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Vol.231 7月 「親切」をすると健幸になる その4


「親切」をすると健幸になる その4

 「親切な行ないには、素晴らしい健幸効果があるらしい」ということが、さまざまな研究で明らかになっています。
 主な「親切の効果」は次の3つです。

 1.ストレスが軽減する
 2.健康になる
 3.幸福感が得られる

 今回は「3.幸福感が得られる」について述べてみたいと思います。

親切で健幸になるのは自然界の摂理だった

 これまで3回にわたって「優しい行動(親切)がいかに健幸によいか」ということを紹介してきたわけですが、親切の効果の極めつけは「幸福感が得られること」じゃないかと思います。 
 
 親切は脳内で物理的な変化を起こす。一部の抗うつ剤の作用と同じように、セロトニンを生成する。親切をいつも実践していると、脳のネットワーク構造が変化し親切な性質と親切から生じる幸福感を組み込んだ回路が作られていく。
  『親切は脳に効く』デイビット・ハミルトン著(サンマーク出版)

  
 親切な行ないをすることで幸福感が得られるのは「脳内の神経伝達物質と脳内のネットワーク構造」に理由があったんですね。親切の効果にこうした「原理」がはたらいていたことがわかると、僕たちには「誰かに喜んでもらうこと、つまり親切を行なうと心身ともに健幸になり幸せを感じられるという『本能』が宿っている」ということになりそうです。
 
 私たちの遺伝子は数百万年かけて形づくられた。先祖のある部族が遺伝子Aを持ち、別の部族は遺伝子Bを持っていたとしよう。わかりやすいように、Aの遺伝子をピンク、Bの遺伝子をブルーとする。ピンク遺伝子とブルー遺伝子の働きはまったくちがう。ピンクは自分の持っている資源を分かち合い、おたがいの満足を考える親切の遺伝子だ。ブルー遺伝子のほうは「自分第一」の遺伝子でこの遺伝子を持つ人は他人の幸せはそれほど考えていない。自分自身が無事なら、それで十分なのだ。
 さて、私たちの進化には、2つの自然のプロセスが働いている。第1はエネルギーにかかわるものだ。ピンク遺伝子を持つ部族はエネルギーをたがいに分かち合うので、集団として消費するエネルギーは少ない。部族のうちの何人かが全体のために食べ物を集めに行けばいいからだ。ブルー遺伝子の部族はそれぞれが自分で生きていかねばならないため、食物採集に必要な全体のエネルギーは大きくなる。自然は効率重視であり、低エネルギーのプロセスのほうを好む傾向がある。長期的に見ると、手に入る食物の量は変動するので生き残るのに必要なエネルギーは少ないほど好都合だ。だから、ピンク遺伝子を持った部族のほうが繁栄し、ブルー遺伝子の部族よりずっと大きくなる。やがて遺伝子プール全体を見ると、ピンク遺伝子のほうがブルー遺伝子よりもはるかに多くなるのだ。
 私たちを作った第2のプロセスは、絆(人間関係)だ。ピンク遺伝子の部族は強い絆を持っている。ピンク遺伝子による分かち合い行動で、部族同士の関係が強まるからだ。ブルー遺伝子の部族は人間関係が弱い。ピンク遺伝子の部族は長期間、繁栄できる。野生動物やほかの部族からの脅威があると、結束して対抗するからだ。飢餓のときは、食物を分かち合う。ブルー遺伝子の部族はそんなことはしない。だから飢餓や脅威があれば少数しか生き残れない。これは「適者生存」として知られていることだ。適者とは一番大きな者や一番強い者と考えがちだが、じつはそうではない。ピンク遺伝子の部族、つまり一番親切な者が適者なのだ。
(中略)このピンク遺伝子こそオキシトシン遺伝子だ。オキシトシン遺伝子はヒトゲノムのなかでも最古の遺伝子の1つであり、およそ5億年前から存在している。それほど古い遺伝子なのでヒトのさまざまな生体システムに組み込まれている。親切にするとうれしくなったり、心臓の働きがよくなったり、老化が遅くなったりするなどいいこと尽くめなのには、そういう理由がある。 
 (同著より)

 
 世界33カ国、20歳から25歳の男女1万人以上を対象に「将来の結婚相手に何を一番望みますか?」と質問した調査では、さまざま文化の壁を超えて例外なく1位を占めたのが「親切」だったそうです。容姿でも、収入でもなく「親切な人」に惹かれてしまうのも「太古から受け継がれてきた本能」と考えると、納得がいきますね。
 
 食うか、食われるかの生物の世界にも利他的な関係性が見えるんです。植物は自らが必要とする以上に葉を作って光合成をし、その落ち葉で微生物が増え、葉や木の実を食べて虫や鳥は命をつなぐ。もし植物が自己の必要量しか光合成をしなかったら、他の生物は存在できません。
(朝日新聞2020年新春対談「多様性って何だ?」生物学者・福岡伸一さんのお話より)

  
 誰かに喜んでもらうこと、つまり親切を行なうと心身ともに健幸になり、幸せを感じられるという『本能』が宿っているのは「自然界の摂理」にもあらわされていたんですね。
 
 
 

 

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