【vol.45】おすぎの名画のすゝめ Scene.03
こんにちは、おすぎです。
紅葉がきれいな時期になりましたが、皆さんはもうご覧になりましたか?
私がここ数年でいちばんキレイだなと思ったのは、3年前に観た蔵王の紅葉です。
仲間たちと「蔵王のおかま」(山頂にある火口湖の「お釜」のことよ!)を観に行こうということになって、車でエコーラインを走って出かけたのです。
目的の「おかま」まで続く観光客の列に加わって、しっかりとお参りした帰り道。それはそれは見事な紅葉に出くわしたのでした。
道路に沿って茂った樹が道に投げ出している枝には、紅や黄色に染まった葉が見事なコントラストをなしていて、まるでトンネルのよう!!
カーブを曲がるたび、吸い込まれそうになるほどの紅葉に「スゴイ!スゴイ!」と気分まで紅葉、いや、高揚したのでした・・・。
それにしても、あんなに素晴らしい紅葉は初めての経験。やっぱり、「おかま」にお参りするといいことがあるのねぇ(笑)。そう言えば、一緒に行った仲間たちは「おかまのご利益」とか言ってたけど、どっちの意味だったのかしら(笑)。
さて、文化の秋、映画もしっかりと楽しんでください!!
「ミクロの決死圏」
1966年公開 アメリカ映画 監督:リチャード・フライシャー
1966年にこの映画を観た時は心の底から感動しました。
アメリカに来た高名な科学者が敵側からの襲撃を受けて倒れてしまい、その時に負った脳の欠陥を治療するために、潜航艇に乗ったままミクロに縮小された医療チームが科学者の血液から体内に注入されます。そこにはいろいろな困難が待ち受けていますが、それらを回避しながら脳まで辿り着き、無事に任務を果たすことが出来るのか・・・。1時間で元の大きさに戻ってしまう、というタイムリミットとの戦いも見どころの傑作SFであります。
人間の身体をひとつの宇宙と考えて、そこにスリルとサスペンスを上手く盛り込んでの大冒険。その美術力といい、発想といい、もう脱帽ものです。
こんなによく出来た映画を観たことのない人は不幸よねぇ。
「ベン・ハー」でメッサラ役を演じたスティーブン・ボイドも格好いいし、肉体派の女優ラクエル・ウェルチも好演。できれば、スクリーンで観て欲しい作品です。
「アラビアのロレンス」
デヴィット・リーン監督の最高傑作であります。
実在したイギリスの陸軍将校ロレンスがオートバイ事故を起こし、その葬儀シーンから映画が始まるというなかなか衝撃的な冒頭です。
新聞記者が、葬儀の参列者に「故人はいったいどんな人物だったのか」と訊くと、ひとりは「偉大な英雄だ」と答え、またあるひとりは「狂人だ・・・」と答えます。
そんな主人公ロレンスが、当時オスマン帝国に支配されていたアラブの独立闘争に関わっていく歴史映画で、70ミリという大画面を巧みに使った撮影は、この作品の最も讃すべきところでしょう。
休憩を入れて4時間を越す大作なのに、まったく飽きさせることがないどころか、充分に満足出来る作品。ピーター・オトゥールの演技も素晴らしいし、広大な砂漠や地平線の彼方にゆらめく蜃気楼などのスケールもたっぷりと堪能して欲しい名作です。
「鳥」
1963年公開 アメリカ映画 監督:アルフレッド・ヒッチコック
アルフレッド・ヒッチコックには”これぞ “という作品は数ほどあります。「サイコ」であり、「裏窓」、「北北東に進路を取れ」しかりであります。が、私にとって”怖い “と心から思わせてくれるのが「鳥」です。
この映画は何回観ても肌が粟立ち、身の毛が逆立ちます。そう、その名のとおり鳥が人間を襲う映画なのです。
オープニングも、鳥を売る店から始まる、というこの皮肉・・・。そこで鳥を買ったティッピ・ヘドレンというブロンドの女性が、訪ねた弁護士の家でたいへんな目に逢っていくのです・・・。
だんだんと様子がおかしくなる鳥たち、そしてついに鳥たちの襲撃が始まります!音楽がまったく使われていないのに、この怖さ。そして、ラストのシーンのもの凄いこと・・・。
ぎっしりの鳥の群れの中を脱出する1台の車・・・。寒い時期だけど、もっと寒くなってください(笑)。
おすすめの新着映画「ドリームハウス」
マイ・レフトフット」や「父の祈りを」などの名作を世に送り出した巨匠ジム・シェリダン監督のサイコスリラーです。
幼い姉妹が何かのキッカケで窓から飛び降りる・・・というシーンから始まるこの映画。家族との穏やかな暮らしを夢見て、念願のニューヨーク郊外にマイホームを購入した主人公のウィル(ダニエル・クレイグ)が、新しい生活を始めようとしたその矢先・・・。娘が幽霊を見たり、謎の男が家の中を覗いていたり、と次から次へ奇怪な出来事が起こります。
ウィルが体験しているのは本当のことなのか・・・。先の読めない展開にあなたは耐えられるか・・・。
<おすぎのちょっとひと言>
3度のアカデミー賞監督賞ノミネートを誇る、あのジム・シェリダンがスリラー映画ですかぁ?と思われた方も多いのでは。いやいや、これはあのシェリダンだからこそ出来た驚愕の作品なのです。
恐怖の中に見え隠れする「切なさ」は、スリラーの新境地かもしれない・・・。そう思わせてくれる、この秋オススメの映画です。
プロフィール・映画評論家 おすぎ
1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。