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【vol.31】辻和之先生の健康コーナー|アトピー性皮膚炎《その2》


 前回から近年増加傾向にあるアトピー性皮膚炎について特集しています。今回もアトピー性皮膚炎の概要と日常生活の対処方法について、次回は東洋医学(漢方医学)から見たアトピー性皮膚炎について、お話ししたいと思います。

 アルコールは痒みを増します。香辛料などの刺激物は避けたほうが無難です。他に、チョコレート・コーヒー・もち・砂糖・脂肪分などが、痒みを悪化させる因子となる場合があります。個人差がありますので、思い当たる場合には控えてください。睡眠不足による悪化が明らかな場合は、生活リズムの変調をきたしている状態です。睡眠時間自体を問題にするのではなく、就眠の時刻をできるだけ一定にするよう心掛けてください。

 皮膚を刺激する素材(ウールやチクチクする素材)の衣服や寝具は避けましょう。アトピー性皮膚炎の乳児では、母親がウールの衣服を着ていると、抱っこしているときに顔をこすりつけるので、顔の皮膚炎が悪化してしまいます。最近は、綿100%の肌に優しい保湿に優れた衣類や寝具なども手ごろな値段で売っています。また、下着の縫い目もこすれて痒い時があります。このような場合、裏返して着るといいでしょう。

 鉄フタロシアニンテトラカルボン酸で染色した繊維の下着(フタロシアニン下着)には、皮膚の痒みを軽くする効果のあることが知られています。この繊維には、多くのアトピー性皮膚炎患者さんが過敏性を示す汗の成分(アレルゲン)を除去する作用もあることがわかりました。また、予備的な調査では、アトピー性皮膚炎の皮膚症状は17名中13名で、痒みは18名中11名で軽くなりました。アトピー性皮膚炎の患者さんは、汗をかく時期にこの下着を着ることで、痒みを和らげる効果が期待できます。

 洗剤成分が衣類にできるだけ残らないようにしっかりすすぎましょう。最近の洗濯機は節水型が多いため、1回に洗濯する量を減らしたり、すすぎ回数を増やすのがいいでしょう。粉末洗剤と比べて液体洗剤は溶け残りがなく安心です。また、洗濯によりダメージをうけた衣類が皮膚を刺激することもあります。
 最近、特にすすぎ性を向上させて繊維に残りにくく、かつ洗浄力が高いことをうたっている液体洗剤や、衣類の傷みを低減し、皮膚と衣類の摩擦を抑える効果のある柔軟剤(ケアベール洗剤・柔軟剤)が市販されました。これらを使用すると、洗剤が残りにくく、衣類の感触が良くなって、痒みや皮膚の乾燥がやわらぐ患者さんもいるようです。 
 このように、毎日の洗濯を工夫することも、症状の軽減や治療の補助として役に立ち、快適な生活を送る一助になります。

保湿剤を効果的に使用しましょう
 
「保湿外用薬の塗り方」について
 
 アトピー性皮膚炎では、一見正常に見える皮膚でも、多くはドライスキンの状態にあります。そのため、できるだけ広い範囲に保湿外用薬を塗りましょう。

 保湿外用薬は少し多めに取り、手のひらを使って皮膚にまんべんなく塗りのばします。皮膚のしわはたいてい体の軸に対して横方向に走っています。できるだけしわに沿って薬を塗りのばしてください。背中など自分で塗りにくいところは、誰かに手伝ってもらいましょう。ステロイド外用薬やプロトピック軟膏は、皮膚炎の明らかなところを中心に、保湿外用薬の上に重ねて塗ります。

 皮膚炎がないからといってまったく外用薬を塗ることを止めてしまうと、どうしても皮膚は乾燥しがちになり、さまざまな刺激に敏感に反応してすぐに皮膚炎を再発してしまいます。1日1回は必ず保湿外用薬を塗りましょう。一日のうちでは入浴後が最も適切です。入浴後、体がまだ湿っているうちに保湿外用薬を塗ると、保湿外用薬が体の表面の水分を閉じ込めるので、最も効果的に保湿できるからです。朝、シャワー浴ができないときには、霧吹き等で皮膚に水分を与えてから保湿外用薬を塗ると効果的です。

*当院で用いているアトピー性皮膚炎用のクリームは、保湿剤にアトピー性皮膚炎に有効な生薬を煎じた濃縮液をミックスしたクリームを用い、保湿剤単剤より高い効果が期待できます。

 保湿外用薬にはいろいろな種類があります。主な保湿外用薬とその長所・短所を表に示します。具体的な選択は、専門の医師から処方してもらうか、あなたの皮膚の状態に合わせて指示してもらいましょう。また、市販のものでも、あなたにとって使用感のよいものであれば構いません。主治医にはどのような保湿外用薬を使用しているかを知らせてください。保湿外用薬には、軟膏のほかにクリームやローションなどもあります。夏に保湿軟膏を塗るとベタついて気持ち悪い感じがする場合があります。クリームやローションはベタつきが少なく、塗りやすくなっています。季節により、また個人の好みに合わせてそれらを試してみるのもよいでしょう。大切なことは、保湿を継続することです。

掻くとますます痒くなることを自覚しよう。

 痒くてたまらないとき、掻いてしまうとそのまわりや他の場所が次々と痒くなり、掻いてしまうことがよくあります。この悪循環を自覚して、治療はちゃんと行いましょう。


プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

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