Vol.027 07月 史上最大のロングセラー「養生訓」
養生訓(ようじょうくん)
江戸時代から読み継がれている「養生訓」という本には、日頃私たちが活用出来る健康のためのノウハウがたくさん詰まっています。
何回かに分けて、この「養生訓」をお話しします。
史上最大のロングセラー!?
300年以上も昔に書かれた本が、いまだに読まれ続けています。
「養生訓(ようじょうくん)」というこの本は、江戸時代に書かれました。健康に関する心がけなどを記したもので、貝原益軒(かいばらえきけん)という人が著者です。
この方は、1630年に福岡県で生まれて1714年に84歳で亡くなっていますが、当時としてはたいへんな長寿ですよね。
けっして丈夫なからだとはいえなかった貝原益軒さんが、どうやってこの長寿をまっとうすることが出来たのか?
自らの体験に基づいた健康法の数々、私たちが毎日の生活ですぐに応用できる知恵が、たくさん詰まった本なのです。
控えめと勤勉の哲学
「多少ともよければ満足すべきで、完全によいものを好んではいけない」「能力以上のことに手をだしてはならない」「内欲をこらえて少なくし、外邪をおそれてふせぐ」など、どちらかというと100%完全燃焼するような生き方を戒めるような箇所が、この本のあちらこちらで見受けられます。
「知足(ちそく)」という考え方があります。足ることを知る、という意味で、何事においても完璧を求めないこともまた、こころとからだの健康にとっては良いことだと思います。
ドイツの作家アウエル・バッハは「現在もっているものに満足しない者は、もちたいと思っているものを手に入れたとしても、同様に満足しないであろう」と言っています。
現在おかれている環境に感謝して幸せを感じながら、また新たな幸せを求めていくことが健康への近道であることを、貝原益軒さんは指摘しているように思います。
強い人は長生きか?
ところで、スポーツ選手やお相撲さん、プロレスラーなど、ふだんからだを鍛えている人たちは、長命、健康でしょうか?
漢方では、体力や気力のありすぎる人を「実証(じっしょう)」といって、不健康の一種であると判断します。
風船でいうといつもパンパンに張った状態なので、何かの刺激でパンッ!といってしまう危険性があるんですね。養生訓の中では次のような箇所があります。
「体の強い人は自分の強さを過信して自重しないから、体の弱い人よりかえって短命である」
「刃の鋭いのを過信して硬いものを切れば刃が折れる。気の強いのを過信してみだりに気を使えば、気が減る」
貝原益軒さん自信、もともとからだの丈夫な人ではなかったために、若い頃から様々な養生をしてきたのでしょう。
「俺は(私は)元気だから、ぜーんぜん大丈夫!!」と思っているあなた、何事もほどほどに、そしてたまには少し肩の力を抜いて、リラックスする時間を作ることもたいせつですよ。