏との共著 平凡社)ほか著書多数。
 

 

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