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【vol.46】鳴海周平の全国ぶらり旅|三重県・伊勢編


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 「お伊勢さん」として親しまれ、古くから人々の憧れの地でもあった伊勢神宮。
今年二十年に一度の式年遷宮を迎える伊勢神宮と門前町のおはらい町・おかげ横丁を訪ねました。

「一生に一度は『伊勢参り』」
二千年もの長きに亘り日本の歴史を見守り続けてきた伊勢神宮には、今も全国から多くの参拝者が訪れます。
伊勢神宮の創建は紀元前5年(『日本書紀』)。世に災いが頻発したため、それまで宮中に祀られていた天照大御神を、伊勢という新たな鎮座地へお迎えしたのが神宮の発祥とされています。
江戸の頃には「伊勢参り」が一大ブームとなり、全国から参拝者が訪れるようになりました。今のように交通手段が発達していない当時、ある人は何年も積み立てをして、ある人は村の代表として、長く危険な道中を、何十日もかけて旅してきたと云います。
「お参りに来れた、そのこと自体がありがたい」という人々の想いが、実感として伝わってきますね。

伊勢神宮は百二十五社の神社の総称で、内宮(皇大神宮)と外宮(豊受大神宮)は御正宮と呼ばれています。
外宮の豊受大御神は、今から約千五百年前に丹波国(京都府北部)から招かれた祭神で、天照大御神の御饌(食事)を司る神様。朝夕の二回、天照大御神に供えられる神饌は、千五百年もの間、一日も欠かされることなく続いているそうです。

神宮の祭事は「米の豊作を祈ること」が原点。神宮の神田で自給自足された米は、古代と同様に木を擦り合わせておこした火と、神域内の井戸から汲んだ水を用いて、毎朝お供えされています。
その昔、天照大御神から「民の主食とするように」と授けられた種籾は、今も日本人のたいせつな主食です。とてもありがたいことに、私たちは神様の魂が宿っている「稲魂」を毎日いただいているんですね。

何事のおはしますかは
しらねども
かたじけなさに涙こぼるる

平安時代に神宮をお参りした西行法師が詠ったように、五十鈴川にかかる宇治橋を渡った瞬間から、心身が清められていくような感じがします。
今よりも五感を存分に使っていたであろう当時の人々は、思わず居ずまいを正してしまほどの神聖な氣を、こころとからだでしっかりと感じていたのではないでしょうか。

神宮には内宮・外宮ともに、それぞれ同じ広さの敷地が東西にあり、二十年に一度新しい社殿を同じ形で造り替えて、神様にお遷りいただく「式年遷宮」が行われます。
両宮十四の別宮や内宮の宇治橋など約八百種千六百点もの御装束神宝などがすべて新調、新造される伊勢神宮最大のおまつり「式年遷宮」は、飛鳥時代に天武天皇が定め、持統天皇の六九〇年を第一回として、以降千三百年もの間繰り返されてきた驚くべき歴史を持っているのです。

世界中には石造りなどによって「永遠性」をめざした建物がたくさんありますが「二十年に一度生まれ変わることによって永遠性をめざす」という発想は他に類を見ません。
太古より自然を畏れ敬ってきた日本人の精神は「神の勢いが、常にみずみずしく、生き生きとしたものであってほしい」と願う常若の思想の中に脈々と受け継がれているんですね。

「伊勢の深い森のなかに世界で一番古くて新しいものが存在する。」
(アメリカの建築家 アントニオ・レイモンド)

「この聖地において、私は、あらゆる宗教の根源的な統一性を感得する。」
(イギリスの歴史家 アーノルド・トインビー)

どうして「二十年」?

1 掘立柱に萱の屋根という造りの尊厳さを保つため

2 宮大工などの匠が技術を継承していくのに最適な年数

3 保存食(米や雑穀など)の貯蔵年限

他にも中国暦学の影響や、二十を聖なる数とする説もありますが、今のところ二十年の理由に定説はないようです。

伊勢を代表する老舗の赤福さんは一七〇七年(宝永四年)に創業。以来、江戸の頃から長旅で疲れた旅人をもてなしてきました。

「『赤福』という名前は『赤心慶福』に由来すると云われています。まごころ(赤心)をつくせば、他人の幸せを素直に喜ぶことができる(慶福)という意味で、参拝に訪れた方々へのおもてなしの心を表しています。
江戸時代にお伊勢参りに訪れた人たちは『無事にお伊勢参りできるのは目に見えない神様のおかげ。そして、道中の人々のさまざまなお世話『施行』のおかげ』と言いました。
『施行』はお伊勢参りの旅人が無事に念願を果たせるように、道中の人々が宿や食事、風呂などを施すことです。
皆さんから『参道のお店は皆親切だ』と言っていただけるのは、施行のこころが『おもてなし』となって現れているからではないでしょうか。」(株式会社赤福 小坂真理さん)

一生に一度と云われた伊勢参り。全国から集った人々が行き交う参道では、さまざまな人間模様が展開されていたことでしょう。
旅をする人と迎える人、出会いと別れ、もてなしと感謝。
こころとこころが触れ合う場所・伊勢神宮と参道には、今も昔と変わらない日本の源郷ともいえる風景が広がっています。


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