Vol.033 01月 養生訓から学ぶ、自然治癒力
江戸時代から読み継がれている「養生訓」という本には、日頃私達が活用出来る健康のためのノウハウがたくさん詰まっています。
「養生訓」について最終回の今回は「自然治癒力」についてです。
天気予報より当たる!?
「慢性関節リウマチや痛風の患者さんは天気をピタリと当てることが出来る」って聴いたことありませんか?
実はこの話、本当なんです。実際、そういった症状をお持ちの方や、身近にいらっしゃる方は、よく理解出来るかと思いますが、雨や風の前になると、患部が違和感を覚えるんですね。これは天候が崩れる前に、気圧が低くなってくることと、湿度が高くなってくることに関係しています。他にもぜんそくやアレルギー性鼻炎、神経痛なども、天候に敏感に反応します。
四害を避ける
貝原益軒さんは、湿度について「養生訓」の中で次のように言っています。
「居室や寝室では常に風・寒・暑・湿の邪気を防ぐことに留意しなくてはいけない」
風害、寒害、暑害については文字通り風や寒さ、暑さが私達に及ぼす害のことですが、これらは比較的早く実感出来るため、それなりの対応が可能です。
ところが湿害については、他の三害と違ってすぐに体感があるわけではないので、害が深く、長く続く可能性がある、として注意をよびかけているのです。
また湿害には外湿といって気候や立地などの環境面でのものと、内湿といって冷たい物や水分の採り過ぎによるものがある、とも書かれています。
快適な住環境は、健康のたいせつな要素である、ということですね。
医者にも上・中・下?
「医者には上中下がある。上医は病気・診断・薬のことを良く知り、非のうちどころのない治療をする。しかし上医はめったにいない。世に多いのは中医や下医である。中医は医術そのものは劣るが、診断がつかず薬がわからない時は薬を出すのを控える。下医はわからないままみだりに薬を出す」
これは中国の漢書の一文です。
貝原益軒さんも同様のことを「養生訓」の中に記しています。
「どんな病気でもみだりに薬を飲んではいけない」
「ただ保養につとめ自然に病気の治るのを待つほうがよい」
貝原益軒さんには、健康に留意してきた長い人生経験から「人の病気のほとんどは薬なしでも自然治癒するものか、あるいは薬を用いてもどうにもならない死病かのいずれかである。医者や薬に出来ることはその間のほんの僅かに過ぎないのだ」という考え方がベースにあったようです。
風邪をひいた時に出る熱にしても、最近ではむやみに解熱剤を用いなくなってきましたし、本来人間がもっている自然治癒力を引き出そうという療法が増えてきているように思います。
熱は体内に侵入しているウィルスなどと闘っている証拠ですし、下痢も嘔吐も本来は身体に不要なものを排泄しようとする、たいせつな働きです。
むやみに薬を用いてこうした自然治癒現象を止めてしまう危険性を、貝原益軒さんは戒めているんですね。
「病気を早く治そうとして急げば、かえって養生法を誤り、病気が重くなる。養生は手抜きなく行ないながらも、回復は急がず自然に任せて待つがいい。すべてのことはあまり早くしようとすると、かえって悪くなるものだ」
何かと急ごう、急ごうという風潮の現代、もう一度益軒さんの「養生のコツ」を見直してみてはいかがでしょうか。
そこには健康だけにとどまらず、生活全体にわたっての貴重なアドバイスが含まれているように思います。