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【vol.60】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」  第11回 中医学における体質傾向・後編


 
 中医学では、体質傾向を①脾虚②腎陽虚③血虚④陰虚⑤気滞⑥湿熱⑦血瘀⑧湿痰と云うように、大まかに8種類に分けて診断することにより、その人の体質をほぼ把握することができます。
 後編の今回は、⑤の気滞から⑧の湿痰までを解説します。

⑤気滞
 生命エネルギーである気の巡りが悪くなって滞っている状態です。気は、温性であり、軽いので、気の滞りにより心( ≒脳)まで気が上昇して、心が熱を帯び、イライラ等の興奮状態になりやすい体質になります。さらに気が滞ると、気力の低下や気分が重くなって抑鬱状態になります。気の全体量が不足していなくても、部分的に気が余ったところと不足陰虚 血虚の状態が同居しているため、元気なようで疲れやすい、顔は火照るが手足が冷たい、と云った症状が出現します。主症状は、胸部で気滞が起こると、胸が詰まる、胸苦しいなど、胃で気滞が起こると、胃の膨満感、食欲不振、吃逆(シャックリ)などを、腸で気滞が起こると、腹部膨満感などを、肝気鬱結すると、のぼせ、イライラ、怒りっぽい、顔面紅潮などを生じます。気滞のうち特に「下降すべき気機が上逆する」ことがあり、これを「気逆」といいます。「肺の気逆」では、咳嗽、呼吸困難、胸苦しさを、「胃の気逆」では、吃逆、悪心、嘔吐などが見られます。ストレスや心配事が気の巡りを悪くさせますので、心をリラックスさせたり、気分転換を図ったり、マイナス思考からプラス思考に転ずる思考転換をするようにして、気の巡りを図るようにします。
 治療には、香附子、枳殻、枳実、陳皮、川練子、木香など鎮静、止嘔の作用のある理気薬を用います。胸部気滞には、枳殻、薤白(らっきょう)、などを、胃の気滞には、香附子、半夏、陳皮、木香、柿蒂(柿のヘタ)などを、腸の気滞には、木香、香附子、厚朴などを、肝鬱気滞には、柴胡、鬱金などを、さらに肝血を補って、肝気を柔軟にする「柔肝」作用のある芍薬などを配合すると、より有効になります。肝気が上昇して、化火(熱を帯びる)した場合、竜胆草、山梔子、黄連、黄芩、決明子などの清熱瀉火薬を用います。
  代表方剤に、半夏厚朴湯、四逆散、大柴胡湯、抑肝散などを用います。

⑥湿熱
 溜まった津液が病的な熱と結び付くと、ドロドロとした状態になり、これを湿熱といいます。暑がりで汗っかきでがっちりした体格が特徴です。ドロドロとしたものは、熱を帯びた状態で1箇所に滞るため、痒みや腫れ、吹き出物、化膿などを引き起こします。アルコールの多飲でも生じます。症状は、食欲不振、悪心、嘔吐、口が粘る、口が苦い、口渇があるが水分は欲しくない、尿は濃く、少ないなどです。
 体質改善のためには、湿熱の元となる甘いものや辛いもの、油っこいものなどを控えることが重要です。
 治療には、黄連、黄芩、黄柏、山梔子、竜胆草などの清熱燥湿薬(熱を冷まして、乾かす)に、半夏、陳皮、厚朴などの理気薬や茯苓、猪苓、沢瀉、薏苡仁などの利湿薬を用います。

⑦血瘀
 血の巡りが悪く、滞った体質をいいます。血が滞っていると、皮膚の色が浅黒く艶がなくなってしまいます。血の巡りが悪いと、冷えが生じやすくなったり、肩凝りや頭痛が生じたり、月経痛が強くなったりします。血瘀を招く主な原因は、血の巡りの先導役の気が、不足か巡りが悪くなっているかが上げられます。したがって体質改善には、気への配慮が必要です。
 心臓、脳、肺、四肢などの血管の疾患、血液疾患、自己免疫疾患などは、その多くが血瘀と関連するとされ、血瘀に対する治療により治療成果が得られることがよくあります。
 治療には、血瘀を取り去る活血化瘀薬の桃仁、紅花、川芎、丹参、赤芍などに鎮痛効果も備えた延胡索、牛膝を用い、気滞血瘀の状況が多いので、活血化瘀薬によく理気薬を加えます。
 代表方剤には、桂枝茯苓丸、温経湯、桃紅四物湯などを用います。

⑧湿痰
 水太り体質で、津液が過剰になると、湿となり、さらに湿の粘度が増して動きが悪くなると、痰になります。この湿や痰が体内に溜まっている体質を湿痰といいます。水分が多い湿痰により体が冷やされますので、気温に左右され、寒がりの一方で暑がりの傾向があります。水太りの人にこのタイプが多く、色白で疲れやすい特徴があります。改善策には、水分の摂り過ぎに注意し、適度な運動が必要です。湿痰は、狭義には、肺の病証で、白色の多量の痰、胸苦しいなどの症状を伴います。
 治療には、半夏、陳皮、厚朴などの燥湿化痰薬に、脾にも働く健脾化湿作用のある、白朮、茯苓を用います。
 代表方剤には、二陳湯合平胃散などを用います。
 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

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