【vol.57】おすぎの名画のすゝめ Scene.15
こんにちは。おすぎです。
早いもので、今年も年末年始を迎える時期になりました。
10月に姉が亡くなったので、初めてピーコと二人で迎えるお正月です。
姉は、3歳の時に発症した「脊椎カリエス」という病気が原因で、ずっと身体障害者として生きてきました。それでも、私が小学校の頃から、ハンカチーフの縁を縫う内職で、ずっと家計を支えてくれていて、20代の時には職業訓練所で正式に縫製を習得し、ブティックの売り子もしていたの。私とピーコが芸能界に入ってからは、友人の吉行和子らにも衣装を作っていました。
私とピーコの仕事が落ち着いてきたここ20年くらいは、横浜の家に暮らして、私も月に1回は顔を出したり、出先から美味しそうなものを送ったりして、大晦日には、おせちを買ってピーコと3人で年越しをする、というのが恒例だったんだけど、身近な人が一人いなくなるというのは、生活も大きく変わるものなんだな、って改めて感じている今日この頃なのであります。
「黒いオルフェ」
1959年公開 フランス・ブラジル・イタリア合作映画 監督:マルセル・カミュ
ギリシャ神話のオルペウス(オルフェ)とエウリュディケ(ユーリディス)の物語を、マルセル・カミュが、ブラジル・リオデジャネイロのカーニバルを舞台にして作った映画。この映画を観て、遠く離れたブラジルという国の文化を知った人も多いんじゃないかしら。
一人の娘(ユーリディス)が、田舎からカーニバルを見学するためにリオへやってきます。そこで出会ったのが、彼女を乗せた電車の運転手オルフェ。歌とギターが上手で、子供や女性からも大人気の彼とユーリディスは、ギリシャ神話のように惹かれあっていくのですが、そこへ彼女を追う「謎の男」や、オルフェの恋人である嫉妬深いミラが複雑に絡み合ってきて・・・。
とても悲劇的な恋物語なんだけど、リオのカーニバルの陽気さと絡めあうことで、全体的に悲劇性が薄められている感じになっています。
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。
「赤い砂漠」
1964年公開 イタリア・フランス合作映画 監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
工場技師の夫と幼い息子がいるジュリアーナ。交通事故のショックからノイローゼになって、精神的に不安定な状態が続いている彼女の心の中を、周りの人たちとの関係性と共に、映像で展開していきます。
あえて、感情とか人間性っていうのを、かなり排除している感じだから、物語だけを追いかけていると、なんだかよくわからなくなっちゃうんだけど、カルロ・ディ・パルマの映像と、ジョヴァンニ・フスコの音楽は、ぜひ味わっていただきたい!!
好き嫌いが分かれる作品かもしれないけど、こういうのも楽しめるようになると映画がもっと面白くなります。
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞受賞作品。
「木靴の樹」
1978年公開 イタリア映画 監督:エルマンノ・オルミ
貧しさの中に暮らすイタリアの農家の生活を描いた作品。
子供が学校へ通う「靴」を作るために、地主が伐採を禁じていた木を伐りとってしまう農夫。一家はその後、さまざまな困難に直面することになるんだけど、厳しい現実の中にも、どこか温かいものを感じさせてくれます。
子供の目からみている感じは、とてもわかりやすくて、本物の農夫さんとか、素人さんの出演が多いところからも素朴さが伝わってきます。
泣いた後に、清々しい気持ちになれる素晴らしい作品です。
カンヌ国際映画祭グランプリ、他14の賞を受賞しています。
おすすめの新着映画 「ストーン・ウォール」
監督・製作:ローランド・エメリッヒ
原題:Stonewall
配給:アット・エンタテインメント
12/24(土)より、新宿シネマカリテほか全国ロードショー
1960年代、アメリカでは“同性愛”は、“精神病”扱いされ、同性愛者は差別されていました。
1966年、ニューヨークのクリストファー・ストリートにある“ストーンウォール・イン”というゲイの溜まり場で、警官達を相手にゲイ達の暴動が勃発します。これはのちに、同性愛者達の権利運動“ストーンウォールの反乱”と位置付けされました。
映画「ストーンウォール」は、この反乱が起こる前に、故郷のインディアナ州を追われるように出て、コロンビア大学入学のためにニューヨークに来た若者ダニー(ジェミー・アーヴァイン)が、グリニッジ・ビレッジのクリストファー・ストリートを訪れ、この街に暮らすレイ(ジョニー・ボーシャン)と会い、暴動に巻き込まれていく様を描いていきます。
監督・製作は『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』などのSF大作でもお馴染みのローランド・エメリッヒ。
興味のある方には必見の作品です!!
プロフィール・映画評論家 おすぎ
1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。