【vol.87】こころとからだの健幸タイム|ゲスト 志賀 一雅さん 後編
約半世紀にわたって脳波の研究を続け、米国HHS(保険社会福祉省)大統領諮問機関認定の「GOLD AWARD(金賞)」を受賞するなど「アルファ波」研究の第一人者でもある志賀一雅さんに、脳波と健幸、地球の周波数との関係などについて伺いました。
経営の神様の不眠を改善する
鳴海周平(以下、鳴海)
息を吸いながら「よかった」息を吐きながら「ありがとう」という、呼吸と言葉のセットを繰り返すことによって条件反射が形成され、自然に「明るい脳」体質になることがわかりました。(前号の前編参照)
この呼吸法は、志賀先生が脳波の研究をされていた松下グループの相談役(当時)かの松下幸之助さんの不眠症にも効果があったそうですね。
志賀一雅さん(以下、志賀)
はい、もう40年ほど前のことになります。
当時、すでに松下電器産業(現パナソニック)の相談役となっていた松下幸之助氏でしたが、毎晩のようにグループの事業部長らが幸之助氏のもとへやって来ては、経営上のたいせつな相談をされていました。会長から退いたとはいえ、重要な裁断は相談役がしていたようです。
私が訪ねたときも会議の最中のようでしたが、ときどき幸之助氏が大きな声で事業部長らを叱りつけている声が聞こえてきました。それも、一度や二度じゃない。お世話役の方によると、これがほぼ毎日だと言うんですね。
そもそも、その日に私が呼ばれたのは、幸之助氏の不眠を改善するためだったのですが、お世話役の方の話を聴いて、その原因がなんとなくわかったように思いました。毎日のように事業部長らを叱りつけ、カッカしたままでは眠れなくなって当然でしょう。
脳波を測定したところ、やはり安眠に必要なスローアルファ波は検出されず、ベータ波ばかりでした。そこで、提案させてもらったのが「よかった・ありがとう」呼吸法です。お世話役の方を通じて、次のようにお伝えしました。
「相談役からご覧になれば、事業部長さんのやり方がよくないとか、甘いとか、感じられるかもしれません。その場でお怒りになるのも当然でしょう。
ただ、寝る前だけは喜びと感謝の氣持ちが必須なのです。
相談役のところにみなさんがお伺いに来るのは、松下電氣グループが順調に成長し、次々に新事業を展開しているからこそ。そのことを、寝る前だけでも『よかった』と喜び、『ありがとう』と感謝されてはいかがでしょう。
息を吸いながら『よかった』と思い、吐きながら『ありがとう』と思うのです。
これだけを伝えてください」
それからひと月ほど経ったころ、本社から「あなたが来てから、相談役がよく眠れるようになったんです。いったい何をしたのですか?」と、電話がかかってきました。
寝る前に「よかった・ありがとう」の呼吸をしてもらっただけなのですが(笑)。
鳴海 経営の神様にも、効果覿面だったというわけですね。
安眠に必要なスローアルファ波は「明るい脳」を実現するためにも、とても重要な脳波だったかと思います。起きているときと眠りの境目の脳波でもあるスローアルファ波には、やはり特別な「なにか」があるのでしょうか?
志賀 まだ、はっきりしたことはわかっていないのですが、スローアルファ波の中間値ともいえる「7.8Hz」には「なにか」があることは確かだと思います。
というのも、特殊な能力をお持ちの方の脳波を測定すると、10Hzのミッドアルファ波に加えて「7.8Hz」のスローアルファ波が強く観察される、という共通点があるのです。
「7.8Hz」は地球を取り囲む電離層の周波数?
志賀
7.8Hzに着目したのは、ここ10年ほどのことなのですが、そのきっかけは「指笛を吹くと、鳥がたくさん寄ってくる」というアメリカ在住の指笛の達人メミグレースさんや、その歌声を聴いていると自然に涙が出てくるという柏田ほづみさんとの出会いです。柏田さんが歌うと、警戒心が強いはずの親子連れのクジラも寄ってきます。このお二人の脳波の特徴がまさに7.8Hzでした。
その後も、能の謡の師匠である井上和幸氏が謡うと、末期ガンの症状が消えたり改善されたりする例があるというので、謡っているときの脳波を測定したところ、やはり7.8Hzが強く出ていましたし、水も飲まず、食事も摂らないという不食の弁護士・秋山佳胤さんの脳波もまた7.8Hzのあらわれ方が特徴的でした。
7.8Hzは、脳の奥まったところに位置する「脳幹」の周波数です。脳幹は、爬虫類の脳ともいわれる、より原始的で本能的、生理的なこと、つまり、生命維持にかかわることをつかさどっているので、なにか根源的なところで神経回路の共鳴などが起こっているとも考えられます。
鳴海 7.8Hzが強く出ているときは、周囲にいる人々にも、その周波数が共鳴されるそうですね。
僕のヒーリングの師匠は「相手と一体になってしまえるような送念ができたらすばらしい」と言っていましたが、ヒーリングなどの癒しも「癒しの周波数」が共鳴された結果に起こる現象なのかもしれませんね。
志賀 ヒーリングのときも、おそらく7.8Hzの周波数で共鳴が起こっていると思います。
周波数と位相がシンクロすることをコヒーレントといって、その度合いが強ければ作用力も強く出ることがわかっています。
たとえば、タイの司祭であるアチャンという人が、洞窟内でマントラを唱えると、マイクロビッグバンが起こり、空中から光とともに、きれいな色をした水晶のようなものなど(神聖物)があらわれます。アチャンもまたマントラを唱えることで7.8Hzが強く、長く出るという特殊能力者で、そこへ洞窟内の瞑想に参加している人たちの周波数と場の状態が、なんらかの形で電氣的な相互作用を起こしているのではないかと思われます。
こうした測定を重ねるほどに「不思議な現象」といわれるものが、あまりにも「7.8Hz」でつながっていることに氣づき、興味を持ったというわけです。
鳴海 昔から聖者と呼ばれる人たちが起こしていたという物質化現象にも、7.8Hzが関係していた可能性がありますね。
7.8Hzは、目にみえない世界と、目にみえる世界をつなぐ周波数でもある、と考えてもよさそうです。
志賀 じつは、地球を取り巻く電離層の周波数もまた7.8Hzのプラズマ振動を起こしていることがわかっています。電離層とはプラスイオンとマイナスイオンが集まっている層のことで、空氣の層と真空の境界の層でもあります。つまり、異なる世界をつなぐ層です。
太陽から来る荷電粒子が地球の磁場で曲げられ、強いエネルギーの宇宙線(ガンマ線)によって大氣がイオン化されてプラズマ振動を起こし、その結果、層ができるのではないかというのがドイツの物理学者シューマンの仮説です。さらに、シューマンはプラズマ振動を、光とおなじ速度(1秒間に地球を7周半)、細い計算では7.83Hzの定在波、14.1Hz、20.3Hzのプラズマ振動が生じている、という仮説も立てました。そして、この仮説は後に人工衛星の打ち上げや、アポロ4号の計測で証明され、シューマン共振(共鳴)と呼ばれることになります。
鳴海 ということは、地球に暮らす存在はすべて、7.8Hzの周波数に囲まれているということですか?
志賀 はい、そういうことになると思います。シューマン共振は、まだ完全に解明されていないので今後の研究によるところもありますが、このプラズマ振動は電磁波の形で地表に届き、地球上のすべての生命体はそのバイブレーションの下で誕生したことになります。
系統発生的にも、個体発生的にも、7.8Hzを中心とした「揺らぎ」のなかで進化、成長してきたことは間違いないでしょう。
鳴海 7.8Hzを中心とした「揺らぎ」のなかで進化、成長してきたのであれば、細胞などのベースも、おなじ周波数ということになるでしょうから、志賀先生が仰った「7.8Hzは、より原始的で本能的、生理的な爬虫類の脳(脳幹)の周波数」ということにもつながりますね。
7.8Hzで、いつもご機嫌に暮らす方法
志賀 鳴海さんとも親交が深い医学博士の帯津良一先生が監訳された『タオ人間医学』(産学舎)という本に、宇宙エネルギーと脳波の関係を示唆するような図表が掲載されています。
シューマンの仮説を用いると、我々の脳は、電離層という地球の外側にある層の振動(7.8Hz)に影響を受けていると考えられるので、逆にいうと、脳波が7.8Hzになることで電離層のエネルギーにもアクセスできるのではないかということになります。
観たいテレビにチャンネルを合わせるようなイメージですね。地球上の存在が7.8Hzを中心とした「揺らぎ」のなかで進化、成長してきたことを考えると、もしかしたらバンアレン帯の7.8Hzのプラズマ振動は、原始以来のすべてが記憶されている情報のクラウドであり、アカシックレコードであるといえるかもしれません。
私自身、半導体の仕事をしているときに、やたらとアイディアが出て、特許もずいぶん取ることができたのですが、そのアイディアが出てくるタイミングというのが、寝床や、お風呂のなか、遠くの景色を眺めているときなどでした。こうした、なんとなくぼーっとしているリラックスした状態のときは、まさに7.8Hzの脳波で情報のクラウドにつながっていたのではないかと思います。
鳴海 帯津良一先生と共著で出版させていただいた『1分間健康法』(ワニ・プラス)という本のなかで紹介している「空をぼーっと見上げる健幸法」(ラクな姿勢で、ただぼーっと空を眺める健幸法)で心身がとても爽快になるのは、7.8Hzの脳波になっているからなのかもしれませんね。
志賀 空をぼーっと見上げる。まさに、7.8Hzとチューニングしている状態といえるでしょう。
私が長年伝えてきたことは「喜びと感謝の反射を形成すると、脳や全身の細胞のパフォーマンスがよくなる」つまり「いつもご機嫌に暮らすことができる」ということで、そのキーとなるのが7.8Hzだったわけです。
不安や不満、怒り、ストレスなどを感じている「高い周波数の脳波」から、氣持ちが落ちついてパフォーマンスが上がる「(7.8Hzのような)低い周波数の脳波」へ切り替えるには瞑想」も効果的であることがわかっていますが、いろいろ試した結果、息を吸いながら「よかった」息を吐きながら「ありがとう」という、呼吸と言葉のセットを繰り返すことによって形成される条件反射による瞑想が、もっとも効果がありました。
鳴海 寝る前に寝床のなかで、息を吸いながら「よかった」、吐きながら「ありがとう」と思うだけで、地球を囲んでいる7.8Hzの周波数と同調できるというのは本当に画期的な健幸法だと思います。
このたびは志賀先生とのご縁にあらためて、よかった!と思いました。ありがとうございました。
志賀 こちらこそ、よかった!ありがとうございます。
プロフィール
志賀 一雅さん
1937年東京生まれ。脳力開発研究所相談役・工学博士
「アルファ波」研究の第一人者。
電氣通信大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)に
入社し東京大学物性研究所で半導体の研究に従事。
1976年から松下技研主任研究員と東京大学工学部計数工学科研究員を兼務し
「脳波」の研究を開始。「アルファ波」の解明をおこなう。
2011年に脳力開発の発展に貢献したことにより米国HHS(保険社会福祉省)
大統領諮問機関認定の「GOLD AWARD(金賞)」を受賞。
著書に『奇跡の《地球共鳴波動7.8Hz》のすべて』(ヒカルランド)
『聞くだけで脳の疲れがとれるCDブック』(ダイヤモンド社)ほか多数。