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【vol.33】辻和之先生の健康コーナー|CKD(慢性腎臓病)について《その1》


 最近、CKDがメタボリックシンドロームのように話題になっています。実はCKDを患っている人に心筋梗塞、脳梗塞の発症が多く、CKDはメタボリックシンドロームのように、動脈硬化の危険因子であることがわかってきたからです。

 さらに世界的に、末期腎不全による透析患者が増加しており、医療経済上も大きな問題であります。特に糖尿病性腎症からの末期腎不全が世界的に増加しています。したがってCKD対策は、心血管性疾患といった動脈硬化性疾患と末期腎不全を予防する観点から、急務の課題となってきています。

さて腎臓は、どの様な臓器でしょうか?

◆位置/腎臓の位置は、図㈰のように腰のやや上にあります。

◆形と大きさ/そら豆のような形で、左右に1対あります。 大人ではにぎり拳ぐらいの大きさで、重さは150g前後です。

◆腎臓の機能と働き/腎臓は、血液を濾過する働きをしています。心臓から送り出された血液は 4〜5分に一度の割合で腎臓を通過します。
 腎臓に入った動脈は細かく枝分かれし、細い輸入細動脈から、さらに細い血管の小さな糸の塊(糸球体)を形作ってから、輸出細動脈へ移行して行きます。この糸球体は片方の腎臓に100万個。両方の腎臓を合わせると200万個もあり、ここで血液を濾過しています。
 糸球体を通過したものが原尿で一日に約160〜170リットルもあり、ほぼドラム缶一本分にもなります。この原尿の中には通過できなかった血液中の大きな成分としての赤血球や蛋白質以外に水分・ブドウ糖・アミノ酸・ナトリウム・カリウム・ビタミン・その他の電解質などが含まれています。
 そこでそれぞれの糸球体を包む袋に濾過された原尿は図㈪のように尿細管と呼ばれる細く長い管を通って腎盂に集まって来る間に体の調子に合わせて成分を選り分け、必要な水分や栄養分・電解質など実に99%以上を再び血液に吸収し老廃物や有害物質・余分な水分を尿として体外へ排泄させています。

1.尿の作られ方
 図㈪のように血液が輸入細動脈から糸球体に到達すると、一定の圧力(50Hg)で血液が濾過されて、原尿が作られます。原尿が、近位尿細管、ヘンレ系蹄、遠位尿細管、集合管を通り、再吸収や分泌作用により、必要な成分は血液の中に戻り、不要な成分は尿に排泄されます。

 このようにして尿を作る過程によって体内環境を一定のバランスに保つことが出来ます。尿細管はナトリウム、カリウム、カルシウム、アミノ酸、リン、重炭酸イオンなどのうち体に必要なものを取り込みます。また、不要なものを尿中へ分泌して排泄しています。これにより、体内のイオンバランスを一定に保ち、血液を弱アルカリ性に保っています。通常、腎臓では絶えず血液がろ過されて一日に約150リットルもの原尿が作られていますが、尿細管で水分が再吸収されて1・5リットルほどの尿になります。腎臓は尿を作るほかに以下のような働きもします。

2.血圧を調整する
 腎臓での濾過機能が円滑に働くには、血液の流れが一定に保たれている必要があります。腎臓では血流の流れが悪くなるとそれを感知し、レニンという酵素が分泌されます。レニンが血液中のたんぱく質と反応して生成されるアンジオテンシン㈼が、血管を収縮させて血圧を上昇させます。腎臓はレニンの分泌量を増減させて血圧を調整します。

3.血液をつくる働きを助ける
 腎臓はエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。エリスロポエチンは骨髄の造血幹細胞に働いて、赤血球の数を調整します。腎臓の機能が低下してエリスロポエチンの分泌が少なくなると赤血球も減少するため、貧血症状があらわれます。

4.ビタミンDの活性化
 ビタミンDは肝臓で蓄積され、腎臓に移ると活性型となり、さまざまな働きをします。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進して、カルシウムの利用を高める作用があります。したがって、腎臓の機能が低下するとカルシウムの吸収が悪くなり、くる病や骨軟化症、骨粗鬆症の原因になります。また、低カルシウム血症になると、筋肉痛、しびれ感、全身痙攣発作などが起こります。

◆慢性腎臓病CKD
Chronic kidney diseaseの定義/
糸球体濾過率(GFR)は、血液の糸球体の濾過状態を示す指標で90以上が正常とみなしていますが、GFRの低下のいかんを問わず、尿蛋白陽性などの腎疾患の存在を示す所見が、3ヶ月以上継続する場合。もしくは腎障害の有無を問わずGFRが60
ml分/1・73未満が3ヶ月以上継続する疾患をCKDといいます。
 GFRを正確に計るには、イヌリンの注射をして2時間かけて、採血と採尿をする必要があります。日本腎臓病学会では、この方法は、大変煩雑であることから、手軽にGFRを計算する方法をイヌリンクリアランスより求めたGFRを実測したデータを基に1.血清クレアチニン、2.年齢、3.性別から日本人の推算したGFR(eGFR)を作成しました。
 男性のGFR(ml/分/1・73)=194×175×Cre|1・094×年齢|0・287。女性の場合は×0・739です。

◆CKDのステージ分類/GFRは、値が低くなるに従い、血液の濾過が次第にうまくいっていない状態を示します。すなわちステージ1からステージ5と順次重症化し、ステージ3から塩分制限や蛋白制限を始めなければなりませんし、ステージ5では、腎透析を始めなければなりません。
 ここでステージ分類のステージ1以前の段階から注意を払うべきグループとして、ハイリスク群が取り上げられています。

◆ハイリスク群/『高齢、CKDの家族歴、蛋白尿などの尿異常や腎機能異常および腎形態異常、脂質異常症、高尿酸血症、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)の常用、急性腎不全の既往、高血圧、耐糖能異常や糖尿病、肥満およびメタボリックシンドローム、膠原病、感染症、尿路結石など』です。
したがってCKDハイリスク群では、CKD発症以前から脂質異常症、高血圧、糖尿病などの治療や生活習慣の改善を行い、CKD発症予防に努めることが重要です。

 次回は「CKDの成因と動脈硬化」についてお話しします。


プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

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