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【vol.81】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」 第31回 東洋医学の基礎理論30 心と肺


 
東洋医学の基礎理論30

《五臓の相互関係》

 五臓は、それぞれ影響し合って生命活動を維持しています。その相互関係について言及したいと思います。
 五臓の中の二臓の組み合わせは、10組あります。
1.心と肺 2.心と脾 3.心と肝 4.心と腎 5.肺と脾 6.肺と肝 7.肺と腎 8.肝と脾 9.肝と腎 10.脾と腎
 
 今回は1の《心と肺》についてみてみましょう。

1.心と肺

【心と肺の正常関係】

 肺と心の関係(図1)において、肺は、気を主り(=全身の気を運ぶ)、呼吸を主宰する以外に、宗気(=推し出すパワーを持った気のことを云います。推動作用を強く示す気で心拍運動や呼吸運動を促進し、発声にも関与)を生成して血を巡らします。さらに肺気を宣発・粛降させて「百脈を集める」と云って全身の血の循環速度を調節します。
 心は、血脈を主りますが(=全身の血液を運ぶ)、この行血( 血の循環)は、心のみによるものでなく、肺で生成された宗気の手助けも要ります。心は、肺を滋養して、肺の宗気の生成にも関与します。つまり肺気は、血で作られ、心血は宗気の力で循環します。
 このように心と肺は、生理上密接な関係にあります。

【心と肺の病的関係】
 
 病的な状態(図2)では、(図3)慢性的な肺疾患による長引く咳嗽、慢性疲労などで肺の機能が低下(肺気虚)すると、宗気が不足して血を動かす推動作用の低下により心の機能低下(心気虚)となって血の循環も不良になります。
 逆に病後や慢性疾患などによって心の機能が低下(心気虚)して、心は宗気を肺に運べず、肺への滋養が低下して肺気虚に陥り易くなります。例えば、心疾患で心気が不足
して血の運行が長期間障害された後に肺気の宣散・粛降が障害されて呼吸困難を訴えるケースがあります。(西洋医学では、心不全から呼吸困難を来す心臓喘息が該当するものと思われます。)
 このように心気虚と肺気虚の症状が同時に出やすくなります。この病態を心肺気虚と云います。心肺気虚(図3、4)では、①心気虚症状(推動作用の低下)として動悸・息切れを生じ、体動や過労、冷感刺激で悪化します。冷感も伴います。ひどくなると浮腫を生じます。
 ②肺気虚として息切れ・咳嗽・喀痰( 白色や透明で多量の痰が多い)・呼吸困難・自汗(日中いつもかく汗のことを云う。体動で増強する。盗汗は、寝汗)・易感冒・弱々しい声、宗気の不足により顔色蒼白・疲労倦怠感・冷感・めまいなどを生じます。

【治方】
  
 心と肺の機能を補います。慢性咳嗽・動悸発汗・息切れ・易感冒には、補肺湯(桑白皮、熟地黄、人参、紫苑、黄耆、五味子)、倦怠感・動悸・息切れに保元湯(黄耆、人参、肉桂、炙甘草、生姜)、易感冒・易発汗には、玉屏風散(黄耆、白朮、防風)を用います。

 
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プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

 

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