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【vol.58】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」  第9回 東洋医学の基礎理論8


【東洋医学の基礎理論⑧ 津液について】

津液について
 体内に存在する水分のうち、血以外のものを津液といいます。すなわち津液は、体内の全ての生理的な水液で、細胞内外の液、唾液、胃液、腸液、関節液、涙など全てを含めた組織液に相当します。
 津液は津と液に分けられます。
 津は、サラサラした体表面を巡る水分で、液は比較的粘稠で、ねっとりした体の深層部を巡る水分です。関節腔、胸腔、腹腔などを潤します。ただし両者は画然と区別出来ないことがあるため、通常は、津液と総称されます。
 津液は、先天的な素材と後天的な素材が結びついて生成され、先天的な素材は、「腎に蓄えられた水分」が「腎に蓄えられた熱源」によって温められて、脾に運ばれます。
 一方、後天的な素材は、「食べ物」から取り入れられ、脾に送られて、腎陰と結びついて、津液が生成されます。脾で生成された津液は、肺に送られ、宣散と粛降と云う2つの経路に分かれて全身を巡ります。
 宣散は、体の上部や表層部に向かって、散布されるように広がりながら巡る経路です。宣散によって巡るのは、主に津で、表層部に潤いを与え、やがて汗や呼気の水蒸気として対外に発散されます。
 粛降は、体の深層部や下部に向かってしみ込むように巡る経路です。粛降によって巡る主体は、液であり、血管内を巡ったり、皮膚の真皮内や関節を潤す働きをしたりします。粛降によって巡った津液は、やがて腎に回収されて、老廃物と共に尿となって排泄されます。
 津液は、水分を介して気や血の機能を支えます。気を支える作用を、滋潤作用、血の作用を支える働きを濡養作用といいます。
 滋潤作用とは、主に津液が津の働きの宣散作用によって皮膚や粘膜などの体表部に散布して潤いを与え、涙・唾液など腺分泌液として粘膜を潤し、汗などで余分な熱や老廃物を体外に排出したりする作用です。
 濡養作用とは、津液のうち液の働きによって体内の深部や血管内を巡って、関節内の滑液となって関節の動きを滑らかにしたり、諸臓器に栄養を届ける手助けをしたりする作用です。

「津液の不調について
 津液の不調には、不足によるもの、過剰によるもの、巡りの不調があります。
 量が不足すると、陰虚という病態が現れ、量が過剰な場合は、湿、痰飲、湿熱と云った病態が現れます。さらに津液の過不足によって、津液の巡りにも不調を来します。
 陰虚は、津液が不足したことで生じる病態で、高熱や長期の発熱、外邪による熱邪(高温環境、放射線治療など)、過剰の発汗などによって津液が消耗したり、津液の生成をつかさどる腎や脾の働きが低下して、津液の生成が低下したりすることが原因で生じます。主症状として、皮膚の乾燥、赤味、火照り、空咳、便秘などが見られます。陰虚の治療は、津液を補う補陰(=滋陰:津液の生成に関わる腎や脾の機能を高める、麦門冬湯、滋陰降火湯、生薬では、阿膠、麦門冬、玄参、亀板、鼈甲など)という方法を取ります。熱邪による傷津(陰虚)には、清熱瀉火の薬剤の石膏、知母(清熱+滋潤)を加えます。

 津液の不足には、全身で生じている場合より部分的に生じる場合が多いので、どの部位や臓腑の津液が不足しているかを考慮することも必要です。(腎陰虚、肺陰虚など)
 湿は、津液が部分的に過剰になって滞った病態です。水分のもとである腎陰を温める熱源である腎陽のパワーダウンによって津液の巡りが悪くなり、ある部分で水分が留まり、過剰になってしまいます。症状としては、体のだるさ、浮腫み、頭重感、頻尿、下痢、胃内停水(胃でチャプチャプと水がたまっているような状態)などです。
 湿がさらに進むと、痰飲になります。湿の症状に加えて、めまい、耳鳴り、不整脈が現れます。治療は、余分な水分を排出する(余分な津液を取り除く)という方法を取ります。
 湿熱は、湿の状態が長期におよんだり、湿が他の病的な熱と結び付いたり(例:アルコールの過剰摂取など)して生じる病態です。冷えを引き起こしやすい湿と燥を引き起こしやすい熱では、両者が結び付きにくい関係にありますが、両者が結び付いて共存することにより、二日酔いのように、怠く、むくみ、頭重感、吐き気、胸苦しさを生じます。治療は、五苓散により利湿を行い、黄連解毒湯を用いて清熱を図ります。
  

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

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