Vol.230 6月 「親切」をすると健幸になる その3
「親切」をすると健幸になる その3
「親切な行ないには、素晴らしい健幸効果があるらしい」ということが、さまざまな研究で明らかになっています。
主な「親切の効果」は次の3つです。
1.ストレスが軽減する
2.健康になる
3.幸福感が得られる
今回は「2.健康になる」(後編)について述べてみたいと思います。
親切をすると、健康になる
親切な行ないをすると、人間のからだには「オキシトシン」という脳内物質が出ます。この「オキシトシン」に、どうやら心身を健康にする作用があるようなんです。
〈 親切の健康効果 〉
1 消化吸収を促す効果
2 炎症を抑える効果
3 血管や心臓を元氣にする効果
4 酸化ストレスを減少させて老化を遅らせる効果
今のところ確認されているのは、この4つの健康効果。今回は3と4について説明します。
3 血管や心臓を元氣にする効果
オキシトシンは、動脈の内側にある細胞を柔らかくする。すると血管は広がり、拡張する。これで3つのことが起きる。
① 動脈にもっと血液が流れるようになる。
② 心臓をはじめとする臓器にもっと血液が届くようになる。
③ 血圧が下がる。
血圧が下がると、最終的には心臓発作を予防できるのだ。親切で心臓発作が予防できるならすばらしいことだ。そのしくみをまとめてみると、次のようになる。
たとえていえば、動脈の壁には、オキシトシンの形に合わせたオキシトシン用の駐車スペースが並んでいる。これを「オキシトシン受容体」という。オキシトシンが「駐車」すると動脈壁の細胞は一酸化窒素を作り出す。同時に、心臓では心房性ナトリウム利尿ペプチドが作られ、血液中に送られる。一酸化窒素と心房性ナトリウム利尿ペプチドは強力な血管拡張剤なので、動脈に入ると動脈は拡張する。これが親切による心臓保護作用だ。
まとめると、親切がオキシトシンを生み、オキシトシンは一酸化窒素と心房性ナトリウム利尿ペプチドを生み、一酸化窒素と心房性ナトリウム利尿ペプチドは動脈を拡張し、血圧を下げる。いわば、「ドミノ効果」が体内で起きることになるのだ。
『「親切」は脳に効く』デイビット・ハミルトン著
(サンマーク出版)
この本の著者であるデイビット・ハミルトンさんが友人にこの話を聞かせたところ「心のこもった行動で心の臓器にいい影響が出るなんてすごいことよね」と、言ったそう。
昔の人は、こういうことを感じて「心臓」のことを「ハート」と呼んだのかもしれませんね。
4 酸化ストレスを減少させて老化を遅らせる効果
・親切は筋肉の再生を助ける。オキシトシンが重要な役割を果たすからだ。
・親切は迷走神経を活性化し、多くの病気や老化の一因となる軽度の慢性炎症を抑える力を高める。
・親切でオキシトシンが生成されると、酸化ストレスの原因となるフリーラジカルを除去できる。これは動脈だけでなく皮膚の老化にとっても有効だ。
・一酸化窒素の減少はもっとも影響の大きい老化現象だといえる。一酸化窒素を増やすにはいつも親切のことを思い、感じ、実行すればいい。
・テロメアはDNAの端をふさぐキャップだ。テロメアの磨耗を防げば老化も防げる。親切とか思いやり、心理的サポートでテロメアが短くなるのを大幅に遅らせられることがわかっている。
『親切は脳に効く』デイビット・ハミルトン著
(サンマーク出版)
ちなみに、「親切にすると若返るのか…だったら、親切にしてみようかなぁ」という、打算的な動機でも(笑)「親切の健幸効果」は変わらないそうです。というのも、どんな動機であっても親切をされた人は喜んでくれるわけで、その様子を見ているだけで、オキシトシンは分泌されるから。
「人に優しくすればするほど、人は健康で幸せになれる」
「地球って、本当に素敵な星だなぁ」と、しみじみ感じられる研究結果だと思います。