【vol.86】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第36回 東洋医学の基礎理論35 肝と肺
東洋医学の基礎理論35
肝と肺
【肝と肺の正常な関係】
肝と肺は、気機(気の運行)において深く関わり合っています。
肝は、気を上昇させる(昇発)作用を有し、肺は、気を下降(粛降)させることによって、全身の気の巡り(循環)を円滑(図1)にさせています。
肺が気を粛降させることによって、肝が気を昇発させるのを助け、肝の気の昇発によって肺の粛降を助け、滑車のように相互に助け合う関係(図2)にあります。
この気の巡りは、肝の昇発作用と肺の粛降作用が、バランス良く同じ力で作用しているのが、正常な状態です。
因みに、前号で触れた「脾と肺」の関係においては、①気の生成(後天の気)②津液代謝に関わる関係でしたが(図3)、肝と肺については、気の運行に
関わる関係にあり、肝と肺や脾と肺など各臓間の関係において、両者が関わる作用が、それぞれ異なることがわかります。
【肝と肺の病的な関係】
もし肝気の上昇が過剰になるか、或いは肝気の降下作用が不足すれば、肝火上炎(図4)(過剰な肝気が上昇することによって熱を帯び肝火となった病態、症状としては、赤ら顔、目の充血、目眩、耳鳴り、口苦感、激しい頭痛など顔面に熱症状)を来たし、肝火が肺に及ぶと肝火犯肺の病証を来します。
(図5)肝火犯肺になると、肺の機能が失調して肺の粛降が妨げられ肺熱症状として咳嗽(火のような激しい咳き込み)や肺に火をつけられたように胸
痛や黄色粘性痰を生じます。
治療には、柴陥湯《小柴胡湯(柴胡、黄芩、半夏、生姜、人参、大棗、炙甘草)+栝楼仁+黄連》などを用います。
プロフィール
医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之
昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会 認定医
日本内視鏡学会 認定医