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【vol.82】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第32回 東洋医学の基礎理論31 心と脾


 
東洋医学の基礎理論31

《五臓の相互関係》

 五臓は、それぞれ影響し合って生命活動を維持しています。その相互関係について言及したいと思います。
 五臓の中の二臓の組み合わせは、10組あります。
1.心と肺 2.心と脾 3.心と肝 4.心と腎 5.肺と脾 6.肺と肝 7.肺と腎 8.肝と脾 9.肝と腎 10.脾と腎
 
 今回は2の《心と脾》についてみてみましょう。

2.心と脾

【心と脾の正常関係】

(図1)血は、脾の運化作用により水穀より生成されますが、脾が血を造って心に血を供給して、心の循環作用を促進し、心が蔵している神志(精神活動)も脾によって生成された血によって滋養されます。また脾の統血作用によって循環血が血管外に漏れ出ないようにしています。心は、全身の血を循環させ、心血によって脾を滋養します。
心と脾の関係は、このように密接であるために、両者は、互いに影響を及ぼし合います。例えば、脾が弱り、気血を十分に造られなくなると、血が不足して心の働きが低下します。

【心と脾の病的関係】
 
(図2)飲食不摂生(過食、アルコールの飲み過ぎ、冷たい飲食物の摂り過ぎ)や思慮過度(心血が消耗して、脾を滋養できなくなる)によって脾の働きが損傷されると、運化作用(消化吸収作用)によって血の生成不良となったり、統血作用が不良となって出血しやすくなったりして、心が滋養されなくなり、心血が不足し、心神が不安定になります。一方重症の疾病・病後・出血症などによって心の血が不足(心血虚)となると、脾が滋養されなくなって、脾の作用が低下(脾虚)します。このような関係があるため、心脾両虚証がよく見られます。心脾両虚証では、①脾虚症状として食欲不振・食後の膨満感・胃もたれ・下痢・全身倦怠感があり、②心血虚症状としてめまい・動悸・不眠・多夢・健忘、③脾虚による統血作用不足により過多月経・皮下出血・不正性器出血を生じます。例えば、脾虚で慢性的に消化器が虚弱で食欲が低下している人に頭がボーッとして、立ちくらみや動悸を訴える方がいます。これは、脾虚によって気や血の生成が上手くいかなくなって、心血不足になったからです。一方悩み事が多く、考え込みすぎる方には、心血虚症状としての不眠などを生じ、食欲減退といった脾虚症状も伴いやすくなります。

【治方】
  
帰脾湯、加味帰脾湯(熱証を伴うとき)が多用されます。全身倦怠感を伴ったら、人参養栄湯を用い、不眠が強いときには、養心湯(党参、黄耆、炙甘、当帰、茯神、茯苓、柏子仁、酸棗仁、遠志、五味子、川芎、半夏、肉桂)を用い、不眠と夜間尿がみられたら、清心蓮子飲を用います。

 
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プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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