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【vol.34】辻和之先生の健康コーナー|CKD(慢性腎臓病)について《その2》


 今回は前回に引き続き最近話題となっているCKDについてお話しします。

◆CKDの成因と動脈硬化《図㈰》
 CKDが進行すると、末期腎不全から透析療法に至る経過をたどりますが、末期腎不全に至る前にCKDが心筋梗塞や脳梗塞といった心血管イベントをもたらすハイリスクファクター(高危険因子)であることがわかってきました。CKDは、一般成人の11%も占めています。
 CKDの成因には、加齢、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満、慢性腎炎などがあり、いずれもが糸球体の内圧を上げる糸球体高血圧をもたらして、進展増悪させます。

◆糸球体高血圧の起こる仕組み《図1》 糸球体内圧は、自動調節能によって一定の50Hgに保たれていますが、高血糖、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、高血圧が自動調節能を破綻させると、輸入細動脈を拡張、輸出細動脈を収縮させて、糸球体高血圧を引き起こしてしまいます。糸球体高血圧によってアルブミン尿を引き起こします

◆アルブミン尿が心血管死亡率を 上げる《図2》
 横軸がアルブミン尿の量を表し、縦軸が心筋梗塞などの心血管死亡率を示しています。アルブミン尿が増えるに従い、心血管疾患死亡率が増加しています。

◆ 糸球体高血圧の対策
 先ほど述べた糖尿病、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満といったCKDのハイリスク群を有している場合、減塩および肥満是正の食事療法、さらに腎臓の血流を低下させる喫煙を止めるなどの生活習慣の是正が必要となります。

◆糸球体高血圧の治療薬《図3》
 CKDに高血圧を伴った場合、適切な降圧薬の選択が必要となります。ARB(アンギオテンシン㈼受容体拮抗剤)やACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害剤といった降圧剤を選択するようにします。これらの薬剤は、輸出細動脈を拡張させて、糸球体の高血圧を是正させます。

◆心血管イベント発症率は、アルブミン 尿の他にGFRと相関《図4》
 GFRが中等度低下したCKDステージ3の段階では、自覚症状が乏しい時期に当たります。この段階に当たる、既に血清クレアチニン値が1・3mg

dlの状態から既に心筋梗塞などの心血管イベントが増えだし、GFRの低下と共に増加の一途をたどります。したがって

1.CKDのステージを増悪進展させないように、CKDを引き起こすハイリスク群に対する生活習慣の是正と治療をしっかりと行う必要があります。

2.さらに昨年より始まった特定検診をきちんと受け、GFRを規定しているクレアチニン(クレアチニン値と年齢、性別からGFRを換算します)を測定して、GFRの評価をしてもらいましょう。

※(残念ながら北海道の30%の市町村でクレアチニンを健診項目として取り上げていない自治体がありますので要注意です。(図6)

 沖縄県では、クレアチニンを100%健診項目にしています。北海道でも全市町村において、一刻も早くクレアチニンを健診項目に取り上げて欲しいと思います。)


プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設
日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

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