【vol.63】おすぎの名画のすゝめ Scene.21
こんにちは。おすぎです。
これから暑い季節になりますが、今回は熱い作品をご紹介します。(笑)
「噂の二人」
1961年公開 アメリカ映画 監督 ウィリアム・ワイラー
もともとは舞台で演じられたもので、リリアン・ヘルマンの「子供の時間」が原作であります。1930年代に”同性愛“をテーマにしたというのは、その頃としては大冒険ではなかったのでは?と私は思っています。
監督のウィリアム・ワイラーが、1936年に一度映画化しています。当時の邦題は「この三人」でしたが、時代も時代だったので、同性愛の部分はカットしていて、ストーリーは三角関係のドラマになっていたそうです。1961年にワイラーは、再び映画化に挑戦しました。原題は「子供の時間」ですが、邦題を「噂の二人」としたのは、当時の映画宣伝部でした。
オードリー・ヘップバーン、シャリー・マクレーンの先生二人が、生徒のついた嘘の為、同性愛という噂に曝されてしまいます。そこで二人は…?
ラストで、マクレーン演じるマーサが首を吊ってしまうのですが、ヘップバーン扮するカレンが強い女を演じているのが興味深い作品であります。
「ふくろうの河」
1963年公開 フランス映画 監督 ロベール・アンリコ
アメリカの作家アンブローズ・ビアスが南北戦争の兵士を描いた小説”生のさなかにも“から、3本の短編をそれぞれ映画化した作品の第3部で、”アウル・クリーク橋の一事件“の映画化であります。
主人公ペイトン・ファーカー(ロジェ・ジャッケ)は、アウル・クリークの鉄橋で、今まさにスパイ容疑で絞首刑にされようとしています。絞首刑は執行されましたが、首を吊るロープが途中で切れた為、ファーカーは川に落ち、そのまま川を泳いで逃げます。
ここから、ファーカーの目に映る映像がカメラになって、野山の樹、草花、蜘蛛の糸など自然のものが全て鮮烈な印象に映し出され、見事な映像になっています。
それは、生きている慶びであり、アンリコの感性の素晴らしさでもあります。
そしてついに、ファーカーは妻と子が暮らす自分の家にたどり着くのですが…。
とにかく、ラストを見て欲しい。
なんということ!!が起きます。
私たちは、その時、心に何かが起きます。是非!!
「ラスベガス万才」
1964年 アメリカ映画 監督 ジョージ・シドニー
エルヴィス・プレスリーの映画の中で、抜群によく出来た作品です。
ヴェガスで一発当てたレーサーのラッキー(エルヴィス・プレスリー)は、待望のエンジンが買えるとメカニックを担当する相棒を大喜びさせたのも束の間、ホテルの水泳教師ラスティ(アン・マーグレット)を口説くのに夢中で、肝心のお金をプールに落としてしまいます。そこで、ホテルのボーイとなって金を稼ぎ、イタリアの伯爵レーサー、エルモ・マンチーニ(チェザーレ・ダノーヴァ)とラスティをめぐって恋のレースを展開することに…。
オープニングで、エルモの車の下周りを覗き込む男二人のバックに映る、アン・マーグレットの脚線美のなんと美しいことか。顔もお尻も小さい彼女は、とてもチャーミングですが、どこか謎めいていて、彼女を捜してヴェガスの有名なクラブ巡りをするラッキーがなかなかに楽しい。
ロードレースのシーンでは、清々しいネヴァダの風景も楽しめて、一粒で二度美味しいまるでキャラメルのような作品。
もちろん、歌も満足です! !
おすすめの新着映画 「オンリー・ザ・ブレイブ」
監督:ジョセフ・コシンスキー
原題:Only the Brave
配給:ギャガ
6月22日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
オープニングは、アリゾナ州プレスコット市の森林消防隊が山火事を懸命に消火しようとする姿から始まります。
指揮官のマーシュ(ジョシュ・ブローリン)は、迎え火を焚き、火をもって火災を抑え込もうとしますが、現場の権限を持つ米国森林局の“ホットショット(精鋭部隊)”に、「“市”レベルの消防隊員が余計な口出しをするな」と言われてしまいます。
マーシュは自分のチームを“ホットショット”にしたいと認定審査を受け、様々な困難を乗り越えながらもチームは無事合格しますが、直後に、アメリカ史上最も恐ろしい、山を飲み込むような巨大な山火事が発生するのであります。
2013年、アリゾナで起きた山火事をスクリーンに再現し、衝撃のラストが待っています。圧倒的な感動を呼ぶ作品!!
プロフィール・映画評論家 おすぎ
1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。