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【vol.59】辻和之先生の健康コーナー|「わかりやすい東洋医学講座」  第10回 中医学における体質傾向・前編


 
 中医学では、体質傾向を①脾虚②腎陽虚③血虚④陰虚⑤気滞⑥湿熱⑦血瘀⑧湿痰と云うように、大まかに8種類に分けて診断することにより、その人の体質をほぼ把握することができます。
 前編の今回は、①の脾虚から④の陰虚までを解説します。

①脾虚
 胃腸が弱く疲れやすいタイプで、消化機能ばかりではなく、気・血・津液を生成する役割を持つ脾の機能が低下している体質です。生命エネルギーである気が不足しているため、元気が無い、疲れやすい、風邪をひきやすい、食欲が無い、味覚の低下、腹が脹る、便秘などと云った傾向が見られます。
 脾虚の改善方法には、脾機能を損なう、食べ過ぎ、冷たい飲食の摂り過ぎを避ける必要があります。
 治療薬には四君子湯が基本製剤ですが、胃の動きが悪ければ、六君子湯、冷えが強ければ、人参湯、内臓下垂や全身倦怠に補中益気湯などを用います。

②腎陽虚
 腎陽は、*腎に蓄えられている熱源を意味します。腎陽虚は、この熱源が不足した、冷えが強い体質です。腎陽には、津液の元となる腎陰を温めて津液を巡らせる作用がありますが、腎陽虚になると、腎陰を十分に温められなくなって、津液の巡りが悪くなり、皮膚にポチャポチャと水が溜まりがちになります。排尿に異常がみられることが多く、多尿、頻尿を来しやすくなります。先天的な衰弱・老化、性生活の不摂生・慢性病の消耗などで発症します。体を冷やさないように注意が必要です。
 処方は、エキス製剤は、八味地黄丸、生薬は、補陽薬として附子、桂皮、杜仲、補骨脂、益智仁、巴戟天、鹿茸、淫羊霍などを用います。
 当院では、補骨脂、益智仁、巴戟天、淫羊霍などの補陽薬を中心とした処方からアンチエージングの漢方薬を作成し、好評を得ております。

*腎…中医学でいう腎は、西洋医学でいう腎臓とは、イコールではありません。成長、発育、生殖に関する働きを生涯にわたって調整するとても重要な生命力の元です。さらに津液の代謝機能にも関わっています。この腎に蓄えられた予備の津液を腎陰といいます。また太陽に当たる心の熱を蓄えており、これを腎陽といいます。

③血虚
 女性に多い、血が不足した体質です。血は、全身を巡って諸臓器に栄養を届ける作用がありますので、血虚になると、諸臓器に栄養が行き渡らず、皮膚の乾燥や筋肉の疲れ・引き吊り、手足のしびれ・冷え、爪が脆い、ふらつきなどを引き起こします。女性では月経周期が長くなります。
 血虚には、心血虚と肝血虚があります。鑑別を表にまとめてみました。

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 治療法は、補血を行います。一般に当帰、熟地黄、芍薬、何首烏などを用い、心血虚には、丹参、酸棗仁、柏子仁、遠志、竜眼肉などの養心安神薬を、肝血虚には、枸杞子、鶏血藤などを用います。
 代表方剤は、帰脾湯、四物湯などを用います。

④陰虚
 陰とは体を潤す津液のことで、陰虚とは津液が不足した状態で乾燥気味の体質になります。水分が不足すると、相対的に陽である熱が強くなるため、体の熱感(特に午後)、皮膚や髪が乾燥気味の上に、熱が無いのに熱っぽく感じたり、手や足が火照ったり、のぼせ、いらいら、不眠になったりします。過労や睡眠不足、ストレスなどは、津液を過剰に消耗するため、陰虚を引き起こす原因になりやすくなります。
 陰虚改善のためには、過度の活動による過労を避けて、夜は十分な睡眠をとるようにします。
 治療は、地黄、天門冬、麦門冬、亀板、鼈甲、沙参(浜防風)などの滋潤、栄養、鎮静などの作用をもつ滋陰薬を、併せて清熱薬(冷やす薬)を併用するには、知母、黄柏、地骨皮、牡丹皮などを用います。
 方剤として知柏地黄丸、六味地黄丸+三物黄芩湯などを用います。

 

プロフィール

医療法人和漢全人会花月クリニック
日本東洋医学会専門医
医学博士 辻 和之

昭和26年 北海道江差町に生まれる
昭和50年 千葉大学薬学部卒業
昭和57年 旭川医科大学卒業
平成 4年 医学博士取得
平成10年 新十津川で医療法人和漢全人会花月クリニック開設

日本東洋医学会 専門医
日本糖尿病学会 専門医
日本内科学会  認定医
日本内視鏡学会 認定医

 

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