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【vol.46】おすぎの名画のすゝめ Scene.04


 
 こんにちは。おすぎです。
「たまには映画評論家らしいことをしなくては・・・」という想いから(笑)、個人が経営する地方の映画館で時々トークショーをおこなっています。
 三重県・伊勢にもそんな映画館があって、その時に必ず行くのが「お伊勢参り」。
 私もたまには神社の神聖な「気」を浴びて、身も心も清らかになりたい!と切に願っているのです(笑)・・・。
 伊勢ではいつも、内宮まで車で四十分くらいかかる「瀧原宮」という別宮から御参りをします。
倭姫命が、最初に天照御大神をこの地にまつって、その後現在の内宮に移ったという由緒あるこのお宮。
 近年パワースポット巡りがブームになっているようだけど、こういう場所に来ると「気の良い場所って本当にあるんだな」って、しみじみと思うのよねぇ。
 今年は、伊勢神宮が二十年に一度、出雲大社も六十年に一度という記念すべき「式年遷宮」の年。
皆さんも、日頃の感謝の気持ちを込めてぜひお参りください。
 今回もオススメの作品を紹介します。

「モロッコ」

1930年公開 アメリカ映画 監督:ジョセフ・フォン・スタンバーグ
 
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 トーキー映画※として、初めて日本語字幕が付けられた作品です。
 この作品が配給された1930年当時の日本は、まだサイレント映画が主流で活動弁士と呼ばれる人たちが作品の解説をしていたのね。そこへ初めて「字幕」というスタイルの作品が現れたものだから「職を失ってしまう!」と思った弁士たちが、大勢配給元へ抗議に訪れたと言われています。
 ゲイリー・クーパー演じるモロッコ駐屯の外国人部隊員トム・ブラウンは、ひと言で言うと「女ったらし」。そのお相手の中には上官の奥様もいて、事がばれてしまった彼は懲罰のように戦場の最前線に送られてしまうわけ。そこへ心配そうに駆けつけてくるのが、マレーネ・ディートリッヒ演じるアミー・ジョリー。モロッコの酒場で歌っている時に、彼と出会ってお互い恋に落ちてしまったのね。
 女ったらしのブラウンも、彼女には特別な感情を持ってしまうんだけど、彼女は既に大金持ちと婚約が成立してしまっており・・・。
 彼女が最終的に選んだ答えは、名シーンとして今でも語り継がれています。
 モノクロだけど、マレーネ・ディートリッヒの美しさを完璧に引き出しているのは、さすが名監督ね。
 昔の名作はやっぱり人間を描くのが上手い!と感じさせてくれる素晴らしい作品です。
※映像と音声が一緒になった映画。

「ショウほど素敵な商売はない」

1954年公開 アメリカ映画 監督:ウォルター・ラング
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 ミュージカル『アニーよ銃をとれ』のナンバーの一つで、1930年代のアメリカが舞台になっています。
 テレンス(ダン・デイリー)とモリー(エセル・マーマン)夫婦、そして三人の子供たちは、ボードビルの舞台で人気を博している芸能一家。ここへ次男のティム(ドナルド・オコナー)が恋をしたヴィッキー(マリリン・モンロー)も加わり、さまざまなドラマが展開していきます。
 芸人として手塩にかけて育ててきた長男スティーブ(ジョニー・レイ)から、突然「神父になりたい」と告白されたり、恋人にふられてやけになり事故を起こした挙げ句に失踪してしまった次男を探しまわったり、といった紆余曲折を経ながら、家族の絆がしっかりと一つになっていくストーリーは感動もの。
 ブロードウェイの女王と呼ばれたエセル・マーマンや、『雨に唄えば』のドナルド・オコナー、『南太平洋』のミッツィー・ゲイナーといった超豪華なミュージカルスターの魅力も満載で、今じゃもうここまでの上質なミュージカルを作るのは難しいんじゃないかしら。
 歌が二十四曲も入っていて、まさに歌、歌、歌!の作品です。

「スタンド・バイ・ミー」

1986年公開 アメリカ映画 監督:ロブ・ライナー
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 スティーブン・キングの短編小説が原作になっています。
 同名の主題歌もリバイバルで大ヒットしたから、覚えている方も多いでしょう。
 時代は1950年代、アメリカ・オレゴン州の小さな田舎町に住む四人の少年たちが、行方不明になっている少年の死体を探しに、三十キロ離れた森の奥へ冒険に出かける物語です。
 それぞれ家庭の事情を抱えた少年たちが、犬に追いかけられたり、列車にひかれそうになったり、ヒルに吸い付かれたり、・・・といろいろな体験をするのね。
 町を出て行く時は子供だった少年たちが、たった一泊二日の冒険から戻ってきた時に感じる「町の小ささ」は、成長の様子を見事に表現していると思います。
 木の上に建てた秘密の小屋に集まって計画を練ったり、森の中を歩きながら自然の驚異に触れたりして共に同じ時を過ごす中で連帯感を育んでいく・・・。
 少年時代の冒険心や、思春期特有の感情を想い出させてくれる名作ね。
(おかまにも「少年時代」はあったのよ(笑)!)

おすすめの新着映画「17歳のエンディングノート」

c 2012 Blueprint Pictures (Now) Limited, BBC and The British Film Institute. All Rights Reserved.
4/27(土)より、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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 余命宣告をされた17歳の少女が、残された9ヶ月間をどのように生きたのか。
 勤め先を辞めて必死に治療法を探している父親、あまりのショックに看病も出来ない母親。「死んだら僕にとり憑くの?」と本気で怯えている弟・・・。そんな家族に「なんであたしより弱いの!」とキレながらも、必死で自分の生きる意味を探し続ける主人公のテッサ。
 親友のゾーイと一緒に、これからの9ヶ月間で経験することを「TO DO リスト」としてまとめ、それらを実行していく中で気付いた本当に大切なものとは・・・。
 せつなさと愛しさが美しく描写された家族愛と恋の物語です。

<おすぎのちょっとひと言>
 『アイ・アム・サム』(2001年)や『宇宙戦争』(2005年)の少女役で素晴らしい演技を魅せてくれたダコタ・ファニングが、本作品でも余命幾ばくもない17歳の主人公を見事に演じきっています。恋人役には『戦火の馬』(2012年)で主演デビューを飾ったジェレミー・アーヴァイン。
 若い2人が死への絶望感と愛の歓びの狭間でもがきながらも、必死に生きる意味を見つけ出そうとする姿は感動ものです!!

プロフィール・映画評論家 おすぎ


1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。

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