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【vol.20】こころとからだの健康タイム|ゲスト おすぎ さん


 映画評論家としても著名なおすぎさんは、テレビやラジオなどのレギュラー番組を多数抱えながら、講演などのお仕事で日々全国を駆けまわっています。
今回は、おすぎさんに「いつまでも若々しくいられるための健康のコツ」についてお話を伺いました。

鳴海周平(以下 鳴海) いつもテレビで拝見していますが、実際こうしてお会いすると、本当にお若いですね。東京や福岡のテレビ番組にも出演しながら、北海道のラジオ番組にもこうして収録にいらっしゃって、なおかつ多数の執筆や講演、映画評論と、幅広く活躍されているというのは、本当に超人的な健康体だと思います。
今日は、おすぎさんの健康のコツを、是非お伺したいと思います。

おすぎさん(以下 おすぎ) そんなに若いかしら(笑)。でもそういえば、私がお付き合いしている芸能界の皆さんは、若く見える方が多いかもしれませんね。森光子さんや永六輔さんも、本当に若いですよ。やっぱり、いつも誰かに観られてる、っていう適度な緊張感みたいなものがいいのかもしれませんね。
私の場合は常に好きな人がいる、っていうのもあるかもしれませんけど(笑)。
ストライクゾーンが18歳から38歳までと、相当広いですから(笑)。

鳴海 まだ始まったばかりですが、いきなり深い話題になってしまいそうですね(笑)。でも、恋をするっていうのは、確かに若さと健康を保つにはとても良いことだと思います。ワクワク感や、ときめく感じというのは、細胞が若返っていくように感じますしね。私の場合は家内や仕事にときめきますが(笑)。

おすぎ あら、奥さんいらっしゃるのね(笑)。
私の場合、例えば「好きな人といつになったら会える」っていう目標があるだけで頑張れる、ということもあります。そんな心ときめく目標があるだけで、人って結構若くなれるんじゃないかな。そして、恋をすることと同様に、そのことしか考えない、っていう時間をもつことも、とても大切じゃないでしょうか。私はここ数年陶芸をやっていて、毎年3日間のお休みを貰って岐阜の織部の先生のところに泊まり込むんです。土に触れることで、ふだん忘れかけている自然の有難さを実感出来るし、心がとっても落ち着くんです。絵付けをしている時なんか、もうそれだけに集中出来るから、他の事はすっかり忘れられる。陶芸は、心の健康にとても役立っていますね。

鳴海 陶芸という趣味も、おすぎさんの豊かな感性に役立っているんでしょうね。この豊かな感性は、おすぎさんの「映画評論家」としての活躍にも必要不可欠だと思うのですが、映画を好きになったきっかけというのは何だったのでしょうか。

おすぎ 両親が映画好きだったんです。ですから私も、姉(?)のピーコも、3歳の頃から映画館に出入りしてました。父は洋画が好きで、母は邦画が好きだったので、どちらも観る機会があったんです。私が小さい頃は、映画って本当に大衆の娯楽でしたから、30円で3本立て、5本立てが観ることが出来たんですよ。映画館は常に満席で、ドアが閉まりきらないほどでしたから、いつも父が肩車をして観せてくれましたね。
学校にあがってからは、いかにタダで映画を観るか、ということに必死でした(笑)。朝早くから、ピーコと2人で校門の掃除をして、先生から誉められます。クラス委員もやったしね、もう職員室に入り浸りですよ(笑)。すると先生からたまに映画の無料券が貰えるんです。「お前、いつも偉いな」って(笑)。銭湯で映画のポスター貼りの手伝いをして貰ったりもしましたね。

鳴海 心の底から泣いたり笑ったり、というように感情を表に出すということは、心身の健康にとても良いと言われていますね。映画はまさに、そういった感情を引き出すことが出来る素晴らしいものだと思いますが、おすぎさん自身は、何かそういった経験はありますか?

おすぎ いい映画を観る度に、心地良い余韻が残るのは、健康にもきっといい影響があるでしょうね。私が劇的に、そういった体験をしたのは、デザイン学校に通っていた頃です。もう40年近く前になるかな。その日はとても体調が悪かったんです。たぶん風邪をひいていたんだと思うけど、頭は痛いわ、お腹は痛いわ、本当に不調だったんですね。それでも映画を観に行く私もどうかと思うんだけど(笑)、ルルーシュの「男と女」っていう映画を観たんです。とても感動的な映画だったんだけど、観終わったらすっかり治ってるんですよ。あんなに痛かった頭やお腹が全然痛くない。さっきまでのは何だったの?っていうくらい不思議な体験でしたね。あの事があってから、映画のもつチカラの大きさに気付かされて、いい映画を一人でも多くの人たちに教えてあげたい、っていう気持ちがどんどん大きくなっていったような気がします。
今、私は映画評論家というお仕事をさせて貰っていますけど、こういう体験があるから、私は「映画評論家」というより、いい映画を紹介する「劇場勧誘員」だと思っているんです。もちろん、映画は感性で観るものだと思っていますから、私が面白いと思ってすすめても「つまんない」って言う人もいるかもしれない。こればっかりは相性みたいなものもありますから。でも、たくさんの映画を観ることで、感性は確実に高まると思うんです。感性が高まると、心身の健康にもいいじゃないですか。
私は今、毎月36誌に映画のコメントを書いてるんですけど、そのために年間350本くらいの映画を観るんですね。多い時は1日5、6本観ます。それでも上映される全ての映画を観ることは出来ないんです。そして、そのうち「いいなあ。」って思うのは20本に1本くらい。こう考えると、映画がいくら好きな方でも、一生のうちに観られる映画っていうのは限界があるし、ましてや「良かった。」って思える映画との出会いはほんの僅かだと思うんです。
私のコメントがきっかけになって、その方の感性を豊かにすることが出来る「いい映画との出会い」につながってくれたら嬉しいですね。

鳴海 おすぎさんは、オードリー・ヘップバーンの大ファンだと伺いましたが、彼女は59歳の時にユニセフの親善大使に任命されていますね。その時に「まるで人生を終えるにあたっての特別ボーナスをもらったみたい。歳を重ねるって本当に素敵なことよ。」と言っていたそうですが、おすぎさんも一昨年、当時のオードリーと同じ年齢を迎えて「歳を重ねる」ということを、どのようにお感じですか?

おすぎ 私、本当にオードリーが大好きなんです。「ローマの休日」は、もう120回以上見たかしら。だからローマに行っても迷わないで済んだんです(笑)。オードリーが映画の中で通った所はすべて、“スペイン階段”や“真実の口”にも行きましたから。
実際こうして同じ歳を迎えてみると、確かに還暦というのはいろいろな意味での区切りだと思います。永(六輔)さんからも言われてたんですよ。「60歳はひとつの区切り。けじめをつける時期でもあるんだ。」って。ですから、20年以上続けてきた渋谷や札幌でのシネマトークも、今年で止めました。身体も、そして考え方も、今までの総点検をしてみる、という時期のように感じますね。

鳴海 干支が12年でひと回り。そして人間の寿命は120年と言われています。そう考えると、ちょうど半分の60年というのは、やはりおすぎさんが仰るように、身体も考え方も一つの大きな区切りの歳と言えるのかもしれませんね。
最初にお話したように、芸能人の方は相当ハードなスケジュールをこなしているにも関わらず、若くて元気な方が多いように思いますが、皆さんそれぞれ健康のための習慣をもっているのでしょうか?

おすぎ 歳をとっても、筋肉は鍛えてると衰えないそうですから、私は毎日筋力を鍛える運動をしています。特にここ5年くらいは、朝起きると胸まで足を上げてストレッチをするんです。朝はどんなに寒くても、必ず窓を開けて空気の入れ替えをしていますしね。やっぱり健康には、相当気をつけるようになったんじゃないかな。   
芸能界の仕事って、派手で華やかに見えるんですけど、結構地味な事の積み重ねだと思うんです。この仕事は先ず「好きであること」そして「健康であること」が、大切な条件です。だって、生放送もあるし、皆がスケジュールを調整しているわけだから、勝手に風邪もひけないでしょ(笑)。タモリさんは毎日生放送なわけだから、そういったプレッシャーも凄いと思いますよ。だから週末は一切仕事を入れないで、オフを思いっきり楽しむんですって。
健康のコツは皆それぞれだと思うけど、上手く息抜き出来る人はやっぱり元気だし、仕事も上手にこなしてますよね。
私の息抜き?だから、それは恋をすることよ(笑)。

鳴海 おすぎさんの健康のコツは「恋をすること」というのはよくわかりました(笑)。
おすぎさんは、本当に幅広くいろいろなことに興味をもって勉強をしていますが「学ぶ」ということも、若さを保つ秘訣なのでしょうね。淀川長治さんは「映画をもっと観なさい。オペラも、歌舞伎も、バレエも、落語も、奇術も、ありとあらゆるものを観なさい。」と仰っていますが、この言葉も「学ぶ」ことの大切さを教えてくれているように思います。

おすぎ 淀川さんは、私にとってお師匠さんみたいな存在でしたから、本当に多くのことを学ばせていただきました。今、鳴海さんが言ってくれた言葉も、何度も何度も教えてくれました。幅広く学ぼう、という意識をもつだけで、興味の対象が驚くほど広がります。ということは、感性を豊かにするために、それだけ多くのチャンスをいただける、ということでもあるんですね。そしてだんだんと、軸がぶれなくなってくる。自分なりの判断基準が出来てくるんです。そうすると、また「学ぶ」ということが一段と楽しくなるものなんですよね。
出会いがその人の人生を変える、と言いますけど、私の場合も淀川さんや永さんなど、素敵な人たちとの出会い、そして素敵な映画たちとの出会いがなければ、こうして楽しく仕事をさせていただくことが出来なかったと思います。
「学ぶ」ということ、「ほんの少しでも興味の対象を広げてみる」ということを意識するだけで、本当に素敵な世界があるんじゃないでしょうか。
私は映画を観て学ぶ、感じる、ということを通して、本当に素敵な体験をたくさん積ませてもらっているように思います。皆さんにも是非「映画を観る」「興味をもって学ぶ」ということをほんのちょっと心がけることで、心ときめく毎日を送っていただきたいですね。

鳴海 心ときめくような映画や、学び、そして人との出会いが、おすぎさんの健康のコツなんですね。
今日はたいへん貴重なお話を聴かせていただきました。どうもありがとうございました。

おすぎ・プロフィール

1945年1月生まれ
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門学校卒業後、デザイナーを経て歌舞伎座テレビ室制作部に勤務。
1976年、映画評論家としてラジオ「オールナイトニッポン」でデビュー。
テレビ、ラジオのレギュラー出演番組、新聞・雑誌での連載コラム、著書、多数。
いまニッポンでいちばん信頼されている“劇場勧誘員”。

著書に「おすぎです映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)などがある

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