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【vol.57】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」  第8回 東洋医学の基礎理論⑦


【東洋医学の基礎理論⑦ 血の不調】

血の不調
 血(けつ)は、気や津液(しんえき)と同様に体を巡り続けることで、生体機能を正常に保っています。
 血の巡りに異常が出ると、様々な不調が生じてきます。
 血の巡りの異常によって血の量が不足した病態の血虚(けっきょ)、血の動きが悪くなった病態の*血瘀(けつお)、血の中に熱が欝積し、熱邪が血に作用したり、血の巡りが停滞して熱がこもったりする血熱(けつねつ)などの状態になります。
*中医学では、血瘀、日本漢方では、瘀血〈おけつ〉といいます。

 「血虚(=血が足りない)」という状態は、西洋医学でいう単なる貧血ではなく、血の滋養・滋潤作用が低下した状態を示しています。
 したがって、血虚の主な症状は、顔色が悪い、目のかすみ、こむら返り、不眠、動悸、手足のしびれ、過少月経、月経周期が長くなる、皮膚の乾燥、冷房を嫌う冷えを呈します。
 その原因には、①血の材料となる飲食物の摂取不足、②脾虚による消化吸収の不足、③腎陰不足による血の生成の低下、④過度の思慮による消耗、⑤過労・慢性病による消耗、⑥出血による消耗があります。
 基本的には、血の生成障害(①〜③)か、血の消耗(④〜⑥)によって、血虚が生じます。
 さらに血を生み出すのに気のエネルギーを必要とするので、気虚によっても血虚を生じます。
 治療には、血を補う養血をします。
 当帰、川芎、地黄、芍薬から構成される四物湯が基本処方で、四物湯を含む方剤には、十全大補湯、七物降下湯などがあります。

 「血瘀」は、血の動きが悪くなって体内の一部に血が滞って生ずる病態です。
 原因には、血の巡りを先導する気が不足した気虚、気が滞る気滞、寒邪の侵入、熱の不足、熱の過剰によっても血瘀が生じます。
 主な症状には、痛み、出血、皮膚が黒っぽくくすんで乾燥気味、目の下のくま、シミなどの色素沈着、経血が固まりになりやすい、などの症状を来します。血の流れを先導する気の異常として、気虚や気滞でも血瘀が生じますが、熱の不足、熱の過剰によって血がドロドロになる場合や、津液が病的な塊になって湿(しつ)などが血の巡りを遮る場合などが原因で血瘀が生じます。
 治療は、温経湯(うんけいとう)(体を内側から温めて血の巡りを整えてくれる、冷え性や頭痛、生理痛や月経困難症などといった女性特有の症状に悩まされている人に有効)などで血の流れを良くする活血(かっけつ)と云う方法を取りますが、血瘀を起こしている原因に応じて(例えば、気の対応)治療することも重要です。
 「血熱」は、血に熱がこもっている病態で、血の通り道、血が作用する臓腑や器官に症状が出ます。出血、鼻血、血尿、月経過多などが代表的な症状です。
 暑邪などの陽邪の侵入、酒の飲み過ぎ、悩み、怒りなどの感情の影響、房事過度などにより引き起こされます。
 治療には、血の不要な熱を冷ます*清営涼血や黄連解毒湯、清営湯(犀角2g〔動物のサイの角〕・生地黄15g・玄参9g・竹葉心3g・麦門冬9g・丹参6g・黄連5g・金銀花9g・連翹6g )が用いられます。

*清営涼血:血に熱がこもっている血熱の病態に対して、血が持つ過剰な熱を冷ます治療法。併せて肝の臓血作用や心の血液循環作用を高める治療を行う場合もある。
 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

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