【vol.44】おすぎの名画のすゝめ Scene.02
こんにちは、おすぎです。
今回は、私が映画評論家になったきっかけからお話ししたいと思います。
それは、高校1年生の時に観た「太陽がいっぱい」という映画で、アラン・ドロンのあまりの美しさに「この人にぜったい会いたい!!」と思ったことでした。
でも、どうしたら会えるのか?役者とか監督は、何となく無理そうだし・・・。あっ、そうだ!映画評論家になっちゃえ!!と、そんなノリだったことを想い出します(笑)。
でも、まだこの頃はただの「憧れ」でしかありませんでした。
その後、高校3年生になって、雑誌「映画友の会」編集長だった淀川長治さんのお話を聴く機会に恵まれました。
「映画評論家になりたいなら、映画だけを観るのではなく、歌舞伎も、人形浄瑠璃も、オペラも、落語も、演劇も、バレエも、奇術も、ありとあらゆるものを観なさい。」
淀川さんの言ったこのひと言が、決断のきっかけになったように思います。
「幅広く学ぼう」という意識を持つだけで、興味の対象がどんどん広がって、そのうちに自分なりの軸ができてくるのね。
現在、映画評論家として、ブレない立ち位置を評価していただているのも、淀川さんのおかげだなぁ、ってあらためて思う今日この頃なのです。
「学ぼう」と思っているうちは、人間は歳をとらないそうですから、たくさんの学びがある「映画」を観て、いつまでも元気に人生を楽しみたいものですねぇ。
今回紹介する映画は、「私が墓場まで持っていきたい名作」です(笑)。
「ベン・ハー」
1959年公開 アメリカ映画 監督:ウィリアムル・ワイラー
1880年にルー・ウォレスが書いて大ベストセラーになった小説をもとに、何度も映画化されている作品なんだけど、やっぱりウィリアム・ワイラーの監督作がいちばんね。
物語は、ユダヤ人貴族ベン・ハーの住むユダヤ人地区エルサレムに、ローマ帝国から新しい司令官として幼なじみのメッサラが派遣されてくるところから始まります。かつて親友だった二人は、立場の違いからついに宿命的な対決をすることになるんだけど、もう想像を絶するような出来事の連続に、4時間近い上映時間もあっという間に感じるでしょう。
当時、6年半の歳月と54億円という巨費を投じて作られた作品だけあって、とにかく凄い迫力でスケールも大きい!特に、大戦車の競争シーンは圧巻です!!
ミクロス・ローザの音楽、撮影のロバート・サーティスも素晴らしいし、チャールトン・ヘストン、ジャック・ホーキンスといった俳優陣も凄い!公開年のアカデミー賞11部門を獲得した、とにかく凄い映画です。
誰でも一生に一度は観ておかなくちゃいけない作品ね。
「明日に向かって撃て!」
1969年公開 アメリカ映画 監督:ジョージ・ロイ・ヒル
アカデミー主題歌賞にも輝いた「雨にぬれても」は、聴いたことのある人も多いでしょう。
二人の列車強盗が追跡隊に追いかけられて、ボリビアへ高飛びする、っていう話で、ひと言でいえば「明るい西部劇」という感じね。
二人が追いつめられて巨大な滝に飛び込むシーンや、壮絶な撃ち合いをするシーン、そしてラストシーンのストップモーションは、映画史に残ると言ってもいいくらいだと思います。
ポール・ニューマン演じる機転の利くブッチと、ロバート・レッドフォード演じる早撃ちの名手サンダス、二人のコンビネーションも、とっても素晴らしい!!
「ニューシネマ」と言って、ハリウッドじゃなく、ニューヨークの方でつくるようになった時代の傑作です。
「フィールド・オブ・ドリームス」
1989年公開 アメリカ映画 監督:フィル・アルデン・ロビンソン
ケヴィン・コスナー演じる農夫が、ある「お告げ」を受けて、まったく意味がわからないながらも行動していくうちに、次々と不思議なことが起こっていきます。
若い頃にケンカをして家を飛び出して以来、1度も口をきくことがなかった父親との関係をずっと後悔してきた彼が、最後に辿り着く「お告げ」の結果とは・・・。
内容としてはかなりスピリチュアルなんだけど、まったく違和感がなくて、只々感動させてくれる作品。
試写会で観て、本当に素晴らしかったので、新聞の広告に「私は今まで1万本以上の映画を観てきたけど、この映画が最高です!」って書いたら、これが大当たりしまして、映画評論家としては、まだまだ駆け出しだった「おすぎ」の名前を大きくしてくれた作品でもあるのです。
これをきっかけに、筑紫哲也さんの「NEWS23」に毎年2回ずつ出演するようになって、報道番組の中で30分以上映画を紹介させてもらうという画期的な企画が17年間も続きました。
この映画はそういった意味でも、私がとても大切に思っている作品です。
おすすめの新着映画「幸せへのキセキ」
試写会で「本当に素晴らしい!!」と思った作品です。
最愛の妻を亡くした主人公のベンジャミンが、14歳の息子、7歳の娘と郊外の動物園付き住宅に移り住んで、園のスタッフと一緒に動物園の再建に取り組みながら、悲しみから立ち直っていく様子を描いた、実話をもとにしてできたお話です。
悲しみと混乱の中にいる2人の子供たちと真剣に向き合いながら、動物園のスタッフや地元の人たちに支えられて、必死に困難を乗り越えていく姿は感動もの!!
悲しみのドン底から、家族の絆を取り戻すまでの「軌跡」を描いた「奇跡」の物語です。
<おすぎのちょっとひと言>
それにしても、マット・デイモンがこんなに上手くお父さん役を演じるとはねぇ。
「グッド・ウィル・ハンティング」で初めて彼のことを知ったんだけど、その後「ボーン」シリーズとか「ヒア アフター」で主演したり、コッポラ(フランシス・フォード・コッポラ)やイーストウッド(クリント・イーストウッド)に重宝されているのも納得です。
反抗期を迎えた息子と真正面から向き合う父親ってこんなに素敵なのね(笑)。
プロフィール・映画評論家 おすぎ
1945年 神奈川県横浜市生まれ。
阿佐ヶ谷美術学園デザイン専門部卒業後、デザイナーを経て「歌舞伎座テレビ室」製作部に勤務。
1976年 ニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画評論家としてデビュー以来、テレビやラジオへの出演、新聞・雑誌への執筆、トークショー開催など多岐にわたって活躍している。
いまニッポンでいちばん信頼されている『劇場勧誘員』。
著書に「おすぎです 映画を観ない女はバカになる!」(主婦と生活社)、「バカ!バカ!バカ!」(ぺんぎん書房)、「愛の十三夜日記」(ダイヤモンド社)、「おすぎのネコっかぶり」(集英社文庫)などがある。