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【vol.42】鳴海周平の全国ぶらり旅|埼玉県・川越編


「世に小京都はあれど、小江戸は川越ばかりなり」と謳われた江戸情緒溢れる街・埼玉県川越市。
17世紀の江戸文化華やかな時代を思い出させてくれる、黒壁の重厚な蔵が建ち並ぶ城下町を訪れてみました。

東京・池袋駅から東武東上線の急行列車で約30分揺られると、江戸の趣と風情を残した街、小江戸・川越に到着します。

国の重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれている「一番街の蔵造りの町並み」は、地元の人たちにとっての住み慣れた生活空間としても機能しており、その自然な風景がいっそうこの街の魅力を引き立てているのかもしれません。

江戸という巨大都市の生活を支える物資集散地として発展した川越は、食料や木材などを運んだ船が行き来し、また北の守りの要所としてたくさんの人々が行き交っていました。

ところが明治26年、川越は町の3分の2を焼失してしまうほどの大火に見舞われてしまいます。

一夜にしてすべての財産を失ってしまったわけですから、精神的なダメージも相当だったはずですが、川越商人の強さはここでいかんなく発揮されました。たくさんの人々からの寄付金(なんと、明治天皇からも寄付があったそうです!)にも恵まれ、耐火性に優れた土蔵で町並みを整備。現代のお金に換算すると、一つの蔵が1億円以上と言いますから、川越の底力がよくわかりますね。

こうして以前にも増して人々が行き交う産業・文化の交流地として発展を遂げた川越は、その賑わいの様子から「小江戸」と呼ばれるようになったのです。

その後、昭和にかけての空襲などによる戦禍も免れ、当時の古い町並みを残すことができた川越は、今の東京では見ることができない江戸の面影をとどめる地区として注目を集め、テレビドラマのロケ地としても脚光を浴びることになりました。

「NHKの大河ドラマ『春日の局』(1989年)や連続テレビ小説『つばさ』(2009年)などの放映で、ずいぶんと観光のお客さんも増えたんですよ。」

素敵な笑顔でそう教えてくれたのは、川越を代表する観光名所・菓子屋横丁で90年の歴史を誇る玉力製菓・3代目の久保田一郎さん。大正3年創業という老舗の飴屋さんです。

菓子屋横丁は、江戸末期に飴造りを創業したことがきっかけになったと言われており、最盛期の昭和初期には七十以上の店が軒を連ねていたそうです。

「関東大震災で東京の菓子問屋さんが営業できなくなった影響もあって、川越がその一端を引き受けました。当時は飴屋の他に落雁や水羊羹、かりんとうなども製造されていて、それはもう賑やかだったようです。ところがその後、第二次世界大戦で自由に菓子が作れなくなり、一時はどこも余儀なく休業状態となってしまいました。」

そういった状況下でも、お客様に喜んでもらいたいという一心で菓子作りを続けてきた横丁の店主さんたちの努力が実り、戦後は再び復興を果たします。

しかし、昭和四十年代になると今度は大手菓子メーカーが大量生産で市場を独占するようになり、再びお店が減ってしまう状況に陥りました。こうした時代の大きな流れに翻弄されながらも、現在約二十店舗がこの横丁で営業を続けて
います。

「今はテレビなどの影響もあってか、また『古き良き時代』を懐かしく思って訪ねてくれるお客さんも多くなってきました。時代の流れに逆らわずに、無理をしなかったからこうして商売を続けてこられたんでしょうね。『売れる分しか作らない』まぁ、売れない時期には無理して作らない、っていうことかな(笑)。」

 横丁の歴史を肌で感じながら、周囲の多くが店じまいをした衰退期にも手作りの飴職人として六十年の歳月を乗り越えてきたご主人のひと言は、とても重みがあります。「ウチは、私と息子と家内でやっている家内制手工業です。とにかく無理をせず、原料と製法にこだわった本物だけを作り続けること。ただ、それだけなんですね。欲を出したらいいものも出来なくなってしまいますから。息子には、それだけを伝えてあります。」

今年で職人歴十八年目を迎えるという四代目の淳さんとの共同作業は、まさに「阿吽の呼吸」。親子であり、職人同士でもある二人の連携ぶりは、もはや芸術の域と言っても過言ではない程に洗練されたものでした。

「一歳半になったばかりの五代目もいるしね(笑)。これからもお客さんに喜んでもらえる本物だけを作り続けていきたいと思います。」

家族の絆が育んでいる昔ながらの「伝統の味」。後世まで、いつまでも変わらずに受け継がれていくことをお祈りしております。

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