Vol.259 11月 人生後半の毎日は値千金
人生後半の毎日は値千金
このコーナーでも何度か紹介したことがある『養生訓』。江戸時代の儒学者・貝原益軒さんが書いたこの本は、なんと300年も読み継がれている超ロングセラーです。
健幸・長寿を自ら体現した益軒さんの「健幸のコツ」を、あらためて学んでみたいと思います。
年齢と幸福度は比例している
「人生を楽しまずに過ごすのはもったいない。とくに人生の後半は、1日が千金にも値するのだから」(巻第八)
益軒さんが一貫して述べているのは「人生は楽しいもの」ということ。
とくに人生の後半は「毎日が値千金」として、楽しまずに過ごすのはもったいない!といっています。
では、なぜ人生の後半が、そんなに楽しくなるのか?
その理由については、次のように書かれています。
「長生きをすると、そのぶん楽しみや益が多くなる。それまで知らなかったことを知ることができ、できなかったことができるようになる。学問を深めて、知識を増やす喜びもまた長生きすることで得られる」
(巻第一)
なにごとにおいても、点と点が線になるタイミング、線がつながって面になるタイミングがあります。
年齢を重ねるごとに増えていくさまざまな経験や知識は、どこかで「線」や「面」になって、本人も氣づかないうちに新しい可能性を広げてくれる。
益軒さんは自分自身の経験からも、そう考えていたのではないでしょうか。
そして、こうしたさまざまな経験や知識は、内面(感性)にも大きな変化をおよぼすことがわかっています。
慶應義塾大学大学院の前野隆司教授によると、年齢と幸福度の関係を示すデータから「人は40~50代から幸福感がアップする」という傾向があるそうです。
そして、90歳以上になると「幸福度が高まると同時に、自己中心性が減って、寛容性が高まる傾向がある」とも述べています。(『サイエンスとスピリチュアルのあいだ』ワニ・プラス)
人生の後半になると、自然に幸福感が増して、こころも寛くなるんですね。
「世のなかの様子や他人のおこないを嘆いたり、怒ったりせず、そういうものだと受け入れて、いつも楽天的に日々をおくればよい」(巻第八)
『養生訓』に書かれたこうした心境へ自然に近づいていくことも、人生が後半になるほど楽しくなってくる理由なのかもしれません。
年齢を重ねるごとに増えていく経験や知識、それにともなって豊かになる感性などが、人生の後半を「値千金の毎日」にしてくれるのだと思います。
〈『養生訓』関連箇所(現代語訳)〉
人生を楽しまずに過ごすのはもったいない。とくに人生の後半は、1日が千金にも値するのだから(巻第八)
人生も後半になったら、1日を10日と考えて毎日楽しく過ごすこと。世のなかの様子や他人のおこないを嘆いたり、怒ったりせず、そういうものだと受け入れて、いつも楽天的に日々をおくればよい。たとえ境遇に恵まれていなくても、あの世へ旅立つその瞬間まで毎日楽しく暮らすことである(巻第八)
参考文献
『養生訓』 貝原益軒
『サイエンスとスピリチュアルのあいだ』天外伺朗・前野隆司 著(ワニ・プラス)
『1分間養生訓』帯津良一・鳴海周平 著(ワニ・プラス)