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Vol.090 10月 鍼、灸、マッサージの効果


 「運動の秋」とも「食欲の秋」とも言われるこの季節。健康を見つめ直す良い機会にしたいものですね。

 今回も引き続き、作家の五木寛之さんと医学博士の帯津良一先生による健康対談をご紹介したいと思います。

鍼、灸、マッサージの効果

 前回このコーナーでご紹介した「民間療法」にも含まれている「鍼、灸、マッサージ」。一般にも広く普及しているこうした手技療法の効果について、五木寛之さんが帯津良一先生に質問をしています。

 帯津先生は以前北京の病院を訪問した際、麻酔鍼(麻酔薬は使用せず、ツボに鍼を打って痛みを緩和させるもの)を打った状態で手術をおこなっている様子を視察したそうです。そこでは胸を開いて手術をしている患者さんが、執刀している医師共々、笑顔で帯津先生に会釈をしてくるという、驚きの体験が待っていました。しかもツボに打っている鍼はたったの2本だけ!!術中も患者さんの様子を見ながら、微調整をしていくそうですが、まさに神業です。

 私たちの身体は、血管が隅々まで通っていて栄養を運んでくれているように、エネルギーを運ぶための道(経絡)もまた隅々まで行き渡って生命を維持してくれています。例えて言えば、ツボとはこの経絡という線路上にある駅のようなものなので、そこを刺激することで滞っていたエネルギーがスーッと流れていくことになります。血液もエネルギーも滞ることはあまり良い状態ではありませんから(流れる水は腐らない、といいますよね)鍼、灸、マッサージなどで、こうした流れを改善してあげることは有効と考えても良いのではないか、というのが帯津先生の見解です。

 西洋医学ではエビデンス(治験データ)が少ないという理由から、こうした手技療法をあまり評価していませんが、実際の臨床現場ではさまざまな有効性が認められています。前回もお話したとおり、長い時間をかけて伝えられてきたこうした療法には「歴史」という最高のエビデンスがあるんですね。

数千年の歴史をもつ養生法「気功」

 帯津先生が健康のために長年実践し、患者さんにも指導している「気功法」について、五木さんからその効果のほどについて質問がありました。

 「気功法」は、中国で3000年以上の歴史があると言われる養生法です。公園などで朝早くからたくさんの人たちが太極拳をおこなっている様子を、テレビなどでご覧になった方も多いのではないでしょうか。

 帯津先生は「気功法」について「どこかに直接働きかける対症療法ではなく、全身に働きかけ自己治癒力を高めるもの」と仰っています。

 「気功法にはたくさんの流派や様々なやり方がありますが、特に優劣はないと思います。自分に合ったものを見つけて、それだけをじっくりと続けることが大切です。また他によさそうなものがあったら、それをやってみるのもいいでしょう。コツはこだわらず、続けることです。」

 帯津先生が中国で出会った感動的な動きをする気功の達人たちに共通していた点は「40年以上続けていること」だったそうです。「才能の違いは関係ないし、努力をすれば良いというものでもない。ウィスキーやワインを寝かせるのと同じで、熟成にはある程度の時間が必要だ」とも述べています。

 また気功をおこなうにあたって重要とされる「呼吸法」については「宇宙自然も呼吸をしているのだから、その呼吸と自分の呼吸をシンクロさせるような気持ち」でおこなうことが大切と言われています。
自然界における四季の移り変わりはいたって緩やかです。

 「急がずじっくり」という気功法の極意は、呼吸法の極意とも一致するんですね。

健康問答

 帯津先生は五木さんとの「健康問答」のまとめとして、理想的な医療のあり方について次の3点を挙げています。

1 肉体のレベル・・・苦痛を取り除く
2 こころのレベル・・・不安がなくなり、自由な心境になる
3 いのちのレベル・・・霊性を高める

 人間としての宿命とも言える「生老病死」を受け入れ、大自然の摂理にのっとって、あるがままに生きること。ベストセラーとなった五木寛之さんの著作「大河の一滴」に著されているような生き方が「心身の健康」にとっても、最も理想的な健康法といえるのではないでしょうか。

参考文献 五木寛之 帯津良一 著 「健康問答」(平凡社)

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